プロローグ 前編
真っ白な、何もない、世界、そこにふと小さな黒い球体が現れる。
その球体から何かが出てくる。
大きな・・・物体、長い、手、腕、胸、顔、胴、腰、足・・・
それは黒い球体を基準に言えば巨人と言うに相応し大きさの存在
巨人は自身が出てきた黒い球体を手のひらに乗せ握り潰した。
そうすると巨人は遥か彼方を見据える、すると光が巨人の額に集まり大きな塊となる
光の塊は放たれた、巨人が見据えた遥か彼方を目指して
巨人は動き出す自身も遥か彼方にあるもう一つの黒い球体をを目指して―――――
「救世主様が降臨したわよ」
「救世主て・・・キリストかよ」
天気は快晴、雲一つない青空、俺は学校の教室から空を睨む・・・なんて自分でもそんなこと考えてるのが
恥ずかくなってくるな、まぁなんとも平穏な日常だ、それも悪くない
「・・ぇ・・・う・・・ゆーすーけー!」
「なんだよ人が平穏な日常を安堵してる時に」
「ねぇねぇこれ行ってみない?」
そう言って一枚の紙を出してきたのは幼馴染の山咲花音だ、その紙には、近くにあるカトリック教会で日曜日に
ミサが行われる事が記されていた
「あー熱心なキリスト教徒なのはいいことだが、俺は生憎、無宗教なんで、パス」
「もーそんなこと言わないで行くの!」
「なんでさ?」
「なんでって君の家系もキリスト教でしょ!」
「親がキリスト教だからと言って俺自身が」
「いいから一緒に行くの!」
そう言って花音は俺の机にそのチラシを叩き付け教室から出ていった
「・・・ミサねぇ」
正直に言って宗教とかに興味がない、どうでもいい、一応、俺もキリスト教徒だが、折角の休みを潰してまで
祈りをささげるなぞはしたくない、だけど行かないと花音に怒られるし
・・・誘われたんだ、少し顔出すぐらいはしよう
「手当たりしだいにかぁ」
「そうね、それが一番良さそうね」
「オイ、もう行くぞ」
「兄さん早く、姉さんはもう着いてるよ」
「あ〜めんどくせぇなぁ」
ここかミサが行われる教会、少し大きがまぁよくある町の教会て感じだな、さて花音を探すとしますか
結構、人多いんだなミサってやつは、お?
「よ、花音」
「あ、来てくれたんだー」
「来てくれた、てお前が来い言ったんだろーが」
「そもそも俺はお前の顔見に来ただけで、祈る気は」
「あ、司祭様が入って来たよ、静かにしててね」
「聞いてねー」
よくもまぁこんな事に熱心になれるものだな、司祭の長ったらし話をウトウトしながら、花音に起こされながら
聞いていると、司祭が何か聖書か?本の朗読を終え、閉じた時に
「・・・グッフゥ」
司祭が口から血を吐き出した。
司祭の胸から銀色の大きな針のようなもが突き出ている。
司祭は倒れた。
司祭の後ろに真っ白なくるぶしまであるローブを羽織りフードを被った男が一人。
阿鼻叫喚の教会が出来上がった。
俺は、走った、逃げた、出口に向かって
何が起こったか理解できない、目の前で人が殺された、理解ができてない、ただ走るんだ出口に向かって、そうだ
花音は、花音はどうした?花音も殺されたのか?
