03 理由
金曜日に投稿とTwitterで予告したのにド忘れしてました(;・∀・)すいません。
ケモミミかのじょ。連載再開です!
家についた。
「ただいまー!」
「お邪魔しますなのじゃー!」
「おお、景!良かった。無事で本当に良かった・・・。」
じいちゃんが玄関に出てくる。
「心配かけてごめん。」
「そちらの娘さんは?」
「山に住んでる女の子。助けてくれたんだ。この子がいなければここまで来れなかったんだよ。」
「おお、そうか!ありがとう!お名前は?」
「ええっと・・・それより、早く家に入ろう!お茶出してあげて!」
「そうだな!」
ばあさーん!じいちゃんは何の疑いもなく少女を迎え入れる。
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すこし時をさかのぼる。
「あれ、耳が消えてないか?」
「ほんとうじゃ!」
自分の頭を触ってようやく気付く少女。
「こんなの初めてじゃ!おぬし、本当に変な体質じゃのう。ますます興味がわいたわ。」
ああ、なんか変なのに興味を持たれてしまった。
「まぁこれで人間に会っても大丈夫だな。」
「うむぅ・・・。いつから消えたのか・・・。」
とりあえず帰ろう。
「住所は○○○なんだけど分かる?」
「朝飯前じゃ!」
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だから今、パッと見この子は人間と見分けがつかない。かなりの美少女だ。
「別嬪さんじゃのー。」
「当然じゃ。妾じゃもの。」
オイオイ。
「それで、この子の名前はなんじゃ?」
あ、ええええええっと、
「森谷狐子だよ。」
「?」
勝手につけてすまん!と小声で謝る。が、彼女はにんまりと思いっきりの笑顔を見せて、
「そうじゃ、妾の事はココと呼ぶがよいぞ!」
「おお、可愛らしい名前じゃ事。若いころのばあさんを見ているようじゃあ。」
「またまた、おじいさん。ココちゃんの方がかぅわぃぃぃいいいいい!!!!!!」
「どっどどどどどうしたばあさん!」
「私は昔から女の子の家族が欲しかったんです!でも子供も孫も男ばかり・・・。ココちゃーん!」
「よいぞよいぞ♪」
むぎゅー。
ばあちゃんに猫(九尾の狐だけど)っ可愛がりされる狐子。良かったなぁ。
「お夕飯食べていきなさい!いや、泊まって!景ちゃんの恩人ですから。」
「厄介になろう。」
「決断早いな!?」
一泊のはずが、狐子はそのまま居着き、なし崩し的に一緒の生活をすることになっていった。
狐子と俺の奇妙な関係は、この時から始まった。
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「おはよ!景くん。」
「ん、おはよー。」
田舎の学校は苗字でなく名前呼びだからとてもいいと思う。親近感湧くし。
「はい、ホームルーム始めまーす。」
担任がHRを始める。・・・?なんだかみんなソワソワしているな。なんだろう?嫌な予感がする。
「転校生が来ましたー。入ってきてー!」
「おはようございますじゃー。」
入ってきた。ココが。・・・嫌な予感の原因はこれか。
担任が黒板に名前を書く。
森谷 狐子
「ココと呼ぶがよいぞ!」
『きゃああああああああああああああ!!!!!!』
クラスの女子が奇声をあげ始めた。
『かわいいいいいいいいいいい!!!!!!』
へ?
「ああもうしゃべり方かわいいわぁ。」「ホントに同い年?ちっちゃくない?」「うわぁ髪さらさらー!ほっぺもぷにぷにー。」「白い肌、髪、もしかして:アルビノ」
クラス中の女子がココに群がってもみくちゃにする。
「こらこら、席に座りなさい。」
「く、苦しい・・・。」
「あ、ごめんねココちゃん!」
担任の注意とココのSOSでひとまず解散する女子軍団。なんか連携がとれすぎてて怖い。
「えー、この短い期間に2人も転校生が来たわけだ。そのよしみで森谷は帰山の隣な。周りの奴ら、ちゃんと親切にしてやれよー。以上HR終了!」
正確にはぼくは編入生なのだが、まぁ周囲からしたらどっちも大して変わらないらしい。ちなみに帰山はぼくの苗字である。
「景!」
「なに?」
「皆が我の歓迎会を開くと言っておるんじゃ!」
「へえ、良かったじゃないか。行って来いよ。」
「なにを言うとるんじゃ、お主も一緒じゃよ。」
「ええ?なんでだよ?」
「来てくれぬのか?(うるうる)」
うっ・・・涙目でしかも上目遣いとか反則だろ・・・。
「あー!帰山くんがココちゃん泣かしてるー!」
「え!?いやいやいや違うって!」
「来てくれぬのか?(もっとうるうる)」
「ああああああもうッ!分かったよ!」
「よしよし、良い子じゃ。」
けろりとしてやがる。くそ、どこでそんな技術を・・・!
