私は女神なんかじゃありません……
世界ちゃんの降らせた雨は、その後も半日の間、降り続けた。
「愛流華奈ちゃん! ホルスの目の炎がもうすっかり消えたみたいだよっ!」
清陀の嬉しそうな声に、愛流華奈が月桂冠の輪の外を覗くと、どしゃ降りの雨の下、燃え盛っていた炎はすっかりと消えてしまっているように見えた。
「本当だわ! もう、すっかり炎は消えたみたいね!」
愛流華奈は、その声を弾ませて清陀に頷いた。
「まあ! ホルスの目の炎がすっかり消えてしまうなんて!」
魔人ラヴァーズが驚きの声をあげたかと思うと、
「アルカナさん……貴女はまるで女神さまのようなお方です。ありがとう、本当にありがとう……」
と泣きながら愛流華奈に抱きついた。
「ま、魔人ラヴァーズさん……そんな、私は女神なんかじゃありません。そんなたいしたものじゃないですよ……」
愛流華奈が謙遜して、その身体を悶えさせると、
「いーや! アルカナさんは女神だよ! ね? アベル?」
「そうだよ! アルカナさんは女神さ! ね? カイン?」
と、裸の姿の二人の少女、カインとアベルも泣きながら愛流華奈の身体にしがみ付くのだった。
「うーむ! あのホルスの目の炎をたちどころに消してしまうとは、あのアテュよりもアルカナ殿の方がタロットの使い手としては格が上のようじゃな! いやはや恐れ入ったのじゃ! かーかっかっか!」
リリスが愛流華奈に尊敬の眼差しを送りながら高笑いをする。
「たしかに! アルカナさんほど徳の高いお方なら、禁断の知恵の実を口にしたとしても、きっと楽園から追放なんてされませんよ! だって、あなたの存在自体が楽園だから。なーんちゃって……あら、わたくし上手いこと言ってしまいましたね……」
イヴも笑いながら、愛流華奈を見つめた。
「でもさ、ホルスの目の炎が消えたからと言っても、まだこれでラヴァーズちゃんたちがカードの世界に住めるようになったわけじゃないんだろ? 愛流華奈ちゃん?」
清陀が愛流華奈に問いかける。