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14番 TEMPERANCE 「節制」

「しかたないわ。まずは貴梨花さんのスカートを取ってあげないと……」

 愛流華奈はタロット・ポーチを取り出すと、ポーチの中から一枚のカードを取り出した。


「14番、TEMPERANCEテンペランス.『節制』のカードより、具現化せよ! 節制ちゃん!」

 愛流華奈が叫ぶと、ボムッ! という音とともに、カードから白い煙がたちこめた。


 白い煙がしだいに人の形を作っていく。


「あら? まあ! アルカナさん、あなたのそのお洋服はちょっと赤がキツ過ぎませんか?」

 カードから出て来た白い煙は、白いドレスを着た金髪ショートヘアの少女に変化した。 


 見た目に十代後半くらいで、その背中には大きな赤い翼を生やしている。少女は両手にそれぞれ聖杯カップを持ち、片方の聖杯カップからもう片方の聖杯カップへと液体を移し替えるように注ぎ込んでいた。


 節制ちゃんと呼ばれるこの少女は、愛流華奈の赤いローブ姿を見て苦笑したのだった。


「節制ちゃん! 見ての通りなのよ!」

 愛流華奈は節制ちゃんに、貴梨花と月ちゃんの様子をそれぞれ指し示した。


「まあ! 皆さんなんてバランスのお悪いこと!」

 節制ちゃんは愛流華奈にコクリと頷くと、背中の翼をバサバサッと羽ばたかせ、フワリと、その身体を宙に浮かせた。


「それ!」

 節制ちゃんは木の枝に引っ掛かっている貴梨花のスカートをその腕に絡めると、

「あなたのその真っ赤なおパンツ刺激的過ぎますよ? 欲求不満の表れですか?」

と言いながら、ポイッ、とスカートを貴梨花に投げ渡した。


「んまあっ! 失礼しちゃうわね! 私は欲求不満なんかじゃありませんわ! 毎日が恋の勝負日なだけですわ!」

 真っ赤なパンツ姿を露わにした貴梨花は、スカートを受け取りながら、甲高い声で不機嫌に叫んだ。


「まあ! 毎日が勝負日だなんてこれまたバランスのお悪いこと! 節度をお保ちなさいな!」

 節制ちゃんは貴梨花を軽くあしらうように鼻でフフッと笑うと、

「どれ、お次は月さんね」

と翼をバサバサッと忙しく羽ばたかせ、月ちゃんの方へと飛んで行った。


「ぎゃーっ! 何ですの! あの上から目線は!」

 貴梨花は赤いパンツ姿のまま、ドタドタと悔しそうに地面を踏んだ。



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