最高のカード
「そうだわ! なんで私は気が付かなかったのかしら!」
愛流華奈は、バトンをクルクルと回して踊る世界ちゃんの姿を眺めて「ハッ」と気が付いた。
「『世界』のカードはタロットの大アルカナ二十二枚の中の最後のカード。言ってみれば大アルカナの中で最高の力を持つ完全なカードなんです!」
愛流華奈が清陀の手をギュッと握りしめ、嬉しそうに言う。
「うわっ?」
唐突にその手を握られ、清陀は戸惑った。
「い、一体、どういうことだい? 最高のカードっていきなり言われても僕には分からないようっ……」
清陀はその頬を赤らめ、どぎまぎしながら愛流華奈に訊き返した。
「世界のすべては火と地と風と水という四つの元素から構成されていると神秘学では考えられており、タロットもその考えにしたがって作られています。魔術師は本来、この四つの元素を自在に操ることが出来るはずなのですが、私のカードの魔術師ちゃんはホルスの目が起こした火を消すことが出来ないと言いました……」
愛流華奈はそこまで一気に言うと、
「ふう~っ」
と一息入れ、話を続けた。
「……でも、タロットの大アルカナの中で四つの元素を操ることができるのは魔術師ちゃんだけではないんです。カードから具現化する女の子たちにとって最終的に行きつく目標とされる二十二番目のカードのあの子なら、魔術師ちゃんには出来なかったことが出来たとしても不思議ではありません!」
愛流華奈はそう言って、バトンを回して踊る世界ちゃんを指さした。
「世界ちゃんがカードの女の子たちにとっての目標……?」
清陀が、愛流華奈の指し示す先で踊る世界ちゃんの姿を見て驚く。
「だって世界ちゃんは紅茶を淹れてくれただけだよ? 今の愛流華奈ちゃんの話を聞いていると、まるで世界ちゃんなら、あのホルスの目の炎を消せるみたいな言い方じゃないか……」
「はい、そうです。火地風水の四大元素を自由自在に操れるからこそ、電気もガスも水道も無いこの月桂冠の輪の『世界』の中でも、私たちに美味しい紅茶を淹れてくれることが出来たんです!」
愛流華奈は清陀にそう言い切ると、
「ねえ、世界ちゃん、ちょっとこっちに来て……」
と、すこし小さめの声で世界ちゃんを手招きして呼んだ。