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第二話 似て非なるモノ / 7



「行ってきま〜す」

 二階で洗濯物を畳んでいる叔母さんに声をかけてから玄関を出る。相変わらず散らばっている叔母さんの靴を慎重に跨いでね。何度直してもどうせ直ぐに叔母さんが疲れきった足を持ち上げるのをめんどくさがり、足を引きずるためにぐじゃぐじゃにしてしまうので、もう整理する事を諦めている。叔母さんは窓から行ってらっしゃいと笑いかけてくれた。ずぼらな所以外は綺麗なお姉さんみたいで大好きなのに。全くもって惜しい。こんなんだからあの歳にもなって結婚相手の一人や二人……。

「有ちゃ~ん、はいこれ」

 叔母さんは窓から何かを投げて寄越した。結構強い力だったため、もしかしたら叔母さんは私の心を読んでいたのではという疑問が浮上するがまあ気にしないでおこう。

「これ、何ですか?」

 投げられた物を見ると何かの鍵だった。

「納屋の鍵よー。後でお小遣いあげるから納屋にある物で庭掃除しておいて」

 えええええ、とあからさまに不満な顔をしてみたけど叔母さんは気にしない。

「私がやろうとしたんだけどね、なんかたった今出会いを求めて遊びに行こうと思っちゃってねー。有ちゃんやってくれるわよね?」

 私の位置からだと叔母さんの顔は微妙にひきつっている様に見えた。

 ……………キニシナイデオコウ。オッケーのサインを手で作ってさっさと逃げ去る。これ以上長居すると何を追加されるか分からないかんね。


 ある程度歩くと他の生徒もちらほらと見られる様になる。

 そんないつもの状況の中に見慣れないものが混じっていた。

「椒ちゃん?」

「…………」

 家の近くの信号がある交差点では椒ちゃんが佇んでいた。

「どうしたの? あ、もしかしてお弁当を届けに来てくれたのかな」

 後ろ手に何かを持っている様な素振りを見せているので推測する。

「そうです」

 椒ちゃんは頷いて私の目の前に小さなお弁当箱を差し出す。

「全く、梓がこんな(はかりごと)を出来るなんて思いもしませんでしたわ」

 椒ちゃんも梓ちゃんが私達の間を取り持とうとしていることに気付いたみたいだ。

「そうだよね〜。うん、お弁当ありがとね。今日朱水の家に行ったときに感想はちゃんと言うから。それじゃあ……」

 ところが私が歩き出すと椒ちゃんは私の制服の裾を掴んで放さなかった。一応歩いてはくれるため制服が伸びたりする事は無い。

「どうしたの?」

 私が理由を聞いても椒ちゃんは無言のままにただ私の後を付いてくるだけである。

「えっと……一緒に行く?」

 私のその提案を聞くと椒ちゃんは恥ずかしそうに小さく頷いた。


 一緒に学校に向かって歩いているが、椒ちゃんは無言で私の服を掴んだまま後に付いてくるだけである。こんなに近くにいると前を歩いている私でも椒ちゃんのそのいい匂いが鼻に入ってくる。それにしても驚きだ。あんなに私にちょっぴり喧嘩腰な態度をとっていた椒ちゃんがこうも親密な行為をしてくるなんて……。昨日のあの私の理性を吹っ飛ばす程の笑顔を思い出す。これからはもっとあんな椒ちゃんが見られるのかな? そう思うと私は何だかとっても嬉しいんだ。

