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アテュを狙う恋の矢

「フンッ! バカなオオカミとイヌどもが我に襲いかかったところで、我の相手になるかってんだよ!」 

 アテュが片手で日傘を振り回し、襲いかかるルーヴとシエンヌを振り払う。


「ウォォーンッ! イテテテッ! コイツ、オレのこと日傘で突っつきやがる!」


「クウウーン! 痛いです! 痛いです! シエンヌのお嫁に行く前の大事な身体を日傘なんかで弄ばないでくださいですワンッ!」


 アテュは、ルーヴとシエンヌを振り払うと、手にした日傘をバサッと勢いよく広げた。


 クリーム色のフリルの付いた黒いパゴダの日傘がアテュの頭の上で広げられると、フワリと宙に浮かび始めた。


「うわあっ? ぼ、僕の首を押さえ込んだまま、あ、アテュちゃんは空を飛ぶ気なのおっ?」

 清陀はアテュに首元を押さえ込まれたまま、アテュと一緒に宙に浮かび上がっていた。


「ハハハハ! 我と一緒に宙を舞い、このまま二人だけの楽園へ行こうじゃないか! セイダとかいうオスよ!」

 アテュは清陀を抱きかかえたまま宙に浮かびながら屋敷の廊下を舞い、外へと通じる窓の方へと近づいていった。


「ウォォ―ンッ! セイダとかいうアイツ連れて行かれちまうぞ! オイッ! 待てよ! 待てったら!」

 ルーヴが四つん這いのまま廊下を走り出し、アテュと清陀を追いかけていく。


「クウウウーンッ! シエンヌの……シエンヌの愛しのマイだーりんが、さらわれていきますーっ! 待てーっ! 待つですよーっ!」

 シエンヌは清陀の足元を掴もうと、両手を前へと突き出しながら二本足で走り出した。


「月ちゃん! ヴェロモトゥールで追いかけて!」

 愛流華奈が、月ちゃんにアテュを追うように頼み込むも、

「えーっ。あたし、あのアテュちゃんと戦って勝てる自信がないなあ……」

と、月ちゃんは下を向いて不安そうに呟くのだった。


「私の結婚式を中止させてなるものですか!」

 その時、魔人ラヴァーズの甲高い声が廊下に響き渡った。魔人ラヴァーズが背中の黄金色の翼を羽ばたかせて宙を飛び、後方からアテュを追っていく。


「こうなったらアテュ様、あなたを私の恋の奴隷にいたします!」

 魔人ラヴァーズはその腰の矢筒からピンク色の矢を取り出すと、弓に矢をつがえアテュに狙いを定め、その弓を引き絞った。


「恋の矢、発射!」

 ピンク色の矢が前方を飛ぶアテュに向かって放たれた。


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