カサベラの反乱
こうして聞かされたのがカサベラの反乱だ。
カサベラは『オーク、ゴブリン追放令』の公布が伝えられた際にその場で反乱を起こしたそうだ。
当たり前だ。
あの町はオークやゴブリンが半数近くを占めている。
そんなもの公布したら、何もないわけがないんだ。
俺達の不安が的中した。
それにノルデル伯は言っていた。
カサベラに潜伏する伯爵とつながりのある者に『オーク、ゴブリン追放令』を知らせる使者を出したと。
知らせを受けたノルデル伯の手の者達は、事前に準備をしていたのだろう。
反乱の詳細はヴァラキアまで伝わってはいない。
ただ、カサベラの住人は領主と領主に従う衛兵達を捕縛し、反乱を宣言したことは間違いない。
その際、反乱に反対した者は町から追い出されたそうだ。
住民同士で血みどろの殺し合いになったわけではなさそうだ。
だからといって安心はできない。
これからどうするのだろう?
王国は追討軍を派遣するに違いない。
王国が本気で追討軍を派遣すれば、カサベラの陥落は必至だ。
もしかしたら、今頃…
皆は無事だろうか?
ガレスやダリー、ダンガーやその子分達、輝く角笛亭に集う飲み仲間達…
それにバーン師。
遠縁の親戚で、俺の家庭教師、魔法の師匠。
魔法使い協会においては俺の後見人であり、俺にとっては祖父のような存在でもあった。
バーン師はカサベラの魔法使い協会では支部長だ。
魔法使い協会の後ろ盾は王国だ。
立場上、反乱に与するのは難しいだろう。
バーン師も町から追放されたのだろうか?
しかし、魔法使い協会が王国を後ろ盾に持つ以上、反乱軍をそのまま放置しておいて許されるのだろうか?
許されたとしても、王国はカサベラの内情をよく知るカサベラの魔法使い協会の会員を追討軍に参加させるのではないだろうか?
バーン師の放つ強大な魔法がカサベラの友人達を死に追いやるようなことはあってほしくない。
バーン師はジャン王を深く敬愛していて、オークやゴブリンと共に暮らせる世界を支持していた。
俺にオークやゴブリンの友達ができたことを喜んでいた。
そんなバーン師がカサベラ追討軍を参加するとは思えない。
しかし王命を拒否するバーン師を王国は赦すだろうか?
ふと顔を上げるとソニアと目が合った。
ソニアは何とも言えない表情をしていた。
不安、心配、気遣い…
そうだ。
ソニアは俺に一緒にブラドに残って欲しいと言っていた。
約束したじゃないか。
でも、ソニアは俺がカサベラのことを心配する気持ちをわかっている。
ダメだ!
彼女にこんな顔をさせるなんて、俺は最低だ。
「ジルワード殿、また詳しいことがわかれば、知らせてくれませんか?俺達はカサベラから来たんです。」
今更、取り繕っても嘘くさいか。
だから、素直にふるまった。
でも、カサベラに戻りたがっているように振る舞うわけにはいかない。
「かしこまりました。魔王様もいたく心配しておられます。あの町には我らの同胞が住まいますからな。」
「俺達の友人もいっぱいいます。でも、暫くこちらに滞在させていただくことになりますので。」
ソニアの表情が和らいだように思えるが、まだ悲しげなのは俺達の気持ちを慮ってるからだろう。
ふとフレッド達の様子をうかがった。
皆、比較的落ち着いた態度だ。
「ま、わかっていたことだからな。」
とは後のフレッドの弁である。