「おい、帰山も来るってよ!」
「ええ!?景くんが!?珍しい事もあったもんだね!」
「めずらしい、のか?」
こてん、とかわいらしく首をかしげる狐子。
「うん、景くんったらいっつも先に帰っちゃって付き合い悪いんだから!」
「ご、ごめんよ・・・。」
「・・・。」
不思議そうに景を見つめる狐子。
「まぁいいじゃねえか今日は来るってんだから!おし、行くぞ!」
「「「「おー!」」」」
**********
「いやー、楽しかった!」
「そりゃ良かった。」
苦笑いする僕。
「うむ!人間とはかくも素晴らしいのものじゃな!」
ちなみにみんなで行ったのはカラオケだ。パーティがてら、大いに盛り上がった。
「でももうちょっとイマドキの歌も歌えた方が良いと思うぞ?」
「横文字など読めぬ!」
「つってもなぁ、演歌ばっかでみんな軽く引いてたぞ?」
「そ、そうだったのか?」
「お前、歌うのに夢中だったもんなぁ・・・。」
「お主もか?」
「え?」
「お主も妾に引いたか?」
「いや、別に?」
「そ、そうか・・・。ならよい。」
いや良くないだろ。僕でも津軽海峡とか加賀岬ぐらいしか知らないもんなぁ。
「ただいまじゃー!」
「ただいまー。」
「おかえり。」
じいちゃんとばあちゃんが迎えてくれる。家で待っていてくれる人がいるというのはいいものだ。
「今日は帰りが遅かったね?」
「あぁ、クラスのみんなが狐子の歓迎会をするって言ってさ、カラオケ行ったんだ。」
「楽しかったのぅ!」
「へえ、それは良かったじゃない!」
目を細めて喜ぶばあちゃん。
「こいつ演歌ばっかり歌ってたから、じいちゃんと趣味が合うかもよ?」
「おお、そいつはいいな!」
「狐子ちゃんは渡しませんからね!」
「おいおい、ばあさんのものでもないだろう。」
くふふ、と笑う狐子。
「やめるのじゃ。妾のために争うでない!」
お前それ言いたかっただけだろ。
その後。
「狐子ちゃん、一緒にお風呂入りましょう?」
「おふろ?なんじゃそれは。」
「あら、入ったことないの?」
「うむ!」
「じゃあ一緒に入りましょう?」
「よいぞ!」
ばあさんと狐子二人で風呂に向かう。
**********
「ココちゃん、肌綺麗ねー。」
「そうか?」
「洗ってあげるわ。」
「よいぞ。」
ゴシゴシ。景の祖母に洗ってもらっている狐子。
「のう、薫子よ。」
ちなみに薫子は景の祖母の名前である。
「なぁに?」
「景のことなんじゃが。」
「ええ、どうしたの?」
「なぜ奴は、あんなにも学校の者と仲良くなるのを拒む?」
「そうね・・・。あの子の両親がもうこの世に居ないことは知ってる?」
「知らぬ。」
「父親は幼いころに人に騙されて、借金を背負わされしまったの。働きに働いて、返済はしたのだけれど、身体を壊してしまってね・・・。そのまま死んじゃったのよ。」
「そうか・・・じゃがそれとどう関係が?」
「まぁ聞いてなさい。そして母親は、最近なんだけど、病気で死んじゃったの。」
「ふむ。」
「そのせいかしら、あの子、家族である私たちはともかく、友達を全く作ろうとしないのよ。いえ、私たちにも本当の意味では心を開いてくれていないのかもしれないわ・・・。」
「つまり、『大切な人をつくるのが怖い』と?」
「ええ。」
「また失うかもしれないからか?」
「ええ、そういう事だと思うわ。」
「そうか・・・。」
「でも、ココちゃんには随分心を開いてるようね?」
「む?そうか?」
「ええ、とっても。私と源蔵さんも、景がココちゃんを連れて帰ってきた時驚いたもの。『景が友達を、しかも女の子を連れてくるなんて!』ってね?」
「それは愉快じゃな!」
「そうね。」
二人の笑い声が浴室に響く。
しばらく一緒にお風呂に浸かる。
「じゃあ私は先に上がるわね。」
「うむ。気持ちよかったぞ、また一緒に入ろう。」
「ええ、もちろん。」
むふー。
