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第七話 イキトシイケルモノⅡ / 3



  おやどうしました? 貴方がここに来るなんて珍しいですね。

 はい? ああ、あの子の事ですか。あの子はしっかり保管していますよ。

 はい、誰にも盗まれる事の無いように隠してあります。それにあの子は組み直しですからねぇ。

 ん、話しませんでしたっけ? おかしいですね、ミレイミル君に会わせた際に教えたつもりになってましたが私の勘違いだったんですかね。


 ……ミレイミル君を見たでしょう? あの子は特別です。そう、私が今隠しているオゼット姉妹……あー、もう妹はいないんですからフエンシー・オゼットと単呼した方がよろしいですかね。フエンシーの欠点は御存知でしょう? ええ、命令無視の嫌いが非常に強いんです。あの頃も妹の身で脅迫して従わせていましたねぇ。ですから手綱となっていた妹であるテイタニーの死後はより運用し易いようにと、妹の方を操って彼女を運用していました。そしたら見事あのように扱いやすい子に成長してくれたんですね。


 はい? あらら、伝えていませんでしたっけ? そうですよ、妹の方も運用されています。


 わかりました、久しぶりに昔話をしましょう。一から話した方が私にも利益がありますしね。知ってますか? 優れた研究施設には互いの研究を語り合う部屋が用意されているんです。相手に教え伝える事で自分で(かえり)みる事ができますから、それが研究のヒントになったりするんです。


 ……あの日の事を覚えていますか? はい、研究所最後の日です。オゼット姉妹が脱走した日です。

 脱走の際に姉妹は施設の発電システムを破壊しました。あれ自体の損傷はさほど痛い物ではありませんでしたが、彼女達が「ついで」に壊してしまった物が、あの施設の命に近い物でして、その後施設は責任と予算の都合から御存知の通り閉鎖されてしまいました。


 ここまでは貴方も知っているんですね?


 オゼット姉妹担当のあの人を覚えていますか? そう、リンカイラ所長です。実はですね、あの人は私と同様に、施設閉鎖後にも研究を続けていたんです。彼は私と違ってお金を持っていますからね、自費でも何とか開発研究ができたんですね。まったくもって羨ましい限りです。

 あの施設の研究テーマは『不死』でした。不死の兵隊をごまんと揃えれば、そりゃ戦争だって勝てますし、戦争じゃなくても労働力として色々便利ですからね。不死なんていつの時代も研究されて来たテーマです。倫理なんて糞くらえです。

 あそこでは私とリンカイラ所長の二人を研究グループのトップに選んで、二つのアプローチで不死者を研究していました。

 リンカイラ所長のグループは分かりやすいテーマでしたね。そう、完全な「復活する者」です。死なないのではなく、死んでも復活する。それが彼のグループが作り出そうとしていた不死者です。こちらは昔から研究されて来たのでほぼ完成に近い物が手に入りましたね。ええそうです、フエンシー・オゼットです。

 一方私のグループはちょっと王道ではない方法で不死者を完成させようとしていました。そう、それは貴方が一番知っていますね。

 不死者と言う物は死ななければ良いんです。ならば遠隔操作のロボットよろしく、遠隔操作の人間を作り出してしまえばいいんです。だって、これなら絶対に死なないじゃないですか。肉体が壊れようとも代えを用意すればその場で本人として復活できる。しかも復活できると分かっていれば本人自ら無茶な行動も出来るってものです。魂と肉体を完全に分離し、肉体だけ取り換える事ができればそれはそれは便利ですよ。肉体がロボットなら魂がコントローラーですね。それに脱皮と同じで、肉体に何らかの呪いをかけられてもそれを脱げば良いだけですから、これなら魔法使い相手でも十分ぶつけられます。

 確かにフエンシーの様に完全再生の方が運営の費用もかからないですし、その場で復活するので簡単です。ですが運営費は安くとも、開発費はとんでもないんですよあれ。だから複数を作るなんて夢のまた夢でした。