「カノーーーーーンッッ」
ただ叫んだ、花音が答えてくれるのを信じて、駄目だ返答がない、走るしかないもうすぐ出口だ
着いた、後ろはどうなってるんだ、司祭が本当に倒れているのか、悲惨な事になっているのか、何もなかったのか
振り向くんだ、ゆっくり、とてつもなくゆっくり
「・・・なっ」
俺の周りには、俺と同じ逃げてきた人、視界の向こうには、恐怖で動けない人、花音は後者だ
「・・・ぁあ・・ああああ・・・・うわぁぁぁあぁぁ!!」
花音が泣き崩れた、今すぐ花音の所へ行かないと、行くんだ・・・・・・・
どうした・・・・・・行くんだろ・・・・・・・行け行くんだ!・・・・・・・・
足が動かないどころか、今、俺は、後ずさりしている!・・・・・
白いローブの男は動き出す。
司祭の死体をまたぎ、花音へ近づく。
花音の右肩に男の左手が触れる。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
悠介が叫ぶ。
司祭の死体とともに男が消える。
2か月後
精神病院
「・・・すいません、山咲花音さんの病室は?」
「はい、山咲花音さんですねーえーと・・・・・すいません今、山咲花音さんは面会謝絶となっております」
「なっ・・・・ふーぅ・・・・・そうですか、ありがとうございます・・・・」
外に出よう、皮肉にも天気は快晴、雲一つない青空、家に帰ろう
俺は両親が海外にいる、つまり一人暮らしだ、幼馴染が、花音が世話焼きだったためかアイツに結構甘えていた
あれから警察に色々聞かれたり、周りにに心配されたりしたが、そんなことはどうでもいい、問題は花音だ、アイツは、
記憶障害を患った、原因は、「司祭が殺された事によるショック」らしい、ほとんどの記憶を無くしている、
俺のことも
そういや、花音がよく喋っていたけ「司祭様に救われた」て・・・
「ハァー」
大きくため息をつく、正直泣きたい
「よう、少年」
「・・・・・お前はッ」
ただ家に帰宅途中で会うとは、運がいいのか悪いのか、この白いローブは見間違えもしない、花音の記憶を壊した・・・
「いやーホントあの娘には悪いことしたね」
「・・・どの口が言うッ!人を殺してッ人の記憶を壊してッ!」
悠介が激昂する。
白いローブの男は悠介に指をさす。
悠介が止まる。
「『人』を殺して・・・それは間違いだ」
「・・・何をッ!あの司祭は人じゃないとでも言うきかよッ!」
「そうだ」
「なっ」
「単純な話さ、あの司祭は人間の外敵だから殺した」
「なに意味の分からん事を言ってやがる」
「おっと、時間がないんでね本題に移らせてもらう、あの娘を直す法方がある、知りたかったらここに来い」
そう言って男は俺に名刺サイズの紙を渡してきた、喫茶店edge、喫茶店?
「花音を直せるのかッ!」
「100%直せる」
「時間が押してるんでね行かせてもらう鳴海悠介」
「なんで俺の名前・・・」
いつの間にか男は消えていた、意味が分からない、いまの状況、起こったこと、さっぱりわからない、この喫茶店に
行けば花音を直せる、それだけは何故か確信できる
「ホント意味分からん・・・」
翌日
「ここか・・・」
いま俺は、昨日あの白いローブの男に、渡された紙を頼りに、件の喫茶店を見つけた、見た目は普通の喫茶店
警戒するに越したことはないか
「よし」
俺は入口の取っ手に握り扉を開ける
「いらっしゃい」
俺が中に入ると、ガタイのいい初老のバーテンが奥のカウンターで珈琲を入れていた
他は、
パンツスタイルのスーツを着た女性がPCを開き何かしている。
その向かいに白黒のパーカーの小さい女の子がヘッドフォンをして音楽を聴いている。
別の席にタンクトップのスゲー筋肉質の男が食事をしている。
あの白いローブの男はいない
「お好きな席へどうぞ」
そうだよな、ここは喫茶店、魔王の城とかじゃないんだ、とりあえ適当な席に座るか
「ご注文は?」
「あ、アイスコーヒーを1つ」
「ハイ、かしこまりました」
拍子抜けだな、入る前、緊張していた自分が恥ずかしい、でもどうするんだ?ここい来い、て言われて来たがいいけど
なにすればいいんだ?アイツを待つのか?はたまた探すのか?
「アイスコーヒーになります」
「あ、どうも」
とりあえずコレ飲んでからにするか・・・
「ねぇ」
「はい?」
白黒のパーカーの女の子だ、いきなりなんだ?