風呂が気に入ったらしい狐子はゆったりと湯に浸かる。
(気持ちいいのう・・・。景に着いてきてやはり正解だったようじゃ。)
しかし、と狐子は思う。自分はなにも返せていない、とも思う。
さっき聞いた彼の過去は、決して楽なものではなかった。
であるならば、少しばかり、誰かが慰めても良いのではないか。
そしてそれが自分であっても、問題はないはずだ。
そう思った。だから、
「ふぃー。疲れたなぁー。」
浴室に響く景の声。
「よっと。」
ガラッと、風呂の蓋が開く。
するとその中になぜか狐子がいた。
目が合う。そして沈黙。
「うわあああああああああああああああああああ!!!???」
「わはははは、そんな驚かんでもよいじゃろう。」
「ななな、なんで居るんだよ!てか前!前隠せ!」
「なんじゃ?妾に隠すような恥ずべき部分など無いわ!」
デン、と仁王立ちする狐子。
「そういう意味じゃねえええええええええええええ!!!!」
「む?ではどういう意味じゃ?」
「もういいから早く出てけ!頼むから!一刻も!速く!」
目を隠しながら狐子とは反対側を向いて喚く景。
「・・・。」
ザバッと浴槽から上がる音。
「そうそう、そのまま出ていk」
ぴたっ、とナニかが景の背中に張り付いた。そのナニかはめちゃくちゃやわらかい上にすべすべしている。
・・・。
「・・・ナニシテルンダイ、ココサン?」
狐子が景の背中に抱き着いてきたのだ。
訳が分からないので身動きもとれずに固まっていると、狐子が話し始めた。
「・・・お主はなぜ、クラスの者たちと仲良くなろうとしないのじゃ?」
「え?いや仲いいでしょ。遠ざけてなんかいないよ。」
「ではなぜ妾が来る前はクラスの集まりに行かなかったのじゃ?」
「うるさい集まりが好きじゃないからさ。」
「・・・。」
「なんだよ。」
「・・・大切な人を作りたくないから、なんじゃろう?今まで、喪ってきたから。」
「ッ!?」
バッと振り向いて狐子を見る景。
「なんでそれを・・・。」
「すまぬ。さっき風呂で薫子から聞いた。」
「・・・そうか。」
「うむ・・・。」
景はそこでお互い全裸である事を思い出して目を逸らす。
「「・・・。」」
沈黙がその場を支配する。
「のぅ、景。」
「なんだよ。」
「辛かったんじゃろう・・・。苦しかったんじゃろう・・・?」
「・・・そんなことないよ。」
「強がらなくてもいいんじゃ。」
「そんなことねえっつってんだろ!」
背中に張り付く狐子を乱雑に振り払い、振り向いて、景は驚愕した。
「泣いてる・・・のか?」
ぽろぽろと、真っ白な少女は大粒の涙を流していた。
「泣いてなどおらぬ・・・。泣いているのは景、お主じゃろう?」
「だからッ・・・!!俺は泣いてなんかないし、強がってもいないって・・・!!」
ツー。景の頬に一筋。
「・・・なんだよこれ。なんだってんだよッ・・・クソッ・・・。」
二人の瞳から溢れだす涙は、一筋の光る流れとなってそれぞれの頬を濡らす。
ココにはそれが、景が今までため込んだ感情が、そこから流れ出ていっているように見えた。
「よしよし・・・。」
自分よりも頭一つ分高い景の頭を撫でる。
「泣いてないからな・・・。うぐっ・・・。」
ズビズバ、と鼻をすする音がする。
「うむうむ、そうじゃな、泣いてない泣いてない。」
泣いていると頑なに認めようとしない景がなんだか弟のように愛おしくて、泣きながら笑う狐子。
「なに笑ってんだよ・・・。」
「笑ってなどおらぬぞ?」
「笑ってんだろうが・・・。」
「それを言うならお主は泣いておろうが。」
「うるさい・・・このおせっかい焼きが・・・。」
「そりゃあ寿命的にはおばあちゃんじゃからなぁ。」
その後しばらく泣き続け、風呂から上がった時は二人ともくしゃみを連発していたのだった。
感想、レビュー、ポイント評価お待ちしています(。 ・`ω・´) キラン☆