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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第一章 王都への旅編

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射手の召喚者

包囲する衛兵達を振り切った馬車は下町の通りを走り抜け、大通りに出た。

この辺りでスピードを落とした。

何もなかったかのように、他の馬車と並んで西へ向かった。

「なぁ、ダンカン。」

フレッドは俺の横で馬車に揺られていた。

「どうした?」

「さっきの戦闘、奴が急に弱くなっただろ?何かしたのか?」

それ、聞いてくれる?

語っちゃうよ。

俺。

「まずはあいつの持っていた神器な、あれ、手から離れた瞬間に毒が刃の上に現れる魔法がかかっているんだよ。きっと。」

「ほう?」

「そして落ちたナイフがあいつの手に戻った時には普通のナイフに戻るのさ。」

「だから、あいつはナイフの刃を平気で触っていたのか?」

「そうさ。あいつは敵の目の前でナイフの刃を触って見せたりすべきじゃなかったんだ」

あの仕草、アニメかなんかの真似だな。

「あいつが俺の背後をとった時、エミィが奴の投げたナイフを弾いてくれただろ?」

「ああ。うん?そうか!そこで気づいたんだな?」

「そうさ。あの時のあいつの狼狽ぶり。あいつも自分の投げた毒は怖かったのさ。だから自分に当たらないかと思って慌てたんだな。」

「それで俺達を一列に並べたんだな。」

「そう、後は簡単だ。エミィには隠れた場所からまずは弾いてもらった。奴が慌てたとこに炎の玉をぶち込めば倒せると思ったからな。」

「まぁ、落ち込むな。ダメージは与えてたじゃないか。それに…」

「ありがとう。そう、あいつがダメージを受けて動きが止まったから空気の障壁も間に合った。」

「恐ろしい相手だったが、ちょっとあっけない終わりだったな。」

その恐ろしい相手に何本もの矢を容赦なく撃ち込んだ優男がそんなことを言っている。

「そこなんだがな…」

俺はそこで口をつぐんだ。

考え事を始めちまったんだ。

俺の悪い癖だ。

人との会話中だってのにな。

この辺も前世で他人とうまくいかなかったところだな。

フレッドは俺のことをよく知っていてくれているから、何も言わない。

俺はユウとの戦いで召喚者について少し思ったことがある。

そこを振り返って、物思いにふけってしまったんだ。


西門はクロンドロイに残る門の中でも一番しっかりとその姿を残している。

馬車は西門を抜けた。

道はそのまま街道となって西に進む。

そう、この街道こそ西街道、この街道の先にはカサベラがある。

カサベラは王国内有数の交易都市だから、この街道はカサベラに集まった様々な異国の物資を王都に運ぶ国内有数の主要な街道だ。

異国からの旅人もこの西門から王都にやってくる。

それだけに形ばかりの西門だが、ここには衛兵が配されている。

何かあれば西街道から王都への出入りをここで止めるわけだ。

しかし、まだここの衛兵達には何も報せはないらしい。

俺達は何事もなく門を通り抜けた。

もう少し離れれば、一気にスピードを上げたいところだが、まだ駄目だ。

逆に怪しまれる。

ゆっくりと進む馬車の後ろが騒がしくなってきたのが聞こえてきた。

俺はもうろくに魔法が使える状態ではなかったがささやかな魔法なら使える。

遠見の魔法と呼ばれる魔法を使った。

こいつは複数の精霊を使役するし、小難しい魔法だが、魔力はさほど消耗しない。

但し、集中が必要だ。

ものが見えるってのは光のおかげなわけで、それを何とかする魔法、つまり幻影魔法を使う為には光を司る精霊が必要だと多くの魔法使いが考えている。

古代の魔法、即ち神々の魔法には姿を変えてみせる魔法が存在したのだから、必ず光の精霊が存在はずだと魔法使い達は考えているんだ。

ソニアのネックレスなどまさにそれだ。

だが、実際に光の精霊の存在を証明できた者はいない。

古代魔法の研究は傲慢の時代以来ずっと続けられているが、それを解明できた者は少なくともヒト族にはいない。

もしかしたらエルフ族の貴人、上古の時代の生き残りには古代魔法を理解できる者がいるかもしれないな。

とにかく、ヒト族の魔法使いは光を何とかする魔法は扱えないのだが、大気の精霊と水の精霊を使役して光の屈折を使いこなして見ているものを違って見えるようにする魔法は存在する。