 一方私達の方はまだ現実的な費用で不死者を製造する事ができる予定でした。ええ……実際には施設閉鎖で研究がストップしちゃったんで辿り着いてないんですけどね。それに実際に残っているのは貴方くらいでしたし、あまり言いたくないのですが私達の方法は失敗だったのかもしれませんね。

 はい、そうですね。確かに貴方以上に優れた動きのできる子は製造できていました。ですがあれらは処分されています。ええそうです、遠隔操作の対象幅が駄目だったんです。魂と肉体を完全に離してしまうと、どうやら肉体に対する親和性以外も有効となり、周りの物を弄くれるようになっちゃうみたいなんです。ポルターガイスト現象、まさにあれです。酷いサンプルだと生きている人間さえ操ってしまいました。勿論その場で処分ですよ。そして運用が認められた不死者は結果として零です。完成する前に施設閉じられちゃいましたから。

 私はサンプルの中で生きている貴方だけを連れてこの日本にやってきました。ご飯食べないといけませんからね、お金の為です。そして今、貴方と共にこの座にいます。貴方を連れてきて正解でしたよほんと。感謝しています。


 貴方は残念ながら不死者ではありません。肉体と魂の繋がりを段階的に強めて行った結果、離れた魂が肉体を遠隔的に操作する事ができる値が経験則として求められました。その中で一番魂と肉体の繋がりが強いのが貴方です。そして御存知の通り貴方は肉体の乗り換えができないんです。これでは不死とは言えません。はっきり言ってただの人間です。

 ですが先程言った様に貴方以上に弱い繋がりだと周りに干渉してしまうのです。私達が欲しいのは不死である兵士であって、別にサイコキネシスの能力なんて要りません。それにそんなおもちゃを与えていたらいつ暴走してこっちに牙を剥くかわかりませんからね。

 ああ……確かに貴方も完全に肉体のみを操作している訳ではありませんでしたね。ですがあの能力は施設閉鎖後に私が貴方に与えた能力です。ですから研究の方針に反していても問題ないんです。ここで働くには武器を手にしなくちゃいけませんからね。それに貴方なら私に対して剣を向けることなんて無いでしょう? こんな過冷却な血液流れた人間ですが、それでも貴方くらいは信用しているんですよ。というか、貴方以外に私の財産なんてありませんし。私の場合だとお金なんて結局個人の所有物ではないですからね。


 はい? ああ妹の話でしたっけ。ごめんなさい、つい思い出話に集中しすぎて過去だけ語っちゃいました。


 御存知の通りオゼット姉妹は仲良く崖から落下しました。不死者として完成に近い姉は直ぐに復活しましたが、妹の方は当然死んでしまいました。こっちも泣きたいですよ、だって姉の制御の要である妹が無くなっちゃったんですから。これからどうやって姉を運用すればいいのか悩みました。あ、私がではなくリンカイラ所長がですね。いえ、もう所長ではないのですから普通にリンカイラって呼んだ方がいいですね。

 彼は閉鎖の際に許可を得て妹の死体と姉を受け取りました。頭の切れる彼は直ぐに思いついたんです。

「ならば妹を復活させればいい」ってね。

 私達のグループの技術を使って彼は妹に研究員の一人を埋め込みました。恐らく貴方は顔を合わせた事の無い女性です。あっちのグループの人ですからね。

 私達の技術は見事に妹を復活させる事ができました。勿論中身は完全に別人ですからまずはテイタニーの仕草性格等の特徴を真似る訓練から入りました。そして暫らく研究を重ねた後、彼女はテイタニーとして姉のフエンシーの前に姿を晒しました。姉は大変喜び、本物の妹だと信じ込んでくれました。元々不死を研究する人々がプレゼントしてくれたんですから当然と言っては当然ですね。

