2番 THE HIGH PRIESTESS 「女教皇」
「まあ! 女教皇ちゃんだわ!」
一枚のカードが水色の輝きを発しているのを見て愛流華奈が叫んだ。
それは『女教皇』のカードであった。白い服に水色のローブを纏って座る修道女のような女性が描かれたカードだ。
女性は、その頭には月を象った冠を被り、その胸には白い十字架を付け、「TORA」と書かれた巻物をその腕に抱えている。
女性の背後、中央にはザクロとナツメヤシの描かれたカーテンが掛けられ、向かって右側には「J」と記された光を意味する白い柱が建ち、左側には「B」と記された闇を意味する黒い柱が建っている。そして女性の足元には三日月のオブジェが置かれている。
ザクロとナツメヤシの描かれたカーテンの後方には青い空と湖の穏やかな水面が見えている。
「2番、THE HIGH PRIESTESS.『女教皇』のカードより具現化せよ、女教皇ちゃん!」
愛流華奈がカードの上に手を乗せ、叫ぶ。
ボムッ! という音とともに、カードから水色の煙がたちこめ、しだいに人の形を作っていく。
「私、見ていられませんでしたよ。あなたたちは一体、何をやっているんですか!」
カードから出て来た水色の煙が、白い服に水色のローブを纏った修道女のような姿の少女へと変化した。
『女教皇』のカードに描かれた人物そのものの姿をした少女は、月を象った冠を被り、胸に白い十字架を付け、「TORA」と書かれた巻物を手にしていた。目は釣り目がちで少々キツイ印象があり、その口を一文字にギュッと閉じ、なかなか気難しそうな印象の十代半ばくらいの少女だ。
「特に魔術師さん! 四大元素を操る魔術師でありながら、炎もロクに消せないとはなんたる醜態! そんな体たらくだから、あなたはペテン師呼ばわりされるのですよ!」
女教皇ちゃんと呼ばれる少女はキツイ口調で魔術師ちゃんを叱責するのだった。
「ウーン。我輩、ペテン師呼ばわりされてナンボのオカルティストという自負をむしろ誇りに思っていたのですかな……」
魔術師ちゃんは下を向き、ションボリとしてしまう。
「女教皇ちゃん! あなたなら、あのホルスの目の劫火を消すことができるの?」
愛流華奈が月桂冠の輪の外の激しく燃え盛る炎の柱を指さし、女教皇ちゃんに訊ねる。