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突然のツンツン攻撃

「たしか一回目は登校途中で道路に落ちていたバナナの皮を踏んで転んで、二回目は登校途中で野良犬に追いかけられて、三回目はお腹を壊して学校に着くなりトイレに直行して、四回目は校舎の廊下に落ちていたこれまたバナナの皮を踏んで滑って……あまりにも都合よくいろんなハプニングに巻き込まれるので、全部嘘なんじゃないかと思いまーす」

 そう言いながら青峰貴梨花が清陀の方を見てニヤッと意地悪く笑う。


「ほ、本当だってばぁ……」

 清陀は半べそ気味になりながら小さい声で言った。


「本当かなあ? じゃあ、今日はどうして遅刻したんですかー?」

 青峰貴梨花が嫌味っぽい口調で清陀に問いかける。


「え、えっと、それは……ゆ、夢を見ていて……それでその……」

 清陀は今日の遅刻の理由をボソボソと説明し始めた。


「え? 海野君、ボソボソしてて、ちょっと何言ってるのか分かんないよ?」

 青峰貴梨花が清陀の方に耳を向け、耳に手を当てて聞こえない仕草をする。


「はいはい! 青峰さん、そのへんにしてあげて。海野君をあまり問い詰めちゃ可哀想よ」

 担任の森咲杏奈がパンパンと手を叩き、青峰貴梨花の発言を制した。


「……ところで、今日からこのクラスに転校生が来ることになっていたんだけど、まだ来ていないのよね。私さっき彼女を迎えに行ったのだけど、来なくて。今日はお休みなのかしらね……?」

 杏奈先生が首を傾げて怪訝な表情をする。


「えー彼女ってことは女子の転校生が来るのだったのかよー。杏奈先生ーっ! 俺、その子が来るまで校門で待っていましょうかー?」

 男子生徒の一人が、残念そうに声をあげた。


「こーらー。そう言って授業をサボる気だな? 待っていなくてよろしい!」

 杏奈先生がフフン、と鼻で軽く笑い、男子生徒の発言をあしらう。


「ね、ねえ、海野君。じょ、女子の生徒が転校して来たってさあ、ぼ、ボクたちには関係ないよね?」

 清陀の後ろの席から、ツンツンと清陀の背中を突いて、男子生徒の四谷一郎太よつやいちろうたが言う。

「あ、新しい女子が入って来たって、どうせボクらは相変わらず男だけでつるむよね? ず、ずっと一緒だよね、海野君?」


 うわ、四谷君が僕の背中をツンツンして来たよ。どうして女子の転校生が来るという話のタイミングで僕の背中をツンツンするのかなあ? 

 ボクたちには関係ないよねとか、ずっと一緒だよねとか、その言い方って、聞く人によってはあらぬ誤解を与えそうな気もするぞ。なんか僕と四谷君とが男同士でお互いに変な関係を持っているようにも聞こえちゃうぞ。

 周りに変な誤解をさせないように、どうせボクたちは女の子とマトモに話せないから、女子の転校生が来たって関係ないよね、っていう意味だってフォローしてくれよ四谷君。

 頼むよ……頼むからフォローして……


 清陀は心の中でそう思いながら、四谷一郎太のツンツンを無視することに決め込んだ。そう、四谷一郎太も清陀に負けず劣らずの、女子との会話が苦手な男子生徒なのである。


「う、海野君ってばあ……」

 ツンツンを三倍速に早めながら四谷一郎太がイライラ声をあげたその時、バリーンッ、と窓ガラスの割れる音が教室中に響いた。


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