「椒ちゃん、折角だからお喋りしようよ」

 私が振り返ると猫の様に驚く椒ちゃんがいた。

「そ、そうですね」

 プイっと目を逸らすが手は一向に離れる事が無かった。

「そうだ椒ちゃんの事を教えてよ」

「私……ですか?」

 今一つ私の言いたい事がわからない様である。

「そう。趣味とか、好きな事とか、ね。昨日言ったでしょ? もっと理解してください、ってね」

 私が何気なく言った言葉は椒ちゃんの顔を真っ赤に染め上げてしまった。

「あれは勢いで言ってしまっただけで」

「いや、それ以前に私自身が椒ちゃんの事をもっと知りたいんだよ。だから教えてくれると嬉しいな」

「そ、そうですか」

 しどろもどろに椒ちゃんは私の質問に答える。

「趣味とかある?」

「えっと、風に当たる事ですかね」

 そう言ってお弁当をひっかけた手で髪を掻き上げる。やはりふわりと匂いが動きに合わせて巻き起こった。

「面白い趣味だね」

「そ、そうですか」

 自分の趣味が特殊なのかと勘違いしたのか、椒ちゃんは不安そうな顔をした。

「でも何となくわかるよ。風に当たっていると何だか気持ちいいよね」

「そ、そうですよ」

「じゃあ今度は好きな食べ物」

 椒ちゃんは少し困った様に考えていたが急に思いついた様に小さく叫んだ。

「炒飯です」

「おお、意外だ」

「そうですか」

「うん、椒ちゃんってば雰囲気が西洋人形さんみたいだからフランス料理辺りにいくのだとばかり思っていたから」

「嫌いじゃないですけど……やっぱり炒飯の方が好きです」

「そうなんだ。じゃあ今度私の家の炒飯を作ってあげる」

 私の提案を聞いた椒ちゃんは何も喋らなかったが笑顔が一層増したから多分嬉しく思ってくれているのだろう。

「嫌いな食べ物とかある?」

「食べ物じゃないですけど花は嫌いです」

「おお、又しても意外だ。花とか好きそうだと勘違いしていたよ」

「私へのプレゼントに花束などは止して下さいね。私、その場で踏みつけてしまうかも知れませんから」

 椒ちゃんは笑顔で怖い事を言う。絶対に忘れないように後でメモしておこうっと。

「どうして嫌いなの?」

 しかし帰ってきた答えは曖昧なものだったら。まあ嫌いな理由とか好きな理由って具体的じゃない時の方が多いよね。

「さあ。ただ何となく花を見ているとイライラしてくるんです。草だけだったら別に何にも感じないのですけど」

 花と草の違いと言ったら色と香りかな。

「多分椒ちゃんは花が出す匂いが気に入らないんじゃないかな?」

 椒ちゃんと言ったらやっぱその甘い香りだもの。それを邪魔する様に他の花の香りが混ざる事は椒ちゃんの怒りを買うのかもね。私の言葉に思い当たる節があるらしく、椒ちゃんは「そうかも知れませんね」と頷いた。

