3番 THE EMPRESS 「女帝」
「うっわーっ! 虹だあっ! 綺麗な虹が出てるよーっ!」
愚者ちゃんの歓喜する声がこだまする。
月桂冠の輪の外は、太陽が高く昇ったままで、陽の光がまばゆく射しこめる一方で、雨上がりの大空には七色に輝く虹のアーチが架けられていた。
「クウウーンッ! 愚者さん不謹慎なのです! お空の虹に喜ぶ気持ちは分かりますが、周りを見てくださいです。あの木の生い茂った深い森が見事に無くなって、辺り一面、見渡す限り何にも無いただの焼け野原なのですワンンンッ!」
シエンヌが地平線を見つめながら吠える。シエンヌの視線の先では地平線のずっと彼方まで、草木の一つも生えていない焼け野原が続いていた。
「花も木も草もすべての植物は燃え尽き、私たちがふたたびこの世界に暮らそうにも食べる物もありませんし、やはりこの世界での暮らしを諦めるべきなのではないでしょうか……」
焼け焦げた大地に無情にも過酷な現実を突き付けられ、魔人ラヴァーズが悲嘆にくれた表情で言う。
「「私たちの大好きな綺麗なお花も全部燃えちゃったんだね……」」
カインとアベルが二人声を揃えて悲しみの涙を流している。
「ねえ、愛流華奈ちゃん! 何とかしてあげられないの? 何か考えがあるって言っていたじゃないか……」
清陀は、悲しみに暮れる魔人ラヴァーズやカインとアベルたちの姿に心を痛めた。
「はい。私の考えていたことは、これです!」
愛流華奈はそう言ってタロット・ポーチから一枚のカードを取り出した。
ザクロの模様の刺繍された白いローブを身に纏った、ふくよかな女性がクッションのある椅子にゆったりと座り寛いでいる様子が描かれたカードだ。
女性は十二個もの星が輝く冠を頭に被り、その手には金色の笏を持っている。
女性の腰かける椅子の横には金星のマークが施されたハート型の盾が置かれている。
女性の背後には木々の生い茂る森や、澄んだ水の流れる川など、豊かな自然が描かれ、そして女性の足元には収穫を待つばかりの豊かに実った穀物畑が描かれている。
「3番、THE EMPRESS.『女帝』のカードより具現化せよ、女帝ちゃん!」
愛流華奈がカードの上に右手を重ねて叫ぶ。