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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第二章 逃避行編

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不穏な問い

馬車の窓では午後の日が辺りを黄金色に染めていた。

まだそんな遅い時間ではないが、北辺の地での秋だ。

すぐに暗くなるのさ。

見飽きても美しい景色は日にわずかしか眺めることができず、すぐに見えなくなってしまう。

だからこそ美しい景色なのかもな。


河口から四日目に道は登り坂になってきた。

正面には峠が見えている。

その峠を越えるらしい。

道中ずっとすぐ横にあった川も今は急な斜面の下を流れている。

これまでも幾つもの山肌を下る急な流れと合流していたが、谷の一番奥では滝壺となって終わっていた。

その滝は俺達が越えようとしている峠の脇の更に高いところからから幾段かに分けて落ちている。

急峻な断崖の、その流れに沿ってぽつぽつと針葉樹が生えている。

「もうすぐ北の荒れ地が終わるわ。あの峠を越えればアルフハイムよ。」

ヴィーラが峠を指さす。

俺達は峠を前に休憩をしていた。

峠までなかなかの急勾配だ。

馬達に無理をさせたくないとのことだ。

エルフ達は動物を大切にするからな。

「北の荒れ地も見納めね。」

最後の言葉は俺に向けられていたらしい。

俺が顔をあげるとヴィーラと目が合った。

俺の故郷、カレドニアへつながる北の荒れ地だからな。

気を遣ってくれてるようだ。

それに峠を越えればそこは本格的にハイエルフ達の支配する地域になってしまう。

油断もできない。

望郷の念に駆られている場合じゃなくなる。

発破もかけられたかな。


休憩の後、俺達の馬車にユキーナが乗り込んできた。

これまでも馬車の面子は別に固定していたわけではない。

休憩中の会話の流れで多少入れ替わりしていた。

ユキーナはこれまでノルデル伯の馬車にずっと乗っていたんだが。

これで俺たちの馬車の面子はヴィーラ、ユキーナ、ソニア、俺の四人になった。


峠への道は幾度も折り返していた。

道は狭かったがハイエルフの御者は巧みで止まることなくスムーズに切り返していた。

峠を越えると両側に迫る山は更に上に続いていたが、道は反対側の谷間を下っている。

こちらの谷間にもやはり山から川が流れ落ちていた。

反対側の谷間の向こうにはぱらぱらと木立が見えていた。

更にその向こう、微かに見える濃い緑色は森のようだ。

遂に来た。

ハイエルフ達の故郷、アルフハイムの森だ。

「峠を越えると景色が少し変わったな。」

「アルフハイム側の方が少し暖かくて湿潤なのよ。だから草木が生えやすいのね。それでも森までは少しかかるわ。」

「いよいよ。ハイエルフ達の王国に入るのね。」

ソニアは緊張気味だ。

俺だってそうだ。

テルデサード王国は俺達一行を捕らえよう必死だ。

ハイエルフはテルデサード王国と同盟を結んでいる。

と言うよりは、これまでの暗黒大戦の経緯からハイエルフが信用しているヒト族の勢力がテルデサード王国だけだというのもある。

テルデサード王国でお尋ね者となれば、当然、ハイエルフ達からもお尋ね者として追われることになる。

そのハイエルフ達の国アルフハイムの森を横断するんだからな。

皆、緊張している。


「アルフハイムってそんなにヤバいの?」

ユキーナが素で聞いてきた。

「普通に考えて、危険だろう?俺達、これから先、当分は見られるわけにはいかないんだからな。」

「ふーん。でもエルフ達って私達の事知らないんじゃない?見られたってバレないわよ。」

「いやいや、アルフハイムだぜ?ここにエルフ族以外の人間なんて滅多にいないんだぜ?目立ってしょうがないよ。」

「そうなんだ。」

なんだ、暢気な奴だな。

強がっているようにも見えない。

ユキーナはいつも自信たっぷりなんだよな。

「でもヴィーラがいるじゃん?ヴィーラ、なんとかしてくれるんでしょ?」

ヴィーラが苦笑する。

ヴィーラとしても請け合ったからこの道を選んだわけだが、ここまでストレートに言われるとキツイよな…

「少なくとも私の王国にいる間は大丈夫よ。」

ヴィーラによると北の荒れ地からアルフハイムの北西部一帯つまり今いる辺りは彼女の王国の領地だそうだ。

「その後はどうなるのよ?」

「どうもしないわ。このまま馬車で旅をするわ。ただ皆には窓から外を覗かないようにしてもらう必要はあるわね。」

「それ、酔いそう…」

そこは俺もユキーナに同感だ。

外の景色を見ていないと乗り物酔いしやすいよな。

「もちろん、ずっとではないわ。休憩も入れるつもりよ。」

「それ大丈夫なのか?」

「私の同志は私の王国以外にもいるわ。既に私の部下が先行して色々手配してくれているわ。人目を気にせずに滞在できるところも用意させるつもり。」

ヴィーラの同志、『緑の党』の党員達か。

ジャン王の考えに賛同し、オークやゴブリンと戦わずに共存を志す連中だ。

「安心して。とは言えないけれど、できる限りのことはするわ。」

ヴィーラの顔はいつになく真剣だ。

安易に『安心して。』などと言われるより、正直にこう言われる方が信頼できる。

「わかった。頼りにさせてもらうさ。」

「じゃ、大丈夫ね?」

ユキーナは相変わらず楽天的だ。

「それでヴィーラのお仲間って、あちこちにいるの?」

「あちこち…とは言えないわね。それに今回のことを打ち明けられる程、信頼できる仲間はそんなにいないことも事実よ。」

『緑の党』のことはきっと最重要機密だ。

簡単に口にはしたくないらしい。

「でもどうしたらその人達に会えるの?」

「どういうこと?」

「だってこの先は危険なんでしょ?もしかしたら離れ離れになることだってあるかもでしょ?そんな時、ヴィーラの仲間が見分けられない困るでしょ?」

ユキーナの言うことはもっともだ。

もっともなんだが…

「まぁ、ユキーナ、そこは大丈夫だろう。」

「どうして?そんなこと言い切れる?」

「ヴィーラだって、できる限りのことはするって言ってるじゃないか?」

「だったら、私達にも信じられるエルフの見分け方とか教えてくれたっていいじゃない?」

正論だ。

「緑の羽根よ。」

「え?私の同志でも特に信頼できる者達はみな緑の羽根を身に着けているわ。」

『緑の党』だしな。

緑の羽根と聞くと緑化推進の募金が頭に浮かぶのは前世の記憶だ。

「但し、羽根はエルフにとってごく一般的な装飾なの。それに緑はライオスエルフがもっとも好む色よ。だから緑の羽根を身に着けていれば必ず私の同志とは限らないわ。」

「わかったわ。」

ユキーナはまだ納得していない様子だったが、ヴィーラが苦し気に説明しているため、場の空気が悪い。

それを察してか、一先ず引き下がった。

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