女の子ってムズカシイ
「うふふ、愚者ちゃんによっぽど気に入られちゃったみたいですね?」
愛流華奈は、『愚者』のカードを木箱の中にしまい込みながら、清陀に向かって微笑みかけた。
「ま、まあね。愚者ちゃんって、なんだかノリの軽い子なんだね……ぼ、僕はあんなふうに積極的にダーリンとか言ってアタックしてくる女の子はちょっと苦手だなあ……」
清陀は口では愚者ちゃんのことを苦手などとは言いながらも、顔を赤らめて、その目は嬉しそうに緩みきっていた。
「むう……目が緩んでますよ。本当は好きになったんじゃないですか? 愚者ちゃんのこと……」
愛流華奈はそう言うとなぜか急に不機嫌になり、プクウと唇を尖らせた。
「な、何で君が不機嫌になるんだい? ぼ、僕は別にその、あの……愚者ちゃんのことは……可愛い女の子だなとは思うけどさ……」
清陀がどぎまぎして言葉を詰まらせながら言った。
たしかに愚者ちゃんはとっても可愛かったなあ。あんなふうに抱き合うようにして女の子と身体を密着させたのは僕、生まれてはじめてかもだ……また愚者ちゃんと抱き合って空飛びたいなあ……
清陀が口元をほころばせながらそう思っていると、
「……私だって、おっぱい触らせてあげたのにな……」
と愛流華奈が小さい声でボソッと言った。
「え? 何か言った? おっぱいがどうとか聞こえたけど……」
清陀の耳には愛流華奈のボソッとつぶやいた声が聞き取れず、かろうじて、「おっぱい」の部分だけが聞こえたのだった。
「な、何でもありません!」
愛流華奈は今度はキッパリとした口調で言うと、プイッと横を向き清陀から顔を逸らした。その頬は何故か真っ赤に染まっていたのだが、清陀が愛流華奈の頬を赤く染めていることに気が付く由もない。
「そ、そう? 何でもないなら別にいいんだけど……」
清陀はすこし気まずい雰囲気を感じた。
なんだか女の子ってムズカシイなあ。さっきまで機嫌がよかったと思ったら、急に不機嫌になってみたりさあ。愛流華奈っていう子はどうして怒っているんだろ。僕、何か怒らせるようなこと言ったのかなあ……
清陀はそう思いながらも、気まずい雰囲気をなんとか変えようとして別の話題を探した。
「……ねえ、そう言えばさっきさ、君、何かの本を読んでいたみたいだけど、あれは何の本なの……?」
清陀はすこしバツが悪そうにポリポリと頬を人差し指で掻きながら、愛流華奈に訊ねた。
「ああ、この本ですか?」
愛流華奈はテーブルの上に置かれていた本をふたたび手に取り、パラパラとページをめくりだした。




