お日様昇ると三日月墜ちる
「オッケー! そんなのお安い御用だいっ!」
ストッ、と三日月の淵にその身を乗り上げさせることに成功した太陽ちゃんは、月ちゃんと愛流華奈との間で跨ると、その両手を大きく広げた。
「えーっ! だ、ダメだよ、そんなことしちゃあっ!」
月ちゃんが慌てて後ろを振り向いて言う。
「あたしは夜にこそパワーを発揮するんだよ? お日様なんて昇ったら、あたしのパワーが弱まって、ヴェロモトゥールも飛べなくなっちゃうよ?」
月ちゃんが困った顔でそう言うも、
「サンサン輝け! 太陽ババーンっ!」
と、太陽ちゃんが両手を広げたまま大声で叫んでしまった。
「コケコッコーッ!」
どこからともなく鶏の鳴く声が聞こえ、地平線の向こうが明るくなり始めた。
地平線からオレンジ色の太陽が顔を出し、夜の闇が急速に消えていく。
「まあ! やっと朝が来ましたわね!」
青峰貴梨花が、照らす朝陽のまぶしさにその額を腕で覆いながら、嬉しそうに叫ぶ。
「そうですね! 朝になりましたね!」
愛流華奈が後ろの貴梨花に振り向き、そう応えたその時、プスンッ! プスンッ! と鈍い音がどこからともなく聞こえたかと思うと、ガクンッ! とヴェロモトゥールが傾き、前へとつんのめるようにして急激に落下を始めた。
「なななな、なにごとですのおおおっ! どんどんと落っこちていきますわよおおおっ!」
「きゃあああーっ! 落ちるーっ!」
貴梨花の絶叫と、愛流華奈の悲鳴が飛び交うなか、
「ほぉーらーっ! だから言ったのにいいいーっ! あたしは夜の女神だから、太陽とは相性が悪いんだよおおおおおーっ」
と、月ちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえた。
愛流華奈たちを乗せた三日月がグルングルンと回転しながらそのまま地面へと落下していく。
「ぎゃああああーっ、神様、仏様、お父様、お母様、助けてくださいですわあああっ!」
「きゃーっ、助けてーっ」
「あっははははぁーっ! あはぁーっ! あはぁーっ!」
「サンサンサァァァーンッ! 太陽バババァァァーンンンッ!」
各々が個性的な悲鳴を上げるなか、三日月はそのまま、うっそうと木の生い茂る森の中へと墜落したのだった。




