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イヴとリリス

「「わたくしたちが立会人を務めさせていただきます」」

 その時、二人の女性の揃った声が上方から聞こえてきた。


「わたくしはイヴ。その二人の娘たち、カインとアベルの母親です」

 礼拝堂の左上方、フードを被った大男の左上に全裸姿で立っている女が名乗る。


「わらわはリリスじゃ! 本来ならば、わらわこそがアダムの奴めと添い遂げるはずじゃったが、ここにおる姑息なイヴの奴めに横取りされてもうたのじゃ。でも、まあ良い! 過ぎたことじゃ。今日は、そなたたちの結婚式に立ち会うぞ! よきにはからえ! かーっかっかっか!」

 礼拝堂の右上方、フードを被った大男の右上に立つ、ふくよかな裸体を晒した全裸姿の女が名乗る。


「この子たちの準備も万全だよ! ね? アベル?」

 褐色の肌の少女、カインがその手に一羽の白い鷲を引き連れて来た。


 バサバサッ、とその翼を羽ばたかせて、

「グワッ、グワッ」

と甲高い声で鳴いている。


「うん! この子たちの準備も万全だ! ね? カイン?」

 色白の肌の少女、アベルはその手に一頭の真っ赤なライオンを引き連れて来た。


「ガルルルッ」

と空気を裂くような叫び声をあげながら、赤いライオンが礼拝堂の中をゆっくりとした足取りで歩いている。


「あとはオルフェウスの卵だけだね? ね? アベル?」


「あとはオルフェウスの卵だけだよ! ね? カイン?」


 白鷲と赤いライオンとをそれぞれ床に座らせたカインとアベルは、礼拝堂の奥へと駆けって行くと、今度は一つの大きな卵を二人して抱えて持って来るのだった。


 二人が『オルフェウスの卵』と呼ぶその卵は、薄い茶色でラグビーボールくらいの大きさがあり、鳥のような赤い翼が卵のその両脇から生えていた。そして、卵のその表面には紫色の皮膚をした一匹の蛇がグルグルと巻き付き、赤い二股の舌を這わせながら、その頭を覗かせていた。


 カインとアベルはオルフェウスの卵を運んでくると、お互いに向かい合って座る白鷲と赤いライオンとの間に置いたのだった。


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