カレイド(上)
峠からの坂道を下ったところには数軒の家が建てられていた。
小さいがハイエルフらしい洗練された瀟洒な建物だ。
細長いシルエットで複雑な模様を描いて漆喰が塗られている。
その前には数人の素晴らしい衣服に身を包んだハイエルフが待っていた。
ヴィーラの家臣団だ。
先頭の男は特に立派な服装をしている。
こいつが筆頭家臣のカレイドか。
ヴィーラが自らの王国を興した際にハイエルフ王が直々にヴィーラの家臣としてつけた者達の筆頭だそうだ。
それだけに有能な男らしい。
今ではヴィーラの腹心として、不在時の王国の治世をほぼ全面的に任されているという。
ヴィーラの話を聞いていると自分の王国にいることはほとんどなく放浪の旅ばかりをしているようだが、それもこのカレイドが王国をしっかり治めてくれているからできるらしい。
カレイドの後ろにいる者達の大半が同様にハイエルフ王によってつけられたヴィーラの家臣で、カレイドを助けて王国の運営を担っている男達らしい。
すごい奴なのはわかるんだがな…
何と言うかな…
ディアリン達はよそよそしく、しかつめらしくて取っつきにくい印象だったが、少し話せばそんな奴らじゃないとわかったが、こいつらは輪にかけて取っつきにくそうだ。
まるで威厳が血肉を持ったらこんな奴らになるんだろうなと思う。
ヴィーラに対しては恭しい態度をとるが、俺達を見る目は冷淡そのものだ。
せっかく、ハイエルフへの印象を改めようと思っていたのにな。
逆戻りだよ。
「女王陛下、お待ちしておりました。」
好かない印象だったが、ヴィーラに頭を下げ、挨拶する仕草は惚れ惚れするほど優雅だった。
ま、俺はハイエルフのそんなところがやや癇に障るんだけどな!
「ありがとう。カレイド。話は聞いているわね?」
「はっ!先駆けの使者からお聞きしております。必要なことはあらかた手配を済ませました。」
「さすがね。今夜はもう休ませてもらうわ。でもその前に少し詳しいことを聞かせて。」
「はっ!ではお客人様方を案内させましょう。他の者はどうしましたか?」
「ディアリン達には少し用事を頼んだの。数日遅れるわ。」
ヴィーラが俺達を振り返った。
「今夜はあの小屋で休みましょう。」
そうか。
あれは小屋なのか。
確かに小さいがヒト族の裕福な商人の館よりも美しい。
小屋の中も美しかった。
一見ただの山小屋だ。
が、例えばどこにでもありそうな木製のテーブルだが、天板がヒト族の技術では考えられないくらい薄い板であったり、椅子の背に見落としそうなほどさりげなく彫られた彫刻がよく見るとヒト族の技術では考えられないほど精巧で美しかったり、随所にハイエルフらしい洗練された作りが見受けられた。
小屋での夕食は俺達仲間だけで取ることができたので、俺達は遠慮なく干し肉や干し鱈を頬張った。
ヴィーラはかなり遅くまで外でカレイド達と話をしていた。




