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焼き尽くされる世界

「あたしの霊感が告げているんだけど、アルカナちゃんのお友達の男の子の波動がね、このトートの『恋人』の中の世界からは消えてしまっているんだ……」

 月ちゃんがその額の三日月のマークを手で触りながら、不安げに言うのだった。


「クウウーンッ! シエンヌの愛しのマイだーりんの波動が消えたってことは、愛しのマイだーりんが死んじゃったということですかあああっ!」

 シエンヌが泣きながら月ちゃんの胸元に掴みかかった。


「ひええっ、あたしにだって分からないよ……シエンヌー。やめて! ねえ、やめてったら!」

 シエンヌに掴みかかられ、月ちゃんが苦しみ悶える。


 その時、ボオオオッ! と、風に煽られた黒煙が愛流華奈たちの方にまで襲いかかってきた。


「ぎゃーっ! もうお終いだよーっ!」

 愚者ちゃんが大きく叫んだ。


「あははは! あはぁーっ! あはぁーっ!」


「クウウウーンッ! シエンヌはお嫁に行かないまま死んじゃうのですうううっ!」


「お、オレのワイルドな人生もここで終わるのかよーっ!」


「か、神様、仏様、お父様、お母様あああっ! 助けてくださいですわああああっ!」


「清陀さん……きっとまた天国で会えますよね……」


 その他の面々も人生の最後の瞬間を覚悟した言葉を残すなか、

「ううぬ! もうここにいるのも限界ですかな! 我輩、強制的に全員をカードの外の世界へ連れ戻すのですかな!」

 魔術師ちゃんは右手に持った聖杖せいじょうを天に高く突き上げたままブルンッ! と大きく回転させた。


 ボムッ! という音とともに、愛流華奈をはじめとする、その場にいる全員の姿が消えた。


 愛流華奈たちの姿の消えた後、トート・タロットの『恋人』のカードの中の世界は、劫火ごうかによって完全に焼き尽くされたのであった。


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