上空から聞こえる声
「まあっ、生きている意味が無いなんて、バランスのお悪いこと!」
金髪ショートヘアの白いドレス姿、その背中には大きな翼を生やした少女、節制ちゃんがバサバサッ、とその翼を羽ばたかせながら言う。
「ううむ! しかし我輩は、この聖杖を振るい、強制的に全員をカードの外の世界へと連れ戻したのですからな! こうして無事に戻って来られて、ホッと、ひと安心ですかな!」
黒髪紫眼の白い衣服に赤いマントを羽織った少女、魔術師ちゃんがその右手で白い聖杖を高く天へと掲げたまま、フウ~ッと溜息をつきながら笑って言った。
「全員を連れ戻したって言ったって、セイダがここに居ないんじゃ、ぜんぜん全員なんかじゃないよーっ!」
愚者ちゃんは半ば感情的になって、魔術師ちゃんの言葉に言い返した。
「うわあーっ、セイダーっ! ねえ、今どこに居るんだよおーっ! アタシ、セイダに会いたいよおーっ! ねえ、セイダーっ! セイダーっ!」
愚者ちゃんはそう言って、急に泣き喚くのだった。
「クウウウーンッ! シエンヌも愛しのマイだーりんの無事なお姿に、今すぐお目にかかりたいのですうううっ!」
犬耳の少女・シエンヌも、まるで愚者ちゃんにつられるかのように急に泣き始めた。
「うきゃあああああぁぁぁぁッ! シエンヌはあ! シエンヌはあっ! 愛しのお方に会えないと、悲しすぎて不幸すぎますですワンンンッ!」
その時だった。
遥か上空から、
「ウンバババ! 俺様マバタキしたいしたい! ウンバババ!」
という、男の低い唸り声が聞こえてきた。
「だめだ、許さんぞ! お前がすこしでも瞬きしたら、こっちの世界も燃えてしまうんだからな! ずっと目を閉じていろっ!」
「うわあああっ! アテュちゃん! カードの外の世界に戻してくれたのは嬉しいんだけど、こんな空の上じゃなくて、早く地面に下ろしてくれよおおおっ!」
続けて若い少女の低い声と、若い男の子の喚く声が聞こえてくる。




