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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第二章 逃避行編

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ヴィーラとソニア

歩きながらヴィーラは第四次暗黒大戦の後からの話をしてくれた。

大戦の後、戦功により自国の王座に復帰すると自分の王国だけではなくアルフハイム全土の復興に尽力したらしい。

それがさっき言ってた復興の功というやつだろう。

どうやらヴィーラはエルフの中でも特に木々や動物達に愛されていて、彼女が植樹するだけで他のエルフとは違いがあるようだ。

俺は自分がいる彼女特製の木立を見回した。

まぁ納得できるよな。

ある程度、復興の目途が立った頃から彼女はちょくちょく外の世界へ旅したそうだ。

復興が軌道に乗れば、優秀なカレイド達に任せられたんだろう。

ヴィーラは王都クロンドロイもよく訪れていたそうだが、実はかなりメルクハイムの森に寄り道していたそうだ。

メルクハイムの森に住むエルフ、スヴァート族と接触する為だ。

スヴァート族の間でも、大戦中のヴィーラの行動は知られていたようで、接触を繰り返す内に信頼されるようになったそうだ。

それからスヴァート族の紹介で各地に隠れ住んでいるオークやゴブリンのもとにも訪れるようになったらしい。

ヒト族やドワーフ族、ノーム族とも交流を頻繁にしたらしい。

ライオスエルフは気位が高く、多種族を見下しているから、外交や取引以外で他種族のもとを訪れることはあまりしないんだが、彼女は全ての種族と交流をしたがった。

ヴィーラの行いは広く知られていたし、何と言ってもエルフの上級王の後継者だ。

あちこちでかなり好意的に遇されたようだ。

カレドニア地方のシンクレア一族もかなり訪れていたようだ。

元々、古くから続くシンクレア一族とエルフの交流は彼女の王国の民が中心だったわけだしな。

地理的に。

第五次暗黒大戦の後は更に交流が深くなったようだ。

ジャン王の政策があったからな。

第四次暗黒大戦の後、統一の時代では、スヴァート族やオーク、ゴブリンと接触していたことは秘密にしなければならなかったが、第五次暗黒大戦の後は隠すことなくできたんだろう。

アルベリッヒを初めハイエルフの長老達はジャン王の政策に同調しなかったが黙認していたからな。

クロンドロイにもライオスエルフの特使としてよく滞在していたそうだ。

「私、小さい頃、ヴィーラが来るのいつも楽しみだったの!だって一番遊んでくれたんだもの!」

そうか、ちょくちょくクロンドロイに滞在していたならソニアが生まれた時から知っているわけか。

「あなたのいたずらに付き合わされて、ジャン王の家臣から苦情を入れられたこともあるんですけど?」

「あら?そんなことあったかしら?幼すぎてよく覚えてないわ。」

「よく言うわね。あなた私が一緒に怒られてくれるからって、お菓子を持ってきたことあるじゃない?」

二人は楽しそうだ。

二人とも辛い過去を持っているが、幸せな記憶を共有しているんだな。

「だから、ジャン王が暗殺された時は心配で仕方なかった。私はちょうど帰国していたから、助けに行けなかった。」

「気にしないで。あなたは私がヴァラキアに逃げる時、助けてくれたじゃない。」

そうか、もしかしたら、ソニアとノルデル伯はヴィーラの手引きで今回と同じルートを通ってヴァラキアに逃げたのかもしれない。

そして、その後もヴィーラはヴァラキアを幾度も訪れているから今では二人は親友なわけだ。

「ソニアがクロンドロイに潜入するって聞いた時は心配したわ。彼女、私に相談もしてくれなかったのよ。」

「あなたに相談したら、行かしてくれなかったでしょう?」

「当たり前よ。無謀すぎるわ。」

「それで追いかけてくれたのね?」

「ええ、そう。まさか、あなたが遠回りしてカサベラから王国に入るとは思わなかったから、北回廊海南岸の港町をしらみつぶしに探し回ったものよ。」

「あの旅は長かったわ。」

そりゃそうだろう。

ソニアの話では見つからないようヴァラキアとは正反対のカサベラから王国に入る為、中回廊海を横断したそうだからな。

よくやるよ。

「ノルデル伯の拠点が襲撃されたと聞いた時、きっとあなたも一緒と思ったの。」

ライオスエルフはクロンドロイの宮廷に大使を常駐させている。

そこからの情報だろう。

もしかしたら、公の大使とは別に緑の党の党員を常駐させてノルデル伯とも繋がっていたのかもな。

「王国中で指名手配されている黒髪、黒い目の女、召喚者出現、ノルデル伯襲撃、そして転生者が混じっているという噂、もしかしたらと思って、あの古城へ行ったのよ。私もあそこに『守護者のアミュレット』が隠されているのは知らされていたから。あそこで会えたのは僥倖よ。」

「心配かけてごめんなさい。ヴィーラ。あなたが助けに来てくれて嬉しかった。」

なるほど、それであの古城にいたのか。

謎が解けた。


俺達が屋敷に戻るとノルデル伯がやや浮かない顔をしていた。

奥で話し声が聞こえる。

カレイド達が来ていた。

ユキーナがカレイド達と話している。

カレイドが俺達を疎んじているのは明らかなんだが、ユキーナはハートが強い、気にしてないんだろうな。

やけに好奇心があるようだから、また根掘り葉掘り話を聞いているんだろう。

ここまでの旅の間も、やけにノルデル伯にひっついていたな。

カレイドもやや迷惑そうにしていたが、礼儀正しく応対をしていた。

俺達が部屋に入るとカレイドはほっとしたような顔をした。

少し笑えたな。

グッジョブ、ユキーナ。

わざとじゃないんだろうけどな。

「陛下、出立の用意が整いました。目立たぬよう明日の明け方に出るのが良いかと。」

「ありがとう。カレイド。そうね、あなたの言う通り、明日は早起きしましょう。」

「本当に私が同行しなくてもよろしいのですか?」

そうだ。

カレイドがやたら同行したがっているとヴィーラが言ってたな。

心配なんだろう。

俺達、胡散臭すぎるからな。

奴ら目線では。

「ええ。あなたには国に残ってもらう必要があるわ。王国が『オーク、ゴブリン追放令』を出した以上、父からも何らかの命令があるに違いないの。今のうちに内政のややこしい問題は目途をつけておいて。あと兵の召集があるかもしれないわ。でも、まだ皆にはこのことは伝えたくないわね。」

「では演習か何かの名目で。」

「流石ね。任せるわ。いきなりでは民に迷惑をかけてしまう。さりげなく準備をさせるように計らって。」

「御意。」

なるほどね。

長年仕えてきただけのことはある。

これはヴィーラも信頼するな。

しかも、かなり保守的な考えのようだが、それを抑えてヴィーラの意を汲み取って俺達を逃がす手配もしてくれたんだ。

強い信頼関係があるわけだ。

聞くところによるとカレイドはエルフ七大王家の一つメイヴ家初代当主の長男だそうだ。

つまり、最初に創造神によって創られた十四人の男女の子供達の一人だ。

上古のエルフの第二世代だな。

しかも、長男ということはエルフの誕生から二十数年後には生まれただろうから、この世に生きるエルフの中でもアルベリッヒ上級王に次ぐ古いエルフだ。

要はすごい奴ってことだ。

中身はわからんが。

アルベリッヒに仕えるようになった経緯も気になるな。

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