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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第二章 逃避行編

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召喚者、再び

「すぐにランタンを消せ!」

階段の上から覗くンダギはひそひそ声だ。

ノルデル伯がすぐにランタンを消した。

真っ暗だ。

いつの間にか外も暗くなったらしい。

しかし薄暗い部屋に暫くいたからか暗闇に目が慣れるのが早い。

暫くするとなんとか手探りと記憶に頼り階段を上がれるようになった。

「どうした?」

いつも遠慮なく大声で話すンダギが声を潜めている。

そういうことだろう。

「まずいぞ。奴らだ。」

ブロウもひそひそ声だ。

フレッドは城館の玄関脇の壁に身を隠している。

俺達はできるだけ音を出さないようにそちらに行った。

バービカンの辺りでいくつもの松明が行き来しているのが見える。

松明をもっているのは衛兵達、それも王都の衛兵達のようだ。

つまり王家直属の兵士達だ。

雨音に混じって奴らの立てる物音が聞こえる。

何人くらいいるだろう?

「まじでこんなところに泊まるのかよ?冗談じゃないぜ!」

無遠慮な大声が響いた。

聞き覚えのある声だ。

「早く屋根をなんとかしろよ。ローブは濡れると重いんだよ。」

妙に粘りのある嫌らしい声も聞こえてきた。

「だから明日の朝にしようって言っただろ?せめて村の宿で眠らせろよ。」

「隊長さん気をつけなよ。こいつ気が短いから、すぐに誰でもぶった切っちまうよ。」

松明に照らされた派手な格好の二人に衛兵の隊長らしいのがしきりに謝っているのが見えた。

ショウとヒカルだ。

最悪だ。


「どうする?奴らに唯一の出入り口を押えられちまったぜ。」

エミィがいつの間にか背後にいた。

「彼らは皆、ヒト族かね?」

「ああ、ゴブリン、ドワーフ、ノーム、エルフはいない。」

エミィにはノルデル伯の質問の意図がすぐにわかったらしい。

なるほどね。

ゴブリン、ドワーフ、ノームは皆、元々地下で暮らす種族だからわずかな光があれば普通に見えてしまう。

エルフも彼らほどではないにしても夜目はきく。

神話上では神々が最初に創ったハイスペック種族だからな。

転生前の世界のロボットアニメなんかで最初に作ったコンセプトモデルがハイスペックで、その後に量産されたモデルの性能が劣っているようなものか。

エルフ族の奴らが傲慢になるわけだ。

とにかくだ。

敵味方の中で夜目がきくのはエミィだけだ。

こいつはデカい。


「この城跡を探索するとなると真っ先にこの城館をあたるだろう。」

ノルデル伯の言う通りだ。

こことバービカン以外はほとんど崩れてしまっているんだからな。

「奴らが来るまでここを出よう。エミィ殿、あちらの塔へ行きたいのだが先導を頼めるか?」

「承知した。」

俺達はエミィを先頭にゆっくりと歩き始めた。

奴らは騒々しいし、雨音もあるからよほどのことがない限り、気付かれなさそうだ。

しかも、奴らの松明のおかげでわずかに足元の様子がわかる。

ノルデル伯が指示した塔は確か昔は厩舎があったと教えてもらった辺りだ。

まだ日のある間に見た記憶では比較的崩れていない塔だった気がする。

「あの塔には城壁の上に上がる階段があった。崩れてなければ城壁の上から奴らの背後に回ろう。」

「奴らの馬を奪おう。逃げられるぞ。」

エミィはいつの間にかバービカンまで偵察に行ったようだ。

流石だね。

塔の前まで来た。

振り返ると松明を持った一団が城館へ向かっている。

ようやく気の毒なお守り役の隊長さんが召喚者達を説得したようだ。

バービカンの方には松明を持った衛兵が一人。

その向こうにもう一人。

見えるのはそれだけだ。

もしかしたらもう一人くらいいるかもな。

でもその人数なら余裕で倒せるだろう。

これは逃げられる…


その時だ。

待て!

これは!?