「アンタ、鳴海悠介?」
「・・・え、まさか」
「兄さんから聞いてるでしょ」
「兄さんて、あの白いローブの」
「はぁ、説明しろよクソ兄貴・・・ついてきて」
「え、でも、ちょっ!」
俺はその女の子に引っ張られ喫茶店の二階に連れてこられた、女の子はなんの変哲もない扉の前で止まった
何なんだこの子、あの男の知り合い?「兄さん」て言ってたけど、まさかこの子アイツの妹?でこの部屋は?
女の子が扉を開ける、扉の向こうは・・・
「なんじゃこりゃ・・・」
図書館のような博物館のような建物の外見からは、物理的にあり得ない、大きさの部屋?だ、大量の本棚、天井が
見えないほど高い
「なにポカンとしてんのさ、行くよ」
「・・・ぁ、あぁ」
理解が追いついてないな俺、今はこの子についてい行こう
10分ぐらい歩いただろうか
「・・・・なぁ、君は・・何者なんだ?」
「ボクのことかい?」
「あぁ」
「鏡麗奈、14歳、鏡零士の妹で中学生で紋様士」
「・・・紋様士?」
「着いたよ」
そういと彼女の前は、本棚達が退かされ、少し広いスペースができていた、真ん中に3人用ぐらいのソファーとテーブル、
周りには武器?剣、刀、斧、弓矢、よく分からない何かが大量に散乱している
真ん中のソファーに本をアイマスク代わりにして寝ている、白い、ローブの、男・・・
「はぁ、起きなよ兄さん」
彼女、麗奈ちゃんはアイマスク代わりの本を持ち上げ、その男の顔面に叩き付けた
「ッー痛ってーな」
「兄さんが悪い、ボクに非はないよ」
「ヘイヘイ」
「さて、来たな、悠介」
色々突っ込みたいが、重要なのは・・・
「本当に、アイツを花音を直せるんだろうな」
「じゃっボクは戻らせて貰うよ」
そう言って麗奈ちゃんは戻って行った、そんな事は今はどうでもいい、今は、
何かが肩に触れる、何だ、手?
「じゃぁ行こうか」
「はぁ?」
「ッここは、病室!?」
どうなってんだよ、俺さっきまで、図書館みたいなトコに・・・
「瞬間移動てーやつ、この娘かい、花音てーのは?」
花音・・・花音が、うつろな目をしてベッドの中にいた、微動だにしない・・・人形みたいだ
「・・・え、は?、あぁそうだけど?」
「じゃぁ」
男が花音の額に右手を当てると、男の右手首周辺が、曲がった?なんだグニャっと・・・空間が曲がってる・・のか?
「なるほどな、この娘、どうやらあの司祭が心の支えてーか、絶対の存在?神サマみたいな存在と思っていたらしい」
「・・・なんでそんなこと」
なんだ、だんだんアイツの右手首に、光が集まって
眩しい、見てられない
・・・と思ったら光が消えた
「おい!何したんだ!」
「・・・ゆーすけ?」
「ッ花音!分かるのか!俺が!」
「悠介は悠介でしょ」
俺は花音に抱き着きながら泣いていた
「と、悪いが、感動の対面はここまで、彼女も明日には退院出来るようにしておこう」
「・・・もう少しだけダメか?」
「ダメだ、この病院にさっきまで喫茶店に居た俺たちが居るのはおかしいだろ?警備の人とかに見つかったらメンドイんだよ」
「・・・・分かった」
「君にも俺達が今したことは忘れてもらうよ」
そう言って男は花音の額にもう一度手を当てる、が今度は何も起こらなかった、しかし花音が動かない
「今度は何をした」
「静かに、眠っているだけだよ、ついでに今の出来事も彼女の記憶から消した、・・・・司祭の事も」
そう言って男は俺の肩に手を当て目を閉じる
「!ここは・・・」
「戻ってきただけさ」
「・・・あんた一体何者なんだ」
「うーん、そうだな、鏡零士、二十歳、鍛冶士てーのをやってる、選ばれた者さ」
「選ばれた者ォ?」
「お前もな」