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礼拝堂に響く笑い声

「待てーっ! この礼拝堂から外へは逃がさないよ! ね? アベル?」


「そうだよ! この礼拝堂から外へと逃がすわけにはいかないんだ! ね? カイン?」


 褐色の肌の少女、カインは手にした棍棒を振り上げて、清陀の後を追った。

 色白の肌の少女、アベルは白い薔薇を手にしたまま、カインと共に清陀の後を追うのだった。


「ガルルルッ!」


「グワッ! グワッ!」


 赤いライオンと白い鷲もカインとアベルと共に清陀の後を追いかける。


 バサバサッ! バサバサッ! 翼の羽ばたく音をさせながら、オルフェウスの卵がフワリと浮き上がった。赤い翼を羽ばたかせながら、その卵に巻き付いた紫の蛇が「シャー、シャー」と威嚇する鳴き声を響かせながら清陀を追いかけていく。


「くっ! 私の恋の矢の効力がこんなにも簡単に冷めるはずはない! もう一度、恋の矢の餌食にしてやる!」

 魔人ラヴァーズはその懐から黄金色の弓を取り出すと、ピンク色の矢をその弓につがえ、清陀を狙いギリギリッとその弓を引き絞った。


「うわあああっ! いろんなものがいっぺんに僕を追って来るよおおおっ! た、助けてえええっ!」

 清陀が後ろを振り返り、自らを追う二人の少女や赤いライオン、白鷲、蛇の巻き付いた卵などを目にして恐怖の悲鳴を上げたその時、

「ハハハハッ! 我としたことがトートの『恋人』のカードの世界で迷子になるとは思ってもいなかったな!」

と、一人の少女の甲高い笑い声が礼拝堂の天井から聞こえてきた。


「うわあっ? アテュちゃんっ?」


「ああ! アテュ様っ!」


 清陀と、魔人ラヴァーズが一斉に上を見上げると、礼拝堂の天井には、黒いパゴダの日傘を広げてフワフワと宙に浮かぶ一人の少女の姿があった。とんがり帽子を頭に被った、赤髪紫眼のゴシック・ロリータのドレスに身を包んだ少女だ。


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