「じゃあ、今度は私について聞いてよ」

「は?」

「椒ちゃんの事を知るだけじゃ意味無いでしょ。椒ちゃんも私の事を知ってくれると嬉しいな」

 少し甘えた様に言ってみた。椒ちゃんは急には意味がわからなかった様だけど、次第に私が何を言いたいか理解したみたいだ。少し硬い口調で質問をしてくれた。

「ではまずご趣味をお聞かせ下さい」

「読書だね」

 私は即答する。あまりの即答ぶりに椒ちゃんは少し驚いた様だ。

「読書ですか。意外です。尼土様は外で活動なさる方かと思っていました」

「うん、体を動かすのも好きだよ。だけどそれ以上に読書の方が好きだね」

「そうだったんですか。では……好きな食べ物は?」

 うむむ、椒ちゃんは私がした質問を忠実に繰り返すつもりみたいだ。

「椒ちゃんが知りたい事だけで良いんだよ?」

「そ、そうですか」

 しかしそれ以降椒ちゃんは押し黙ってしまった。

 学校の門が見えてくる頃になって急に椒ちゃんは立ち止まる。それに連なって自動で私も止まらざるを得ない。

「どうしたの?」

 私の目をキッと睨んだまま椒ちゃんは黙っている。

「あの、そろそろ行かないと学校が……」

「尼土様」

 小さな叫びが私の言葉を遮った。叫びとなったのはその見て分かるほどの緊張からだろう。

「尼土様は私の事をどう思っていますか?」

やっと離れた小さな手は細かに震えていた。

「えっと」

「ですから『私の知りたい事』です。答えて下さい」

 椒ちゃんは真剣な眼差しで私の答えを待つ。その赤い目はいつにもまして力が籠っていた。

「その……仲良くなりたいと思ってるよ」

 しかし椒ちゃんは私の答えに少々不満な様子だ。落胆に肩を落とす。

「好きか嫌いかで言うとどちらですか?」

「うわ、随分ストレートだね」

「答えて下さい!」

 椒ちゃんはうっすらと涙を浮かべて私に再度聞いてくる。

 そんなの言われるまでもない……、

「好きだよ。最初は誤解してたけど今は椒ちゃんの事大好きだよ」と答えた。

「そうですか。安心しました」

 椒ちゃんは涙を軽く拭き取りながら安堵のため息を吐く。多分今まで取っていた態度で私が椒ちゃんを嫌っているのではと考えたのだろう。でもね、私はちゃんと椒ちゃんの言葉通り『理解』したんだよ。あれも椒ちゃんの性格なんだって、もしかしたら照れ隠しだったのかもってね。それが分かってからは椒ちゃんがすっごく可愛く思える様になっちゃったんだ。

「ほら、時間ですよ。もう行かなくてはならないのでは?」

 そう言いながらずっと手に持ったままだったお弁当箱を私に渡してくれた。

「行ってらっしゃいませ」

 椒ちゃんは私が学校に向かって歩いている間、ずっと手を軽く振っていてくれた。そのメイド服のおかげで周りから好奇の目を向けられていたけど彼女は気にしていない様だった。



「椒からちゃんと受け取れたのね」

 昼休みの屋上で何時も通り昼食をとるために朱水と合流すると、朱水は私の持っているお弁当箱を見ながらそう言った。

「あの子の事ですからまた臍を曲げて渡さずに帰ってきてしまうのかと心配していたのよ」

 朱水は苦笑しながらも自分のお弁当を広げる。

「梧も驚いていたわ。今朝帰ってみると台所で椒が料理しているじゃない? 何があったのか逐一聞き出したみたいよ」

 朱水は「みんな同じような反応をするものなのね」と言った。

「そんなに意外な事なんだ」

「まあね。あの子は料理だけは絶対にやらないと断言していたから。主人である私にすらそう言ったのよ?」

「そうなんだ。ならこのお弁当はかなり価値があるんだね」

「ええ、勿論よ。ですからあの子のためにもちゃんと味わって食べて下さいね」

 私は朱水の言葉に頷きながら椒ちゃんから貰ったお弁当箱の蓋を開けた。

「…………ああ、そうか」

 お弁当の中には豪快に炒飯だけが敷き詰めてあった。楕円形の小さいお弁当箱一面が茶色いご飯で埋まっていた。

「好きなんだってね」

 朱水は最初私のお弁当を見て固まっていたが、私の言葉でくすくす笑い出した。

「そうだったわ。あの子、料理をするところは何度も見ているけどお弁当を飾るところは殆ど見てないのだったわね」

ああなるほど、そういう背景があるのか。

「何て言うか、豪快だね」

 私は一緒に入っていたスプーンで一口すくう。

「ああ、美味しいや」

「そう、なら今日ちゃんと感想をあの子に言ってあげて。喜ぶわ」

 朱水は梧さんの作ったお弁当を食べながらそう言った。

「勿論だよ」

今日の私はお弁当の感想以外にも椒ちゃんともっともっとお喋りしたいんだ。






 朱水の家の前には高海さんが誰かを待っているような素振りで立っていた。

「こんにちは」

 私が挨拶する前に高海さんから挨拶してきた。一度もこちらを確認せずに言ったものだから本当に私に対しての言葉なのか気になったが一応返事をした。足音だけで誰か分かるのかな。