ヤバいだろ。

俺は魔力波を感じた。

胸の辺りが少し暖かい。

魔力波ってのは、自分の魔力を意図的に体外へ向けて放ったものだ。

探知魔法だ。

魔法使いは自分の放った魔力波に触れた者を探知することができる。

初歩的な魔法だ。

滅多に使うことはないけどな。

魔力を無駄に消費する上、探知といってもこいつは言わばアクティブソナーだ。

パッシブソナーじゃない。

魔法使いや魔法の素質がある者、敏感な者は魔力波を感じとることができる。

わざわざ自分の居場所を教えるようなものだ。

転生前の世界ではアクティブソナーを搭載していない潜水艦が主流だと聞いたことがある。

それだけ、アクティブソナーなんてのは使えないんだ。

同じことだ。

よほど圧倒的な力がある者でなければ、魔法探知なんて使うことがない。


聞き覚えのある声がした。

「あれぇ?」

本当に嫌な声だ。

「こんなとこに誰かいるよ?うーん、七人だ。」

見つかってしまった。

なるほどな。

圧倒的な力を持つ者、そう召喚者なら探知魔法も使うわけだ。

「そこにいるのだーれぇ?」

そう言うと同時に炎の玉が飛んできた。

「逃げろ!」

俺は叫んで横に飛んだ。

炎の玉は一度放つと真っ直ぐにしか進まない。

長靴の先が焦げた。

けど、火傷はしてない。

軽くかすった程度か?

あとの皆も無事だ。


「ノルデル伯、ソニアを連れて塔の中へ!」

敢えて階段だとか、城壁の上とか言わない。

ノルデル伯は頭がいい、俺の考えることくらいわかるだろう。

「ンダギ、ブロウ、前衛だ!あいつの剣に気をつけろ!」

ショウもいる。

奴の神器。

あのバカでかい剣。

まるでバターのように一瞬で切り落とされたジーナの首。

悪夢がよみがえる。

ンダギ、ブロウの剣で対抗できるだろうか?

もっとも俺もそんなことを言ってる余裕はない。

炎の玉を放ってきたのはあの嫌らしい声の主、ヒカルだ。

俺はこっちを相手にしなきゃいけない。

ボルンを一瞬でバラバラ死体にしたあの魔法とやり合うんだ。

今回ばかりは死ぬかもしれない。

「フレッド!衛兵達を狙ってくれ!」

俺の身を守るだけで精一杯だ。

フレッドにヒカルを攻撃させない方がいい。

転生前の世界のゲーム言葉で言えばヘイトを引き受けるって奴だ。

その分、俺は自分のことに集中して戦える。

勝てる気はしないが、どうせやり合うなら少しでもマシな戦いにしたい。

エミィに指示は出さない。

あいつは自分で考えて動けるし、敵にこちらのとっておきの存在を知らせる必要はないしな。

「その声、この前の転生者君じゃん。」

「この前、ユウの奴と遊んだんだろ?あいつ、マジでキレてたぜ。」

ショウとヒカルがゲラゲラ笑い出す。

「なぁ、名前くらい教えてくれよ。」

二人が笑い転げてる間に俺は呪文を唱えた。

稲妻の魔法をかけると同時に叫んだ。

「俺の名前はジョン=ドウだ!」


「おいおい…いきなり酷すぎだろ!」

ショウが叫ぶ。

油断しすぎなんだよ。

お前ら。

てか、無事なんだな。

術は直撃してたはずなんだがな。


ヒカルはショウよりまともだ。

すぐに魔法を放ってきた。

ボルンの時と同じだ。

人間の体を一瞬でバラバラにするような空気の刃だ。

これは俺の対魔法でなんとか受け流した。

対魔法ってのは、俺の苦手な魔法封じの術とは違う。

魔法封じの術は相手の魔法に干渉してこれに対抗する魔法だが、対魔法ってのは相手の魔法が起こした現象に対して対抗するやり方の事を言うんだ。

今回の場合、空気の刃に対して空気の障壁で対抗した。

空気の刃は大気の精霊に真空空間を作ってもらいそれを刃のようにして飛ばす術だ。

それに対して圧縮した空気の壁を作っておけば真空に空気が流れ込み刃の切れが悪くなるわけだ。

俺は呪符魔法や魔法封じ、魔力探知と言った魔法(真魔法と呼ぶんだが)は苦手だが精霊魔法だけは自信がある。

強大な召喚者相手ならこっちのやり方でないとやれる気がしない。

それでも俺のローブがあちこち切り裂かれた。

やはりヒカルの術は桁が違う。

普通の魔法使いが放つ空気の刃ならよっぽどの出来でない限り、人体なんて切断できないし、対魔法を施せば余裕で対処できるはずなんだがな…

袖が千切れかけてだらりとぶら下がっている。

裾もギザギザにされちまった。

畜生!

こいつは魔法協会の正会員だけに支給されるローブなんだぞ!

まぁ、かなり着ているから元々ボロボロなんだけどな。

とにかく体には傷がない。

胸の辺りがじんわりと熱くなっただけだ。

「へー。無事なんだ。面白いじゃん。ショウ、こいつはオークやゴブリンと同じポイントにしようぜ!お前ら手を出すなよ!」

ヒカルは薄笑いを浮かべて引き連れている衛兵達に命じた。

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