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『弱者』と笑われた俺の真の能力は実は超最強で最凶の『能力吸収』でした

作者:
掲載日:2025/11/14

「氷室、お前の能力って本当に使えねえよな」


教室の隅で、俺――氷室零は、またクラスメイトの嘲笑を浴びていた。


ここは国立能力者学園。全国から選ばれた能力者が集う場所だ。

この世界では十年前から突如として「能力者」と呼ばれる超常の力を持つ人間が現れ始めた。


炎を操る者、雷を纏う者、時を止める者。

彼らは英雄として、モンスターが蔓延るダンジョンを攻略し、人々から称賛される。


そして俺の能力は――「吸収」。


「吸収って何を吸収すんだよ?ダメージ?それとも魔力?」


「どうせ何も吸収できないんだろ?Eランクだし」


笑い声が教室に響く。俺の能力ランクはE――最低ランクだ。


能力発現時の検査で、俺の「吸収」は何の反応も示さなかった。

炎も吸収できない、衝撃も吸収できない、魔力も吸収できない。


検査官は首を傾げ、「何かを吸収する能力のようだが、対象が不明」という曖昧な診断を下した。


つまり、役立たず。


「零君、気にしないで」


優しい声が聞こえた。

振り返ると、長い黒髪の美しい少女――天野美月が微笑んでいた。


幼馴染の美月は、俺とは正反対のSランク能力者だ。精神操作という強力な能力を持ち、学園でも一目置かれている。


そんな彼女だけが、いつも俺に優しかった。


「ありがとう、美月」


「能力が弱くても、零君は零君だから」


彼女の言葉に、俺は少しだけ救われた気がした。


この時の俺は、まだ何も知らなかった。

美月の笑顔の裏に隠された本性を。


そして、俺の能力の真の恐ろしさを。



それは金曜日の放課後だった。


「零君、明日一緒にダンジョン行かない?」


美月が突然そう言い出した時、俺は驚いた。


「え、でも俺、戦えないし……」


「大丈夫。私が守るから。それに、零君にも経験が必要でしょ?」


彼女の言葉に嘘はないように思えた。

確かに、実戦経験のない俺は、このままでは落第してしまう。

学園の規定で、年に一度はダンジョン実習に参加しなければならないのだ。


「わかった。ありがとう、美月」


「ふふ、楽しみにしてるね」


翌日、俺たちは学園近くのEランクダンジョンに入った。

Eランクダンジョンは初心者向けで、出現するモンスターも比較的弱い。


薄暗い洞窟を進む。美月は先頭を歩き、俺は後ろをついていく。


「ねえ、零君」

突然、美月が立ち止まった。


「なに?」


「あなた、自分の立場、わかってる?」

その声は、今まで聞いたことのない冷たさを帯びていた。


「え……?」


「Eランクの役立たずが、Sランクの私と幼馴染だなんて。周りからどう見られてると思う?」

美月が振り返る。その顔には、今までのような優しさのかけらもなかった。


「美月……?」


「みんな言ってるの。『美月様は優しいから、あんな無能と付き合ってあげてる』って。私のイメージダウンなのよ、あなたの存在が」


心臓を掴まれたような感覚。


「それに、ちょっと調べたの。あなたの能力『吸収』について。もしかしたら、危険な能力なんじゃないかってわかった」


「危険……?」


「だから、ここで消えてもらうわ」


その瞬間、背後で巨大な何かが動く気配がした。


振り返ると、そこには体長三メートルはある鋼鉄のような外殻を持つモンスター――アーマービーストが立っていた。

これはCランクのモンスターだ。Eランクダンジョンに出るはずがない。


「これ、私が別のダンジョンから連れてきたの。精神操作でね」


「美月……どうして……」


「さようなら、零君。安心して、『モンスターに襲われて不幸な事故だった』ってちゃんとみんなの前で泣いてあげるから」


美月は背を向けて走り去った。

アーマービーストの巨大な腕が振り下ろされる。


俺はその場から一歩も動くことができなかった。


激痛。


吹き飛ばされた体が岩壁に叩きつけられる。体から肋骨が折れる音がした。


視界が霞む。口から血が溢れる。


「くそ……こんな……ところで……」

ふつふつと怒りが込み上げてきた。


美月への怒り、自分を笑った連中への怒り。


そして、何もできない自分への怒り。


「死にたく……ない……!」


アーマービーストが迫る。

その拳が、俺の頭を砕こうとした瞬間――


俺の右手が、本能的に突き出されていた。


そして俺の手から黒い霧のような何かが溢れ出し、アーマービーストを包み込む。

モンスターが苦しそうに暴れる。そして――


その体が、まるで霧に溶けるように消えていった。


代わりに、俺の中に何かが流れ込んでくる。


これは…力?いままで感じたことがないような圧倒的な力。


折れた肋骨が音を立てて再生する。傷が塞がる。


そして――俺の体が、鋼鉄のような外殻に覆われた。


「これは……アーマービーストの能力……?」


理解した。


俺の「吸収」の真の意味を。


これは、倒した敵の能力を完全に奪う力だったんだ。


今まで何も吸収できなかったのは、「生きている敵」を倒せなかったから。

