僕のハートがドッキュンしたよ?
「うおっ? 魔人ラヴァーズめえ! この我に恋の矢を放つとはな!」
アテュは後ろを振り向き、恋の矢が自らに迫り来るのに気が付いた。
「急旋回だっ! 恋の矢など回避してやるっ!」
アテュが右腕をグルンと大きく振り回す。それと同時にアテュが右腕で持つ黒いパゴダの日傘がブルンッと回転し、宙を舞うアテュの身体が大きく旋回した。
「む! 恋の矢を避けるとは! ならば二の矢、三の矢放つまでだわ!」
魔人ラヴァーズがピンク色の矢を次々に発射させる。
「ぐうっ! 魔人ラヴァーズめ! しつこいぞっ!」
アテュがブルン、ブルンと日傘を回す度にアテュの身体が右に左にと大きく回転する。
「うわああっ! 右に左に揺れすぎてなんだか気持ち悪くなるよおおおっ!」
清陀は目を回し、アテュの腕の中でその身を大きくもがき始めた。
「バカ! お前、暴れるな! お、落っこちるぞっ!」
アテュが暴れる清陀をなだめようと必死になったその時、ズルッ、とアテュの腕から清陀の身体が抜け落ちた。
「うわあああっ! 落ちるっ! 落ちるうううっ!」
清陀が落下していく。落ちていく清陀を目がけて、魔人ラヴァーズの放ったピンクの矢が直撃する。
「うわ? 僕のハートがドッキュンしたよ?」
恋の矢が清陀の胸に命中し、清陀の左胸から大きなハートマークが現われ、鮮やかなピンク色の輝きを放った。
「うわああっ! ぼ、僕は魔人ラヴァーズちゃんが大好きだあああっ!」
清陀は落下しながら、魔人ラヴァーズに恋の告白をするのだった。
「いやん。私もご主人様、大好きんっ!」
落下する清陀の身体を、その両腕で魔人ラヴァーズが受け止めた。
「わあ! 僕の愛しの魔人ラヴァーズちゃんが、この僕を抱っこして受け止めてくれた!」
清陀は魔人ラヴァーズの腕の中で恍惚の表情を浮かべた。
「ぼ、僕はなんて幸せなんだあーっ! 魔人ラヴァーズちゃんの胸に一生抱かれていたいなあっ!」
「うふん。ご主人様ん、やっと両想いになれましたね。でも、この屋敷は私たちの中を邪魔する者が多すぎます。このまま二人だけの愛の逃避行をしましょう!」
魔人ラヴァーズは腕の中の清陀に優しく微笑むと、そのまま屋敷の廊下の窓をバリンッ、と突き破り、屋敷の外へと飛び出していくのだった。