それが現代の幻影魔法だ。

遠見の魔法はその初歩的な技だ。

大気の精霊と水の精霊を使役して目に見えない魔法のレンズを作り出し、遠くを見ようって魔法だ。

まぁ、望遠鏡みたいなものだ。

精霊に大したことをさせるわけではないので魔力の消費は小さいがピントを合わせたりするのが難しい。

俺は苦労しながら遠見の魔法の焦点を西門に集中させた。

どうやら俺達を追ってきた衛兵達がやってきたらしい。

西門に駐屯している衛兵達と話しているようだ。

俺達の馬車を指さしている衛兵がいる。

数人が走り出した。

「まずいぞ!スピードを上げてくれ!」

俺が叫ぶと御者席にいたノルデル伯の部下が馬に鞭を当てた。

西門も町の拡大に飲み込まれてしまっていて、門を出たと言ってもまだ町の中だ。

この雑踏の中でそう速度をあげられるわけでもないが、それでも走る衛兵達よりははるかに速い。

王都内には衛兵達が使う軍馬の厩舎が何か所かあるはずだが、そこまで馬を取りに行っている間に逃げられる。

そう思った時、ふと西の門の上に焦点を当てるとそこに人が立っているが見えた。

西門はもうかなり離れている。

遠見の魔法を使っていると言っても、小さくしか見えない。

しかし、それでも見分けはついた。

奴は日本人だ。

(もちろん日本以外の東アジア人かもしれないんだがな。)

弓を持っている。

背中に背負った矢筒に手を伸ばしているのが見えた。

「なぁ、フレッド。」

「どうした?」

「西門からここまで矢が届くと思うか?」

フレッドは後ろを振り返った。

遠見の魔法を使っている俺と違って、こいつにはかなり小さく見えているはずだ。

「さすがに無理だろうな。戦場で違う射程の長い長弓でも届くまい。」

「その弓が神器だったら、どうだろう?」

「なんだって?馬鹿!先にそれを言え!」

フレッドは慌てて叫んだ。

「皆、何かに隠れろ!矢が来るぞ!」

俺は西門の上に立つ男が弓を引くのを見た。

矢が放たれた。

「ぼーっとするな!」

フレッドが俺を覆いかぶさるように倒れこみ、馬車の隅に積まれた木箱の陰に隠れた。

次の瞬間、矢が幌を破って馬車に入ってきた。

御者台で馬車を操っていたノルデル伯の部下が背中を貫かれて死ぬ。

恐ろしくでかい矢だ。

すぐに別の男が死体から手綱を取り、馬車を操り始めた。

ンダギとブロウが荷台の木箱の一つを構えて、その男を守るように立った。

死体に刺さっていた矢が消える。

俺は再び西門の上を見た。

遠見の魔法をもってしてもかなり小さく見える。

しかし西日に照らされた門の上に射手は依然としている。

弓を引いている。

「まだ来るぞ!」

「馬鹿!顔を出すな!」

俺はフレッドに襟首を引っ張られてまた木箱の陰に隠れた。

次の矢は荷台の前の方、ノルデル伯のいるあたりに刺さった。

ノルデル伯も木箱に隠れていたが、矢はその木箱をも貫いた。

「畜生!なんて威力だ!」

フレッドが毒づく。

木箱の向こう側から死体が倒れだす。

やはりノルデル伯の部下の一人だ。

ノルデル伯を庇っていたらしい。

次の矢は荷台の最後尾に突き刺さった。

因みに俺の足先のすぐそばだ。

心臓が止まりそうになった。

その次の矢は馬車に届かなかった。

「どうやら弓矢の射程から出たようだな。」

フレッドは射手だ。

奴が言うなら、そのなのだろう。

「まだ油断するな。このまま急げ!」

ノルデル伯が御者台の部下に命令する。

そして自分を庇って死んだ部下の目を閉じさせた。

ノルデル伯の部下も御者台の一人だけになってしまった。


フレッドは馬車に転がる死体に目をやり言った。

「四人目の召喚者は射手か。」

同じ射手だから思うところがあるのかもしれない。

ソニアはユウが気になるらしい。

やはり同じ暗殺者同士だから意識するんだろう。

彼女はショウとヒカルに会った時にいなかったからな、最初に見た召喚者がユウだから印象が強いってのもあるんだろう。

そう言えばンダギ、ブロウはショウが気になるらしい。

ンダガの仇だからユウを激しく憎んでいるが、戦士としては同じ戦士のショウを意識するんだろうな。

俺は…

確かにヒカルのあの魔法は気になるが、どの召喚者も気に入らないし、意識している。

最後の射手の召喚者。

奴はどんな奴なんだろう?

ショウ、ヒカル、ユウと最低な連中ばかり見ているから同じような奴を想像してしまうな。

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