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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第一章 王都への旅編

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19/50

ノルデル伯(上)

翌日、俺達は王都の南門へ向かった。

南門と言っても門があった頃より町は更に発展し、既に城壁を越えて広がっている。

城壁もあちこちで解体されて、その石材が他の建物に転用されたりしている。

だから南門も街中に不自然に残っているアーチ状の廃墟みたいなものだ。

南門を出るとすぐ脇に革細工の工房があった。

城壁の名残と思われる石壁にもたれかかるように建てられていた。

ソニアはその工房を見つけると中に入って行った。

職人達が作業台に向かって黙々と仕事をしている。

一番奥に工房の長らしき男がいた。

オークだ。

王都ではオークは珍しいが、たまにはいるわけだ。

ジーナとボルンを思い出してしまった。

「…」

ソニアが何か話した。

物思いにふけって、聞き逃してしまった。

どうやら合言葉みたいなものらしい。

いかつい顔のオークは黙ったまま、すぐ横の棚の扉を開いた。

驚いた。

その棚は隠し通路への扉だったのだ。

漫画やアニメで出てきそうなギミックだな。

俺達は棚の扉をくぐって通路に入って行った。

方角からして先程の城壁らしきものの基部に入ったようだ。

階段が降りている。

最後にフレッドが入ったところで扉が閉められ、真っ暗になった。

先頭のソニアが俺に何かを押し付けてきた。

ランタンだな。

俺は着火の魔法を使った。

明かりが灯る。

魔法は便利だが何だか俺はマッチ扱いされているようで少し釈然としない。


因みにこの世界では前世のライターみたいなものがある。

マジックフリント(魔法の火打石)ってそのままの名前だが、石や金属の棒に着火の魔法を封じ込めたものだ。

これがあればすぐに火がつけられる。

俺は苦手でほとんどできないが、呪符魔法というのがあって、簡単な魔法を対象物に封じ込めることができるんだ。

そんな魔法を封じ込められたアイテムは呪符物と呼ばれている。

呪符魔法は難しいからかなり経験のある魔法使いでないとできない。

だからマジックフリントはかなりの高級品だ。

富裕層でないとなかなか持てない。

そういえばロバートが一つ持っていたが、すごく大切にしていて、たまにしか使ってなかったな。

呪符魔法で封じ込められた魔法は有限だから、いつかは魔法切れして使えなくなってしまうんだ。

代表的な呪符物として水の魔法を封じた『無限水筒(実際は有限なんだが)』や重力軽減の魔法を封じた『力持ち手袋』なんてのがある。

(この世界では重力は土の精霊の領域だから、重力軽減の魔法は土の精霊を使役する。)