検査の時も、無機物や魔力を対象にしていたから反応しなかった。


でも、敵を殺せば――その能力は俺のものになる。


「そう、か……」


体の奥底から、黒い何かが湧き上がってくる。

今までの屈辱。嘲笑。そして裏切り。


「美月……みんな……」


俺の口元が、歪んだ笑みを形作る。


「後悔させてやる」



月曜日、俺は学園に戻った。


教室に入ると、美月がいた。

彼女は俺を見て、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに泣き顔を作った。


「零君!良かった、無事だったのね!あなたがモンスターに襲われて、私……」


「嘘つき」

俺の冷たい声に、美月の表情が凍りつく。


「な、何を……」


「もういい。お前の演技にはうんざりだ」

教室がざわつく。


「氷室、何言ってんだ?天野さんが心配してくれたんだぞ」

クラスメイトの一人――炎使いのAランク、桜井が俺に詰め寄る。


「桜井、お前、確か俺のこと『役立たず』って呼んでたよな」


「はあ?何だよ急に」


「実戦で証明してやるよ。俺が役立たずかどうか」


その日の実技訓練。

俺は桜井に決闘を申し込んだ。


教師は驚いたが、能力者の世界では実力が全て。

申し込まれた決闘を断ることは、臆病者の証だ。


桜井は余裕の笑みで承諾した。


「後悔すんなよ、氷室」


訓練場に二人で立つ。


桜井の手に炎が灯る。Aランク炎使いの力――温度は優に二千度を超える。


「消し炭にしてやる!」


火球が飛来する。

俺は避けない。代わりに――


「硬化」


アーマービーストから得た能力。俺の体が鋼鉄の硬度を持つ。

炎が直撃するが、傷一つつかない。


「な、に……!?」


桜井の驚愕する顔。

俺は一気に距離を詰める。強化された筋力で、人間離れした速度だ。


「吸収」


桜井の体に手を触れた瞬間、黒い霧が彼を包む。


「ぎゃああああああ!」


桜井が地面に倒れる。気絶しただけだ――能力だけを奪った。

だけど、二度とこいつは目覚めないだろう。


俺の手に、赤い炎が灯る。


「これで、二つ目」

周囲が騒然となる。


「氷室が……桜井に勝った……?」


「嘘だろ、Eランクだぞ!?」


その日を境に、俺は学園の強者たちに次々と挑戦状を叩きつけた。

雷使いのBランク、風使いのAランク、氷使いのSランク。


全員を倒し、全ての能力を吸収した。

俺の中に、五つ、六つ、七つと能力が蓄積されていく。


そして、戦ううちに全ての能力を同時に使えることも判明した。

炎と雷を同時に放つ。氷で防御しながら風で攻撃する。


俺は、最強になっていった。


全てを倒し終えた時、美月が俺の前に現れた。


「零君……」

彼女の顔は青ざめていた。


「お願い、許して。私が間違ってた」


「今さら?」


「あなたがこんなに強かったなんて……知らなかったの」

美月が涙を流す。でも、その涙すら嘘に見えた。


「精神操作で俺を操ろうとしてるんだろ?無駄だよ」


俺が吸収したCランクモンスターの一つに、精神耐性を持つものがいた。

美月の能力は効かない。


「そんな……」


「美月、お前はずっと俺を利用してた。『優しい美月』を演じて、周りの評価を上げるためにね」


「違う、私は……」


「お前がダンジョンで言ったこと、全部本心だろ。今になって擦り寄ってきても遅い」


俺は背を向けた。


「これで終わりだ。二度と俺に近づくな」


「零君!!」


美月の叫びが背中に届く。

でも、もう何も感じなかった。



復讐を終えた俺は、学園の屋上にいた。


「やり遂げたようだな、氷室」


声をかけてきたのは、担任の黒崎先生だった。


「先生……」


「私は最初から知っていたよ。君の能力の本質を」


「え……」


「『吸収』――倒した敵の能力を奪う力。歴史上、数百年に一度現れる最強にして…最凶の能力だ」


黒崎先生が俺の隣に立つ。


「でも先生、俺は……」


「復讐に生きたか?」


図星だった。


「空虚だろう。復讐を終えた今、何も残っていない」


その通りだった。強くなった。復讐も果たした。


でも、心は何も満たされていない。


「先生、俺はこれからどうすれば……」


「それは君が決めることだ。ただ、一つ言えるのは――」

黒崎先生が空を見上げる。


「君の力は、復讐のためだけにあるんじゃない。本当の敵は、まだ現れていないんだから」


「本当の敵……?」


「ああ。この世界には、まだ君が知らない闇がある。モンスターがなぜ現れたのか。能力者がなぜ生まれたのか。その真実を知る時が来る」


遠くの空に、黒い裂け目が見えた。新しいダンジョンの出現の合図だ。


「零、お前の戦いはこれからだ。過去に囚われるな。前を向け」


黒崎先生の言葉に、俺は少しだけ救われた気がした。


「はい」


俺は拳を握りしめる。

復讐は終わった。でも、俺の物語は始まったばかりだ。


吸収した七つの能力を感じながら、俺は新しい戦いへと歩き出す。


もう弱者じゃない。


氷室零――最強の能力コレクターとして。







つづく…かも…?

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