 そして妹に化けた彼女は洗脳の手段を使ってフエンシーを操作してきました。不死である姉をより確かに操る事の出来る手段を手に入れたんです。大成功ですよ。


 しかしそれでもやはり問題がありました。実は妹の方の形が弄くれなかったんです。魔法を使おうにも元々の妹の素質を借りるしかありません。どういう訳だか強化出来なかったんです。ですからはっきり言って妹の体の方は戦闘においてあまり役に立ちません。しかし姉に細かい指示をする為には妹の身を作戦に投じなくてはいけません。中の人は一応努力して体術を習得しましたが、それでもやはり不死者に要求される作戦に一緒に投入するには頼りない物でした。


 その結果、この有様ですよ。


 どうして姉妹を、ですか?


 先程言った通り、ミレイミル君を手に入れたからです。

 彼女は素晴らしい。本当に素晴らしい。やはり天才が作った物は我々凡人、大きく出ても秀才の域でしかない我々には到底作れない作品でした。

 彼女は人格を保ちながらも、こちらの命令に従ってくれるのです。勿論ただでと言う訳ではありませんが。彼女の目標を達成する手助けをする代わりこちらも助けてもらう、良い関係ですね。

 そしてミレイミル君を手に入れたリンカイラは運用に不安要素の大きい方を手放そうとしました。そこで私が譲り受けたんです。お下がりみたいであまり気持ちの良い物ではありませんが、お金の無い私にはアレでさえ金塊に見えちゃうんです。もっとも、オゼット姉妹が金塊ならミレイミル君は天然ダイヤの塊ですね。価値が段違いです。


 話は変わりますが、我々が何故人格を保っている不死者を求めているかわかりますか?

 簡単ですよ、魔法が使えるからです。意思や想像の能力を持たない人形では魔法は扱えませんからね。普通の人間と同値の不死者だったら魔や魔法使い相手に何もできません。だから必ずこちらも魔法を使える様でないといけないのです。また、即時の判断ができる為には必ず人格が必要です。機械では組まれたプログラム以上の事はできませんし、感情による揺らぎも期待できませんから。絶対的に人格の有無は兵士としての実力差に巨大な段差を作ってしまいます。

 しかしそれはあくまで不死者を一人の兵士として運用する場合の話です。実の所、本当に人形の様に扱う事ができるなら、それは魔法を使えなくても役に立ちます。ただの道具ですね。例えばそう、操作者が現場にいる場合とかですね。プログラムを組んでおくのではなく、その場でプログラムを与えるんです。妹がかつて似たような存在でしたが、あれはあくまで猛牛の頭の向きを操る程度の存在です。動きその物は猛牛が能動的に決めていますから。

 ええそうです。今度からは妹に化けた者ではなく、私がフエンシー・オゼットを操る事にしました。私は神様がくれたこの素質の御蔭で現場に出られますからね。リンカイラとは違います。彼の悩みの種であるフエンシーの制御性は、私自身がその場で操る事で補います。

 逆に兵士ではなく兵器として、つまり誰でも扱えるようにするという発想もありと言えばありですが、それでは簡単に相手に利用されてしまうでしょう。使用可能者を限定して初めて有効な盾になってくれるんです。相手に奪われる様な盾なら始めから無機物で作ってしまえばいいんですからね、疑似生命体である必要がありません。

 折角の不死者として完成に近い存在ですが、手に余るなら質を下げてでも容易に運用出来た方が便利だと思いませんか?


 それに今回は実験でもあったんですよ。

 ええそうです。あの小剣ですよ。あの小剣の実力の程を確かめたかったんです。本当に不死者にすら勝ってしまうのかとね。

 結果はこちらの惨敗、やはり天才と秀才の違いは大きいですね。嫌な物です。

 フエンシーはご存じの通り今は完全に無力化されてしまいました。これでは完璧な兵士ではありません。死なないだけでは駄目だとこれで実証明されましたね。想定だけでなく結果として止まることが証明された以上この方法での研究は凍結されてしまうでしょう。