魔法使いが飯を食っていく手段としてこれらの呪符物を作って売るというのがある。

ベテランの魔法使いに多い。

まぁ、こんなマジックアイテムの存在を考えると俺は本当にファンタジーの世界に転生したんだという実感が湧く。


ソニアならマジックフリントくらい持っていそうなものだが、持っていないらしい。

だから便利な歩くマッチの俺がやるのさ。


暗いし、何度か曲がっているから確信は持てないが、どうやら通路は北に向かっているようだ。

最後に階段を上がると木の板で塞がれた天井に当たってしまった。

ソニアは木の板を妙なリズムでノックする。


ココン、コン

ココン、コン

ココン、コン

ココン、コン


延々と同じリズムでノックし続ける。

すると、返事があった。


コン、ココン


逆のリズムだな。

今度はソニアが別のリズムでノックした。


ココココン

ココココン

ココココン

ココココン


すると木の板が持ち上げられた。

ずっと暗い地下道にいたから眩しい。

向こう側はどうやらどこかの建物の中らしい。

建物はずいぶん古びてはいるが、凝った装飾がところどころに残る。

窓から街路が見える。

かなりの雑踏だ。

王都の中心部に近いな。


部屋にいた男が素早く窓の戸を閉めて、険しい顔をして睨んできた。

外の人間に見られたくないんだな。

今度の男はヒト族だった。

ソニアの表情がかなり硬い。

恐らく、ここまでの手順は話で聞いてはいても、初めてなんだ。

緊張するだろう。

「すごいな。」

「何がよ?」

やっぱりな。

過剰に強い反応だ。

「だって、まるで冒険みたいじゃないか。こんな秘密の道を行くなんて。」

「呆れた人ね。一歩間違えれば、衛兵達に見つかって皆捕まるのよ!」

キッとした顔で突っかかってくる。

「ごめん。だって、本当にすごいと思ったんだ。」

ソニアが心底呆れたような顔をした。

「まぁ、いいわ。でも、はしゃいだりしないでね。真剣なんだから。」

「わかったよ。」

ソニアは黙って隣の部屋に入って行く男の後をついて行った。

振り返るとフレッドが親指を立てている。

俺は肩をすくめて見せるとソニアについて行った。

次に男は部屋の奥にある暖炉を指さした。

これも漫画なんかでありがちなやつだ。

暖炉の奥が隠し通路の入り口になっているやつ。

正直さ、やっぱりこんなのワクワクしちゃうだろ。

男の子ならな。


俺達はまたソニアを先頭に地下道へ降りて行った。

なんとなく俺は自分のいる地区がわかってきた気がする。

ここは王都中心部の下町だ。

クロンドロイ中心部でもタージュ川の南側が下町だと前に言ったな?

王家の城がカペ島にあった頃は、南岸のこの地域は王家や廷臣の生活必需品を扱う商館や陪臣達の住まいが集中する高級住宅地で美しいタウンハウスが建ち並んでいた。

しかし、王家の居城と廷臣達の館が北岸の丘の上に移ってからは王都の高級住宅地も北岸に移り、南岸に残された建物には住居を持っていない貧民が入り込んだ。

不法占拠だな。

そして今では王都の下町として栄えている。

しかしこの下町でも特に川岸に近い一部の地域は無法者や犯罪者が巣食うスラム街のようになっているらしい。


次に地上に出た時、俺は呆れた。

前と同じくソニアが事前に知らされているリズムでノックして開かれた扉から地上に出ると、今度は建物の外に出て普通に通りを渡らされたんだ。

折角、ここまで地下道を歩いてきたのに外に出てしまったら意味がないじゃないか?


後から知ったのだが、この辺りは下町地域の中でもスラム街の最奥部で、人通りの多い下町ならまだしも、この辺りをよそ者が歩けば人目に付くとのことだ。

下町、特にスラム街の住人の中には王都の衛兵達から密かに金を受け取っていて、何かあれば衛兵に密告する者がいるそうだ。

この辺りは治安が悪く、犯罪の巣窟だ。

何かあれば暴動も起きかねない。

治安上の措置だな。

そんな金を受け取っていると知られれば、まわりの住人に袋叩きにあいかねないから密告者達も秘密にしている。

とにかく、そんな誰かもわからない密告者達に知られずにここに来る為の地下道ってわけだ。

残念ながら最後だけは地上に出なきゃいけないわけだが、このブロックはケネス=シンクレア率いる一党が牛耳っているから気を付けておけば大丈夫だそうだ。


通りの反対側にある荘厳だが古びたタウンハウスが目的地、ケネス=シンクレアの秘密のアジトだ。

外からは廃墟に見える。

まわりの建物も皆そうだけど。

この辺りの住民はこんな建物の使える部屋に入り込んで住んでるんだ。

建物に入るとボロボロの部屋で物陰に男が立っていた。

ケネス=シンクレアの部下だろう。

男が更に奥の扉へ俺達を連れて行った。

扉の向こう側は別世界だった。

このタウンハウスが建てられた頃にそうであっただろう姿のように綺麗に補修されている。

中央に大きなテーブルにそれを囲むように椅子が配されている。

会議室のようだと思ったが、実際にそうだと後から教えられた。

その部屋には数人の男達がいた。

真ん中の身だしなみの良い男がケネス=シンクレアだろうと思ったが、その通りだった。

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