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アビリティ・ハイスクール  作者: 千賀大和
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図書館

まさかの未羽からの一言に、彩乃だけでなく秀も戸惑う、いや唖然するしかなかった。

結婚、そう未羽は結婚といったのだ、男女が結婚という配偶関係の契約をすることである。


「な、何言ってるんだ、未羽ちゃん、俺たちまだ高校生だし結婚とか早いよ」


「でも、お兄ちゃんは来年は18です、そうすれば法律では結婚できることになってますよね、明日お互いの両親に婚約をすると伝えに行きましょう!」


「思っていたよりも凄いのね、あなたの妹さん」


「………………こんなところ誰かに見られたら」


「あれ?私の存在忘れてるわよね」


彩乃のツッコミも聞こえておらず、秀はあたふたと挙動不審に辺りを見渡す、すると「えっ………………」


氷柱だった、雪の降る季節、北国へ行くとよく見る屋根から垂れている氷柱。 それが秀の頬のすれすれを通過していった。 いや、わざと外したのか、こんな季節外れの時期に氷なんてあるわけもなく、ましてや氷柱が落ちてくることなど考えられない。 自分がそうだからだろう、異能の力を持つ自分だからこそ今の一撃を飛ばした人物がすぐに思い浮かんだ。


「何してるの、桐谷君」


「や、柳瀬さん!?どうしてこんなところに」


「力の気配を感じたから来てみたの、また桐谷君が戦ってるんじゃないかと思って。 見たことのない人達がいるけど、桐谷君の…………何?」


姫華はいつものように感情を表に出していないように見えるが実際はどこか怒りを感じた。

怒っている、彼女が氷柱をわざと外したのはもしかすると牽制のつもりだったのか。


「あ、あのさっきまで襲われててこの2人と協力して倒してたんだ」


「………嘘つき」


「え?」


姫華は小声で何か呟いたが、秀と少しの距離があったため上手く聞き取ることができなかった。


「なんなの、あの雌豚、お兄ちゃんあんな人と知り合いだったの?」


「………………未羽ちゃんはどこからそういう言葉覚えてくるの?」


「…………あなたが誰であろうと関係ない、敵なら倒すだけ」


「奇遇ですねえ〜、私も〜あなたが嫌いですよ」


姫華と未羽はいがみ合ったあい、縄張り争いをしている動物のように目を鋭く尖らせている。


「…………はぁ、あなた達落ち着きなさい、話があるの、あの怪物について話すから」


「柳瀬さん、未羽ちゃんも観音寺はあの怪物について詳しいみたいだし話を聞こうよ、ね?」


「未羽……………桐谷君」


「な、なに?」


恐る恐る反応を伺うと先ほどまでと違って、姫華からは怒りの感情を感じなかった。その代わりに彼女の頬は紅色に染まっていた。


「その子を未羽って呼んでるなら……………わ、私のことも姫華って呼んで……………欲しい」


日が暮れて太陽が沈んでしまった後なためか、暗がりでよく見えないが、少しだけ姫華の頬が赤くなっているような気がするのは気のせいなのだろうか。


「あ、ああわかったよ、姫華」


「…………思ったより嬉しいかも」


姫華が何やらブツブツ呟いているが、秀にはよく聞こえない。


「来て、私の家ここからそう遠くないから」


彩乃の後についていく三人に会話はなかった。 いや、会話できるような雰囲気ではないというのが正しい表現かもしれない。


「…………」


「……………」


姫華と未羽の2人が彩乃の後に続きながらいがみ合っているのだ。

この2人の間に割り込んで会話を始める勇気は今の秀には起きなかった。


「な、なあ2人はこの後何か食べたいものはあるか? お兄さん奢っちゃうぞー、なんて」


「私はこの女を始末したいです、お兄ちゃん」


「いい度胸ね、さっき力に目覚めたばかりの小童が私に勝てるとでも?」


「仲良くしようぜ、な?」


「あなた達もう直ぐ着くわよ」


彩乃の一言で会話が途切れたことで、秀はホッと一息をついていた。



「ここって私立図書館?」


「そうよ、私たちが夏休みの課題とかやるときにお世話になる私立図書館」


彩乃は制服のポケットを探り鍵をドアの鍵穴に差し込んだ、ガチャリという音を立てて扉を開ける。


警備システムはあらかじめ切ってあるのか音は鳴らず、彩乃に続いて三人は後に続いて暗い図書館の中を進んでいく。


「松明とかがなくても携帯があれば明かりには困らない、便利な時代だよな」


「なぜ明かりをつけないの」


暗がりでよく見えないが、後ろから声が聞こえ秀は後ろを振り返る。 姫華の言い分ももっとな気がした。


鍵を持っているならば彩乃は関係者ということなのだろう、それならば明かりをつけて堂々と進めば良いのではないか。


「うーんのとね、暗い方がこれから進むところの存在知られないから」


「これから進む?図書館のことじゃないのか?」


「図書館といえばそうだけど違うかな、桐谷君、手伝って」


「お、おう」


「その植木を反時計回りに回して」


秀は言われるままに植木を反時計回りに回した。すると、ガチャリと音を立て壁の裏から扉がさらに出てきた。


「こ、これは秘密の扉か?」


「うん、これくらいしないといけないからね、うっかり子供が倒してバレるのも困るし」


彩乃はそういうと今度は扉のすぐ横にあるボタンを押した。 部屋は明るくならなかったが、扉の向こう側からは光が漏れている。


奥にある部屋の電源だったのだろう。


「来て」


三人は後に続くと長い廊下があり、奥にはエレベーターがあった。


「ここまでしないといけないほど大事なものでもあるの?」


「そうね、あの怪物たちの存在は決して知られてはいけないのよ、まぁ普通の人間には見えないと思うけどね」


ピンポーンと音が鳴りエレベーターの扉が開いた。


「これは」


秀たちは言葉を無くした。そこには上の図書館の所蔵している本の数など比ではないほどの書物の数がある。


まるで大英図書館ではないか。


「さてと夜遅いから手短に済ませましょうか」

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