「こんにちは。矢岩君達を待っているんですか?」

「はい。まあ、待ち合わせの時刻はもっと後なんですけどね。つい先に来てしまうと言うか……」

 そう言えば矢岩君が高海さんは時間に厳しいと言っていた気がする。社会人としては五分前到着がベストなんだろうけど高海さんはもっと早く着いている方が自分の精神上よろしいらしい。

「あの、入っても大丈夫だと思いますよ?」

 私は門の横にあるベルを鳴らす。

「その、本当は一人で入るのは気が引けるというか……まあ、そんな感じですね」

 高海さんは苦笑いをして一緒に誰かが中からやってくるのを待つ。そういや訊きたかった事があるんだっけ。

「あの、高海さんって私達を助けてくれた時と雰囲気が随分違う気がするんですけど何でですか?」

「違うって……どう違うんですか?」

 改めて言われると漠然としか捉えていなかった事に気付く。

「その……あ、言い方だ。私達の事を『あんた達』とか言ったりして、何か垢抜けた喋り方をする人だなっていうのが第一印象だったのに、今じゃそんな風には思えないです」

 私の言葉に高海さんは「あちゃ〜」と笑う。

「あらら、私そうしていましたか?」

 玄関が開き、椚ちゃんが向かってくるのが見えた。

「実はそっちの方が本来の私でして、この疲れるような口調は結構無理しているんですよ。流石に名高き一色家の前で普段の私を出してしまったら不味いと思っていたんですが……そうですか、初っ端でミスしていましたか」

「はい。車の中ではいきなり雰囲気が違っていたのでさっき助けてくれた人とは別人なのかと思ったくらいです」

「あらら。ちゃんと自分に言い聞かしていたんですけどね〜」

 高海さんは椚ちゃんが開けてくれた門を潜り、私の三歩手前を歩く。

「ばれちゃ仕方ないね」

 びっくりした。あのクールそうな高海さんがアハハと笑っている。

「これがホントの私。どう? やっぱり違うでしょ?」

「はい」

「もう敬語はいいよ。私もこれからはあんたの事、有さんって呼ぶからさ。無礼講、無礼講。あれ、この言葉は違うか」

 またも豪快に笑う高海さん。いやはや随分私は騙されていたんだな〜。

「なら私は鏡さんって呼べばいいのかな?」

「オッケー、そうして。もうこうなったらこのままで鬼神さんに会おうかしら。どうせメッキなんてのはいずれ剥がれるものだしね」

 ウインクしながら彼女はちょっぴり怖い事を言う。

(朱水に対してあんたって……勇気あるな〜。だから削強班の中でも名前が売れているのかな。あ、でも矢岩君は既に朱水に対してそんな態度だったなぁ)

「どう思うよ、有さん?」

「えっと、う〜んと……やってみれば良いんじゃないかな? 私も頑張ってフォローするし」

 まだ知り合った初期の頃なら正体がばれてもさほど影響がないだろうから。後々になって急に実は私こうこう、こうでした~って言われたら絶対大きく戸惑っちゃうもんね。

「そっか、そっか。よ〜し、玉砕覚悟でいっちょやってみますか」

 私の前で張り切る高海さん、じゃなくて鏡さんは何だか急に元気一杯になった様に見える。余程自分を抑える事に力を使っていたのかな。

 私達の前を歩く椚ちゃんは疑問を持った顔で鏡さんを何度も振り返って見つめるが、何も言わずに応接間に先導する。着くと同時に応接間のドアが開いて執事さんが出迎えてくれた。