 あ、気付きました? ええそうです、今回の結果は私の宣伝でもあるんです。もし私側のグループが研究を続けて、こちらのアプローチによって作られた兵士が完成していたら……恐らくあの小剣でさえも止める事叶いませんよ。

 それに最終的には二つの研究を合わせればいいんです。復活する肉体、しかし魂は直接その肉体に収まっている訳ではないので小剣による記憶奪取にすら打ち勝つ……完成された兵士ですよこれって。


 おまけに鬼神に貴方達に対する期待や信頼を少しでも作り出したかったですし。雀の涙程でも信頼を勝ち取っておいた方が何かと便利でしょう。


 今回貴方にすら事前に説明していなかったのは、不自然さを取り払いたかったからです。高海君が貴方の反応から何かを掴んでしまうのは避けたいからですね。あの子鋭いですから。


 はい? ああ妹の方ですか。あれは処分ですよ。菅江君に負ける程度の兵士、要りません。私の手を汚さずに処分できましたし、これで彼女の自信に繋がったらまさに一石二鳥です。きっと中の人は直ぐに復活してもらえるつもりだったんでしょうけど、残念ながらそうはなりませんね。

 え? 嫌ですね、私だって人を殺したら心を痛めますって。ええ、爪でひっかいた程度には、ね。






▽▽▽▽▽






「これは……どういう事ですか?」


 夕食の後、部屋に戻ると扉の前に智爺が窓の外へと顔を向けながら佇んでいた。彼は私に気付くと一度深く頭を下げ、「お話が」と小さく言葉を置いた。

 彼の様子を見れば明らかに彼の持つその紙に並べられた文字が私にとって小さな影響のみを与えるものでないと分かる。夕食に幸を得る者ではないけれど、せめてもう少し時間を開けて欲しかった。胃も重ければ心も重くなる。


 私が椅子に座ると、それを追ってきた彼は一度だけためらう様に紙を指で押し曲げるが、結局は丁寧な動作で渡してきた。


「命通り尼土様の事を調べていましたら」

「そしたら、これを?」


 そこに書かれていたのは家系図だった。一番下には尼土有の名前。

「これは……何てこと」

 上の方に遡っていけど、当然のごとく知らぬ名が並ぶ。だけれども、一つだけ知った名が映る。それは知らぬ名の横に併記されていた。智爺が手書きで記したのだろう、一文字だけ記号の様に置かれている。

「この様な形で知るなんて」

「申し訳ございません。御嬢様の御方針を破る形になってしまいました」

「いいんです。私がやってと言ったのだから」


 有の事を調べるのは困難の極みだった。色々な線で調べようとしても、結局途切れる。最初の頃は誰かが有の過去を揉み消したのかと思っていたが、有と心を交わしていく内に、隠したのは有本人なのではないかと思うようになっていた。隠したのではなく、隠してしまっていると言うべきか。彼女の力がそうさせているのか。

 智爺も私の命を遂行せんと屋敷に籠ったり、そうかと思ったら一日中屋敷を離れたりを繰り返す。平日は私の為に車を転がしてくれるが、顔を合わしても彼は私に対して殆ど報告をしてくれなかった。無論誠実な彼だ、しないのではなく出来なかったのだろう。

