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昨日とか今日とかどうだっていいのですわ

「たしかに……」

 月ちゃんがその額の三日月のマークを撫でながら頷く。


「……あたしにはよーく分かるんだ。ルーヴが言う通り、あの月は昨日とまったく同じ満月。月は満ち欠けをすることで日々、その姿を変えていく。満月ならだんだん欠けていくはずなのに、あの月は昨日からまったく欠けていないよ……」

 そう言って月ちゃんは、夜空に浮かんだ満月を指さした。


「もしかすると、ここは昨日の夜なのかもしれないわね……」

 赤いローブを身に纏った少女が一言、そう告げた。


「……トート・タロットの『恋人』のカードの中の世界は、カードの外の現実の世界とは時間の流れが異なるんだわ。いつまでも夜が続いていて、朝がなかなか訪れなかったという点を見てもそう。なので、私たちがカードの中の世界で過ごした時間の流れは、カードの外の世界の流れとは必ずしも一致しない……」

 愛流華奈はそこまで言い終えると、

「……それはそうと、清陀さんは……清陀さんは今、どこでどうしているのかしら……」

と、嗚咽おえつ混じりに言うのだった。


「そうですわよおっ……今が昨日なのか今日なのか、そんなことはどうだっていいのですわあっ! う、海野君が今、無事に生きているのか、いないのか……わた、わた、私はそのことだけにのみしか関心がありませんですことよおっ!」

 青峰貴梨花は、その切れ長の瞳に大粒の涙を浮かべていた。


「わた、わた、私の運命の殿方である海野君がもしも……もしも無事に生きていないのだとしたら、カードの中の世界であろうとカードの外の世界であろうと、どんな世界であっても、この青峰貴梨花にとっては生きている意味なんてありませんですわあああっ!」

 貴梨花はそう言って両手で顔を覆い、シクシクと泣き続けた。


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