あの子たちはどうしたのよ?
「何をしているの、アテュ……?」
愛流華奈が後ろを振り向くと、アテュの傍らに巨大な目蓋のような物体があり、アテュがロープで巨大な目蓋をグルグルと縛り付けていたのだった。
「ふん! いちいちカードから具現化させるのも面倒だからな! コイツを持ち運ぶにはこうしないと危険だからさ!」
アテュはフフンと鼻で笑いながら答えるのだった。
「そ、それは、もしかして……トートの『塔』のカードに描かれているホルスの目ね……?」
愛流華奈は驚き、恐怖にその身を震わせた。
「……ひとたびその目を開けば、宇宙をも破壊すると言われる危険な魔眼じゃないの! アテュ、あなたもしかして、その目でトートの『恋人』のカードの中の世界を焼き尽くしたのね……?」
「アハハハ。そうだとも! 今頃気が付いたのか!」
アテュは『ホルスの目』である魔人タワーを縛り付けているロープの先端を握りしめながら、笑う。
「トートの『恋人』の世界を焼き尽くさなければならなかったのは、魔人ラヴァーズの奴めが逆らったから、我も不本意ながら仕方なくのことだったのさ!」
「アテュ! やっぱりあなたの仕業なのね! 自分の使うトート・タロットなのに、カードの中の世界を焼き尽くすなんて……魔人ラヴァーズに、カインにアベル……あの子たちはどうしたのよ? まさか、皆、焼け死んじゃったの? どうしてそんな酷いことができるのよ!」
愛流華奈が怒りに身を震わせ、アテュにまくしたてる。
「ふん! 魔人ラヴァーズは我を裏切ったのだぞ? 死んで当然だと思うけどな! カインとアベルたちも言ってみれば同罪さ! その他にもイヴだのリリスだの、いろいろ外野がいたけどな。皆、燃えてしまったさ!」
アテュはそう言ってニヤリと冷たい笑みを見せると、手元の魔人タワーに目を落とした。
「……しかしだな、我は気づいたぞ! この魔人タワーの目を使えば、我の好敵手であるアルカナ、お前の使うウェイト版のタロットなど、そのカードの中の世界ごと、すべて丸焼きにして破壊し尽くしてやれるということにさ!」
アテュはそう言ってグイッ、とロープごと引っ張り、縛り付けた魔人タワーの目蓋を大きく揺らしてみせた。
「ウンバババ! 俺様揺らされて気分悪い! 吐きそう! ウンバババ!」
グルングルンと振り回されて魔人タワーが苦しみの声をあげている。




