ラヴァーズの決意
「ここは世界ちゃんの輪の中だから、焼け死ぬことはないわよ。シエンヌちゃん、安心して……」
愛流華奈は優しくシエンヌを宥めた。
「アルカナさん……やはり魔人タワーのホルスの目を侮ってはいけませんでしたね。宇宙をも破壊し尽くす劫火は、きっと永劫に燃え続け、決して消えることは無いのでしょうね……」
魔人ラヴァーズは愛流華奈の元に近寄ると、諦観した様子で言うのだった。
「……もう、いいのです。もう私たちは、このトートの『恋人』のカードの世界に暮らすことは望みません。カードの外の現実世界で、人間たちに紛れながら、ひっそりと暮らしていく覚悟でおります……」
魔人ラヴァーズは、毅然とした表情で愛流華奈に言った。
その目には、もはや一点の迷いも感じられなかった。
唇をキュッと固く噛みしめ、断固とした決意を露わにさせながら、魔人ラヴァーズは言葉を続ける。
「アルカナさん、ご主人様。それにウェイト版のカードの皆さん。こんな私たちの為に今までありがとうございました。もう、戻りましょう。カードの外の現実世界に……」
そう言って、魔人ラヴァーズは愛流華奈や清陀、愚者ちゃん、シエンヌたちに微笑みかけた。
「そんなあ! ラヴァーズちゃん、そんな簡単に諦めちゃっていいの?」
清陀は哀しそうな目で魔人ラヴァーズを見つめた。
「たしかに僕は一度、ラヴァーズちゃんたちに僕たちの世界で一緒に暮らそうって言ったさ。でも、こうして諦めずにまた『恋人』のカードの世界に戻って来たんじゃないか! せっかくカードの中に戻ったのに、炎が消えていないからって諦めちゃだめだよ! きっと、何か方法があるはずだよ!」
清陀が魔人ラヴァーズの桃色の瞳に必死に訴えかける。




