21番 THE WORLD 「世界」
「月ちゃん、ルーヴちゃん、見張り番よろしく頼むわね……」
愛流華奈は月ちゃんとルーヴに頷くと、
「……ところで、清陀さんのお気持ちを聞いていませんでしたね……?」
と、清陀の目を見て訊ねた。
「もちろん僕も行くに決まっているさ!」
清陀は満面の笑みで返事をする。
「ありがとうございます、清陀さん……」
愛流華奈には清陀の気持ちの良い返事が嬉しかった。
「じゃあ、行きましょう! ふたたびトートの『恋人』のカードの世界へ!」
愛流華奈が一同に向かって威勢よく叫ぶ。
「でも、もしかして、カードの中はまだ火が燃え続けているかもしれないよ……」
月ちゃんが不安そうに愛流華奈に言う。
「……けっして引き留めるわけじゃないけど、もしまだ火が燃え続けていたら、カードの中に入った途端にアルカナちゃんたち全員焼け死んじゃうよ……」
「そう言われたらそうね……」
愛流華奈は月ちゃんの言葉に考え込んでしまうのだった。
「……もう完全に炎が消えたのかどうか確かめられたら良いのだけど……」
「じゃあさーっ! アタシが先に行って様子見て来よっかー?」
愚者ちゃんが無邪気に笑いながら言う。
「それで燃えてなかったら皆来ればいいし、まだ燃えてたら皆来るのもうちょい待ったらいいよーっ!」
「クウウーンッ! 愚者さんはおバカさんですねー! そんなことしたら真っ先に愚者さんが焼け死んじゃいますですワンン!」
シエンヌが苦笑する。
「あっ、そっかーっ! ぜんぜん気づかなかったよーっ!」
愚者ちゃんは頭の後ろに手をやり、舌を出して恥ずかしそうに笑うのだった。
「アルカナさん、ご無理なさらないで。私たちならカードに帰れなくても大丈夫ですから……」
魔人ラヴァーズが申し訳なさそうに愛流華奈に言う。
「いえ、まんがいち火が燃えていたとしても、守ってもらう方法があります!」
愛流華奈はタロット・ポーチから一枚のカードを取り出した。
中央で裸の女性が両手にバトンを持ち、楕円形の月桂冠の中で踊っている様子が描かれたカードだ。女性は紫色の布を身に纏い、その大切な部分を覆うように隠している。カードの四隅には人間の顔と、牡牛と獅子と鷲の顔が楕円形の月桂冠を取り囲むようにして描かれている。
「21番、THE WORLD.『世界』のカードから具現化せよ、世界ちゃん!」
愛流華奈がカードを片手に叫ぶと、ボムッ! という音とともにカードから水色の煙がたちこめた。
水色の煙がしだいに人の形へと変わっていく。




