ある日、授業にて(前編)
2016年ですね~。
今年もよろしくお願いします!!
ーある日、授業にてー
グラウンドに来てすぐだが、状況は俺でも飲み込めたぜ。気弱そうな男がこれまた、気の強そうな女の子の背後にてうずくまっている。対峙しているのは、いかにもスポーツできそうな奴だ。ああ、明らかに『気弱な男子を苛めてる男子から庇ってあげている女の子』の図だ。
「おい、委員長どけ。そいつは剣術の組み手相手なんだ。」
「何いってんの!?組み手っていいながら一方的に『手段』使って苛めてるだけじゃない!」
「そいつが弱すぎるからいけねーんだ。俺はとっととレベルあげて親父のような騎士になんだよ。わかったら、そこをどけ、オラ!!」
「くっ!」
いきなり木刀を振りかざしてもちゃんと防御出来てるところが、すごいな。女の子なのに。
「はっ!!」
ピシッっっ!!!!!
ん?木刀で攻撃してその効果音はおかしくない?ていうか、木刀が、しなったように見えた気がするけど。
「っっつ!っっ!!てっめええぇ!」
ガッ!ゴッ!ガキっ!
激しい攻防が続く。
とにかく、近くにいる不安そうに見守っている、少しポッチャリした巻き髪の少年に話しかけることにした。
「ねぇねぇ。」
「?君誰?」
ああ、そういえばこういう時ってどう自己紹介したらいいんだろ。まあ、適当でいいか。
「俺、シュウていうんだ。転校生。」
「へえ、珍しいね、この時期に。僕、カイト。よろしくね。」
よし、人相いい奴選んで正解だぜ。
「なあ、いつもあんな感じなの?」
「うーん。普段は女の子のセリアは口出ししないけど。なんせ、今気まずそうにしているリクトがあんなだしね。幼馴染みとして放っておけなかったんでしょ。」
なるほど、女の子はセリアで、幼馴染みのリクトか。
「で?あのお調子者は?」
「しっ!あいつはこの村の騎士長を父親に持つ、ザーベルトだよ。」
「おい!!カイト!!てめぇ、今俺の悪口いったな!?」
わお、すごい地獄耳。驚嘆に値するぞ、ザーベルト。
「ち、違うよ、ザーベルト!この人が君のことを尋ねたんだよ!」
おい、カイト。転入生にこの状況をたてるなんて、そりゃ、ないぜ。俺らの友情、儚いな。
「ああ!?誰だよてめぇ。」
おお、なんて目付きだ。やめてよ、チビっちゃう。てか、180㎝ぐらいあんじゃねーか?ほんとに学生か?学生証見せろ。
「俺は転入生のシュウだ。よろしく頼むよ。」
「……転入生か。俺はザーベルト。この村を代々守り、王の護衛も任されたことがある由緒正しきジーク家の64代目だ。」
「ジーク家?」
その瞬間、周りがざわめきついた。
あれ?俺なんか言った?
「は?お前、ちゃんと脳ミソ入ってんのか?ジーク家、ドヴォル家、パミール家は三大騎士家系と言われてるんだぞ?覚えとけクソが。」
「そ、そうか。」
「まあ、いい。お前も俺の仲間になれ。」
「え?」
「聞こえなかったのか?騎士たるもの、人望は厚い方がいいんだと父上が申していた。」
普段の俺なら、すぐに長いものに巻かれていただろう。しかし、ここはもともと俺の世界ではないこと。
そして、後ろに悔しそうにしているセリアと、情けないと自分で思っているかのような表情を見せるリクトの姿を見て、少し今までとは違う自分を出してみようと思った。
「生憎、弱いものいじめと女の子に手を出す奴ど同類と思われたくないんで、却下☆」
それを、聞いたザーベルトが顔を真っ赤にして、わなわな震えた。おぉ、怒っとる怒っとる。
「ザーベルトさん!こいつに現実を見せつけてやりましょうぜ」
「おめー、ジーク家に逆らってこの村で生きていけると思うなよ!?」
ザーベルトの取り巻きが騒ぎだした。うるせぇ、モブども。
「おい、シュウ。いや、てめぇは名前で呼ぶことすら値しない。今日からお前はシュウマイだ。」
突然周りから、笑い声が起こった。
「ひゃひゃひゃひゃ!!シュウマイか!!」
「なんも知らなさそうだし、頭にシュウマイでも詰まってんじゃねーのか?!?」
くそぉぉ。このモブどもめ、黙れよ。
てか、なんでカイトまで笑ってんだよ。お前の背中に後で氷入れてやる。
「おい、シュウマイ。そこの木刀を持て。天才と田舎者の差を見せつけてやる。」
いや待てコラ。俺、剣技とか知らないんですけど!?
そうだ!!あの懐中時計を見れば……
うーん、『手段』に『殴る』、『ガード』、『ダッシュ』しかないぞ。
「てめぇはムカついたから、ジーク流剣術『龍爪乱』をお見舞いしてやる。」
え?何その強そうなの。俺にいきなり止め差す気?この『ダッシュ』で逃げようかな……
「さあ、構えろ!!」
ヤバイ。とにかく木刀を持っとこう。
その時、懐中時計時計に新たな項目が追加された。
『斬る』
『剣防御』
あれ、使えるやつが出てきた。もしかして、何か新しいものに触ったり、経験したりすると、それに見あった『手段』が追加されるのか?
「俺の家系に代々伝わるスキル【剣豪】で八つ裂きにしてやる!!!」
くそ!なるようになれ!!
<ザーベルト→『龍爪乱』>
「くらえ!!龍・爪・乱!!!」
<シュウ→『剣防御』>
その瞬間俺の目の前には驚きの光景があった。次々とおそいかかる斬撃を俺がしっかりと弾いているではないか。こんなにも『手段』ってのは便利なのな。
その時、周りのギャラリーがより騒然とした。なんだなんだ?
「おい!あの転入生、ザーベルトの12連続の斬撃を受けているぞ!?」
「レベル25のザーベルトだぞ!?」
「あのさばき、相当なレベルだぞ!」
えっ、俺今レベル1なんだけど。
「くっ、てめぇ、何もんだ!?」
「ふっ、どうだろうな?」(←実は何者でもない。)
そして、全体重を乗せた12撃目を防いだあと、更に俺の身体が驚くべき行動をした。
ザーベルトの木刀を横に反らしたあと、その推進力でザーベルトをぶっ飛ばしてしまったのだ。7メートル先まで。
「うおっ!?」
走り高跳びのプロがよくみせる、あの着地の姿勢のまま後ろへザーベルトは飛んでいく。
『剣防御』をえらんだはずだが。
「「「うおーー!?ザーベルトを倒したぞ!?」」」
周りのテンションがMaxとなった。
「ちょっっと~、何事よ~!」
うっ、このオカマボイスは……
ようやく、物語が動き出します。
お待たせいたしました(^-^;
これからも精進します!