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02 邂逅

けもみみ♪けっもみみ♪

抜け殻のようなぼくを引き取ったのは父方のおじいちゃんとおばあちゃんだった。

ぼくは田舎にある父の実家に荷物を移動した。


「こんなに早く独り身になる男もなかなかいないよな・・。結婚もしないだろうし、一生このまま独りかね。」


田舎道を歩いて祖父母の家に向かう途中、独りでつぶやき、皮肉げに口の端をゆがめる。


到着。なにもかも、全く変わっていない。


「おー景!よく来だなぁ!ささ、上がれえ上がれえ。」


「ありがとうおじいちゃん。」


父を早くに亡くした分、おじいちゃんとおばあちゃんとの仲はいい。母方は結婚に反対していたため、今でも疎遠だ。


「おかえりなさい、景ちゃん。ひさしぶりねー!」


「おばあちゃん、ありがとう。ただいま。」


さっきは気分が滅入ってあんなことを呟いたけど・・・。

・・・こんなぼくでも、まだ愛してくれる人がいる。なんて幸運な事なんだろうか。普段は気づかない。大切なものは、失くしてはじめて気づくというけれど、本当なんだね。

母さんの言葉通り、まずは二人を大切にしてみよう。父さんの話も聞けるといいなぁ。

田舎の人の暖かさと、祖父母の愛によって、ぼくは少しずつ、ゆっくりと、生きる気力を取り戻していった。



**********



「じいちゃーん!待ってよ!速いって!」


「ほれほれ若者よ!ガンバレ!爺に負けてどうする!」


「ぐぬぬぬぬ。」


ぼくは今、じいさんと一緒に山菜採りに来ている。たけのこも旬らしい。

高校も無事編入試験を終え、クラスにもなじんできた。いつも話すわけではないし、無口なぼくだけど、クラスメイトはちょうどいい距離感で、ぼくに接して来てくれた。

心の傷や痛みも、すこしずつ癒えてきた。これからの目標は、もっとクラスになじむ事だ。


「結構採れたんじゃない?そろそろ帰ろう、じいちゃん。」


「おう、そーっすっぺ。」


背中に、山菜が詰まったかごを背負って帰路につく。が。


「うおっと!?」


「じいちゃん!」


じいちゃんが足を滑らせた。


「危ない!」


ぼくはとっさにじいちゃんの手を掴んだ。


「あぶねえええ。ふう。ありがとう景。」


「あぶないなぁ。もっと気を付けてよね。」


「すまん。」


だが、試練はまだあった。


急に、ぼくに向かって竹が倒れてきたのだ!


「うわああああああああああああ!!!!!」


ぼくは避けようとして足を踏み外し、斜面を落ちて行った。


「ううっ・・・ここは?」


気が付いたら、深い森の中で倒れていた。


「よかった、なんとか生きてる・・・ッ!?」


足が痛い尋常じゃなく痛い。おそらく骨折している。


「ハハハ・・・。とことんついてないな。じいちゃんは、大丈夫だったはずだ。警察と村の人で探してくれるだろう。」


それまで待ち続けるのか・・・。


はぐはぐ。むぐむぐ。むしゃむしゃ。ぼりぼり。


「・・・・・・んん?」


今気が付いた。山菜を食べている女の子がそこにいる。


「お、気が付いたのか。すまぬが、食糧をもらっておるぞ。命を助けたのじゃ、これぐらいよいであろう?」


「・・・?君が助けてくれたのか?」


「うむ。」


「どうやって?」


「こうじゃ。」


少女は人差し指を俺の骨折した足に当てた。


「痛みが消えた!?」


「まあ、そういう事じゃ。」


「君はすごいんだな。耳としっぽを見る限り、狐の半妖ってところかい?」


「アタリじゃ。察しがいいの。人間。」


とそこで、少女は突然、食べるのを止めた。


「そういえば・・・。お主なぜ妾と話せる?」


「普通に話せるよ?」


「ありえない・・・。妾は妖術のほかに、『どんな人間をも必ず意のままに従わせる能力』を持っておるのじゃ!今までお主のような人間には会ったことがない!何者じゃ?」


「いやぁ、普通の男子高校生だけど・・・。」


「わたし、気になります!なのじゃ!」


なのじゃ!ってなんだよ。なんかかわいいなちくせう。


「うーん、ぼくは足も治してもらったし、電波通じたら一本電話入れて家帰るけど、きみはどうする?」


「命の恩人じゃぞ妾は!誘うくらいの甲斐性を見せてこその日本男児じゃろうが!」


「ぜひ来てください。良く考えたら帰り道も分かんないし。」


少女に住所を教える。


「よいじゃろう。お主の家はー、えーっと、こっちじゃな!」



ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

失う前に、大切な人に心からの感謝を、伝えたいものですね。

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