「どうぞ」

 応接間には朱水と椒ちゃんがいた。

「こんにちは」

 私は二人に挨拶をする。さあ、ここからが問題だ。

「こんにちは」

 鏡さんも挨拶をした。ここまでは何時も通り。

「二人が遅いもんだからさ、先に上がらせてもらったけど良いよね?」

 あ〜あ、本当にやっちゃった。

「………………は?」

 朱水と椒ちゃんは今までの鏡さんとは全く違った様子の目の前にいる人物を見て同じ様な反応を示した。

「いやいや、そんな顔しないでよ。こっちがホントの私だし」

「そ、そうなんだって。鏡さん、今まで自分を隠していたんだけど……」

 どうしよう。何てフォローしたら良いんだろう。あ、そうだ、

「五人で力を合わせて戦うんだから騙し続けてはいけないと思ったんだって」

「……そう」

 私の出任せの言葉に何とか納得してくれた朱水は、驚きながらも椅子に座ることを勧めた。

「まあ、今更双犬の態度が悪くても驚きませんけどね」

「おやおや、早速の皮肉ありがとね」

 朱水の言葉を鏡さんは笑って受け流す。何か鏡さんの態度に感動してきたよ。

「はあ。調子狂うわね。椒、何か持ってきてくれないかしら」

「は、はい」

 椒ちゃんは部屋を出る際にもちらちらと鏡さんを見ていた。やっぱりみんな騙されていたんだな〜。

「まあ、やることは同じだから別に構わないわよ」

 そうは言っても朱水は椒ちゃんが茶菓子と紅茶を持ってくるまでずっと鏡さんと目線をぶつけ合っていた。

 執事さんがノックをして顔を覗かせる。

「お嬢様、残りのお二方もお見えになりましたが」

「通して頂戴」

 その後矢岩君と由音ちゃんが応接間に入ってきて、鏡さんが朱水に対して本来の自分を出していることに驚いていたがそれについては二人とも触れずに会議を進めた。



「もう話は無いわね?」

 朱水がみんなを見回しても誰一人言葉を発する者はいなかった。

「なら良いわ。爺、車を」

「畏まりました」

 執事さんが退室すると一緒に椒ちゃんも空となった食器を持って出て行こうとする。

 私がどうしようかと悩んでいるのを見て朱水は助け船を出してくれた。

「有、ちょっと椒を手伝ってあげてくれないかしら」

 私はそれに勿論だよと答え、既に廊下に出てしまった椒ちゃんに追いつこうと駆け足で退室する。

「椒ちゃん」

 椒ちゃんは足を止めゆっくりとした動作で振り返った。その動作の叔叔さには惚れ惚れする。

「聞こえていました。でも盆は一つしかありませんから尼土様に手伝っていただけるものなどありませんよ」

 椒ちゃんはそういいながら再度台所へと歩き始める。優しい顔などこれっぽっちもくれなかった。

「そうだね〜」

 でも私は椒ちゃんを追い越しその手に持つ食器をお盆ごと奪う。

「何をなさるんですか」

 椒ちゃんは本当のところ私の意図がわかっているのだろうが、そう言わなきゃ気が済まないようだ。

「お弁当のお礼だよ。椒ちゃん、ありがとね。美味しかったよ」

 私の言葉を聞いて椒ちゃんは何かを言いかけたが直ぐに別の言葉を紡いだ。

「と、当然です。私は有能な使い魔ですから料理なんて出来て当然ですもの」

「そっか。でも感謝してるよ。これからも作ってくれるの?」

「そ、そうですね。尼土様がどぉぉぉぉぉぉしてもと言うなら作らないこともありませんが」

 椒ちゃんは髪を指でくるくる巻きながらそう言う。

「うん。お願いします」

 私はその姿に笑いそうになるのを堪えてちゃんとお願いをする。

 椒ちゃんは私の顔を拗ねたように見つめてから私の持つお盆を再び奪って走り去ってしまった。

「何だか椒ちゃんの事わかってきたみたい」

 私は誰もいない廊下でそう呟いてしまった。


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