 いや、もしかしたら報告を渋っていたのではないだろうか。この家系図を見ればそう受け取っても問題ないだろう。


「呼んで頂戴」

 私の無理矢理押しだした声に智爺は一つ足を前に出す。

「本人に伝えるのですか」

「知ってしまった以上、教えてあげた方が彼女の身の為でしょう」

「ですが、主である御嬢様の内に留めておくという……」

「今回は教えてあげた方が良いでしょう?」

 私は家系図の上に離れて配置されている二つの名を指で結ぶ。智爺は観念したといった風に目を瞑った。

 彼は再び頭を深く下げると廊下へとドアを抜ける。しかし思い出したかのように再び足を戻すと、入口に立つ。

「そうでした」

「何かしら?」

「菅江さまが屋敷の電話でアイシス様に通話を」

「……抜けてるのか、試してるのか」

「削強班では携帯電話なども管理されている様なのでこちらの電話機しか使えなかったのでしょう」

「そう、そう思っておきます。して、どのような事を?」

「槐と……景様の容姿についてお訊ねになられていました」

 景、か。

「それで、アイシスは何と?」

「うつし身であると」

「そう……後でお尻をひっぱたいてあげないと」

 アイシスも由音ちゃんも。他者が踏み入れてはいけない領域にある物を運び出した者、受け取った者、どちらも仲良く罰せなければ。


 でもこれが正しい流れなのかもしれない。いずれは知られる事、直接私から告げるよりも由音ちゃんから伝わった方が良いのかもしれない。無論、私にとっての話であるが。


「では呼んでまいります」

「爺」

 智爺は廊下側のノブに手をかけるが私の呼びかけに身を正す。

「はい、何でございましょう」

「呼んだら、あの子だけ来させるようにして頂戴。爺はもう休みなさい。最近また皺が増えてきたわ」

 その皺の原因がこの様な事を言うなど言語道断だろうが、今はただ休んで欲しかった。最近の爺は妙に張りつめている。本人は隠しているつもりなのだろうが、何年も傍にいるこっちには筒抜けだった。


 嗚呼、そうか。ならば反対もまた然り、なのね。


「御いたわり、ありがとうございます」

 そう言って智爺はドアを閉じる。


 私は紙を机に置くと、体をベッドに放り投げる。


 今私は何を考えているのだろうか。

 思うべき事がありすぎて自分が分からない。

 なら、今はただあの子を待とう。

 一時の静寂、それが私をここに繋ぎとめてくれそうで。


 小さなノックが聞こえる。

「入って良いわよ」

 いつもと違って彼女は静かに廊下を進んできたのだろう、ノックされるまで気付かなかった。

「あの、御主人様が呼んでいらっしゃるって長が」

「そうよ、お話しましょう」


 何人にも愛されるという運命を背負った少女


「おいで、私の横に」

 少女は私に怯えているのか、ゆっくりゆっくりと、まるで蜂の巣の前を通るかのように進む。

「ほら、ここ」

 私の横を指差すと彼女は指図通り座る。

「あの、最近はつまみ食いそんなにしてない……ですです」

 その態度から察するに未だつまみ食いの癖は直っていないようだ。

「梓、もっと大事な話よ」

「えっとえっと、お皿割ってませんよ……あんまり」

「違うわ。もっともっと大事なお話」

 彼女の中に存在する事件で皿割り以上の物が無いのだろう、否定すると突然に顔が綻ぶ。

「貴女の本当の名前、そしてその子孫のお話」

「……はい?」

「梓、貴女は有の、あの子の御先祖様なの」


 少女は驚きで顔を固める。


「そ、そんなの聞いてません。それに姉様達だって名前を知らされていないって」

「そうよ。梓、貴女が初めて私から本当の名前告げられた子よ」

 まあ、元より本名が判明している子の方が少ないのだけれども。


 これで三人目。槐、椒、そして梓。自ら調べた名は存在しない。どれも偶然、されど必然。槐は自ら名乗り出た、それだけ記憶が確かだったのだろう。やはり魔王であった者の色は濃いか。


「梓、あの子を守ってあげて。こんな事言うのはおかしいと思うけれど、子孫のあの子をお願い」

「私に力なんて……」


 大丈夫よ。槐だって直接の力は持っていなかった。


 心を操り、世を操った魔王


 それならば


 きっと愛される運命の貴女なら、誰かを守る城を築けるでしょう




「愛させる呪いを持つ貴女なら」




 違う

 私は違う

 本心からだ

 本心からあの子を愛してる


 絶対に、この気持ちは本物だ



 私は愛してる

 私を知らないあの子を愛してる

 私の全てを知らないあの子を


 あの子だけは愛せるのだから


 だから

 本物のはず

 そうでしょう、有










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