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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第三章 ヴァラキア編

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魔王への謁見

レネを先頭に俺達は反対側の扉、即ち、魔王の間へ続く扉の方へ向かった。

レネが扉をノックすると、また中から扉が開かれた。

魔王の間はアルベリッヒ上級王の王の広間ほど奇抜な造りではなかった。

部屋の奥の方の中央に王座があった。

魔王の王座と言うと何だか骸骨なんかの彫刻が彫ってあって、無駄に棘とかのあるデザインを想像していたんだが、思っていた以上に普通の王座だった。

昔のヨーロッパの絵画に出てくるような平凡な王座だ。

王座を平凡とか言ってよいのかわからんが。

問題はその王座に座っている人物だ。

魔王の正体は誰なんだ?

ソニアに聞いたらはぐらかされた。

あの謎の微笑の意味はなんなんだ?


俺が平凡と感じた黒と金の王座に座っている人物は王座と同じく黒と金の衣服を纏っていた。

見たところレネのような強烈な外見ではない。

精悍な壮年の男性だ。

恐ろしく白い肌に漆黒の髪、瞳は琥珀色だ。

琥珀色の瞳の人間などまず見ないから、そこは不自然に見えるが、あとは特に変わったところはない。

外見はエルフ族に近い。

肌が白いからライオス族よりスヴァート族に見える。

「ソニア、よく無事で戻ったな。」

ソニアが恭しく頭を下げた。

ソニアは流石にその気になれば典雅な振る舞いができる。

これまでもちょくちょくその姿を見てきたが、今回は今までで最も美しい所作だ。

「伯には苦労をかけたな。家族のことは残念だった。」

本当にノルデル伯を思いやる感情のこもった言葉だった。

ノルデル伯は家族のことに触れられて、日頃、胸の奥に追いやっている悲しみがこみ上げてきたのか少し目を潤ませて、頭を下げた。

「お心遣い痛み入ります。魔王陛下。しかし、もう乗り越えました。」

ノルデル伯がまだ家族を惨殺された痛みから立ち直っていないのは明らかだが、魔王は静かに頷いた。

魔王もわかっているんだろうな。

次にヴィーラが進み出た。

「魔王殿、お久しぶりです。またお邪魔いたしますわ。」

ヴィーラは前の二人よりもくだけた態度だ。

もとより親密な関係なんだろう。

それによく考えたら、魔王とはいえヴァラキア魔王国という一王国の王様だ。

ヴィーラもアルフハイムの中の一国とは言え、女王だ。

対等とは言わないが、それに近い付き合い方をしているんだろう。

「ヴィーラ女王、あなたならいつでも歓迎する。今回はこちらから迎えの者を差し向けたのだが、少しご迷惑をおかけしたようだな。」

魔王はチラリと後方に立っているアランに鋭い視線を送ってから苦笑した。

表情が豊かだ。

ここもレネとは違う。

「あら。お気になさらないで。わざわざ迎えの使者を出して頂いて、却って恐縮ですわ。それに父には良い薬になったことでしょう。」

ヴィーラもチラリとアランの方を振り返り…

こちらはキッとした視線を送り、答えた。

すました表情をしているが、内心爆笑しているのは間違いない。

二人の冗談のやり取りのダシにされたアランは俺の後ろで表情一つ変えず突っ立っている。

アラン、お前もなんだかいいキャラだよな。

「アラン、ご苦労だったが、頼むからあまり無理をしないでくれないか?」

魔王は最後にアランに注文をつけた。

アランはその場に突っ立ったまま、軽く頭を下げた。


「さて…」

魔王が俺達に視線を向けた。

うぉっ!

この瞬間、俺は全身が総毛立つような感じがした。

レネから押し寄せてくる圧とはまた違う感覚だが、強弱に大きな差異がある。

格段に強い力を感じる。

恐ろしさが全身を貫くが、どこか優しさに包まれたような気にもなる。

正直、俺は魔王を想像していたより平凡だなんて思い始めていた。

平凡だなんて、勘違いも甚だしい。

スヴァートエルフに似た顔は端正だが、どこにでもいそうな人物に見える。

瞳の色が琥珀色なのは異様だが、相手は魔王なんだ、これくらいはありえるだろ?

しかし、実際に面と向かった時に受けるのは圧倒的な存在感なんだ。

見た目じゃないんだな。

「そなたが噂の転生者殿か。」

そう言えば前にも同じことを言われたな。

「ダンカン=マカリスターと申します。」

魔王と正面から向き合い、言葉をかけられた。

緊張する。

返答したが、声が上手く出ない。

普段の俺とは大違いの聞き取りにくい小声になってしまった。


「魔王様、お待ちください。私からお話しさせて。」

ソニアだ。

「ふむ。確かにソニア殿から先ずは話を聞くのが良いな。」

そこからソニアがこれまでの話をしてくれた。

先程とは打って変わって、要領よく、わかりやすく、詳しく説明している。

「ダンカン殿には色々とお礼を申さねばならないようだな。」

話を聞き終えた魔王は再び俺の方に向いた。

「いえ…そんな…お礼だなんて…」

こちらはもうしどろもどろよ。

そんな俺にとどめを刺そうとするやつがいる。

「あのね、魔王様。ダンカンへのお礼なら魔王様が誰なのかをお教えするのが一番よ。」

おい!ふざけるな!

いや、そりゃ知りたいさ。

知りたいけどさ…

まるで俺が魔王を好奇心の対象で見てるみたいじゃないか!

怒らせたらどうするつもりだ!

しかし、魔王が怒った様子はなく、微笑していた。

「私の正体などヴァラキアでは誰も知っていることなのだがな。」

「いや…その…何と言いますか…ウェスタリアでは謎と言いますか。誰も知らなくてですね。」

「お安い御用だ。私は魔王メルコル。ウェスタリアでは背徳の神と呼ばれているそうだな?」

「いえ、そんな…背徳の神だなんて…」

としどろもどろに答える俺の内心はあまりの驚愕にどうにかなりそうだった。

今でも魔王はメルコルだっただと!

神界が人界と断絶した時、幽閉されたんじゃなかったのか!?

どういうことだ?

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