1.転生
更新は不定期です。
就職で新生活が始まるし、元々趣味でちょくちょく書いてるヤツを、スマホの容量削減のために投稿してるだけなので、完結するかすらわかりません。
と言うか、九分九厘失踪すると思っていただいて構いません。
以上を承服できる方のみ、お読みいただけたら幸いです。
(3…2…1…お疲れ様〜)
今日はこのゲームの終わりの日。50年の歴史を誇った和製VRMMOアクションゲーム『アナザーワールド』のサービス終了の時刻ちょうど。私自身も長く時間を割いたゲームの終焉を見届け、意識がスゥッと薄くなり現実世界へと戻っていく。
(意識がはっきりしてきた)
感傷的になりつつも目を開くと、そこにあるはずのVR機器のバイザーは無く、私は古びたお屋敷のエントランスホールに立っていた。
「え〜っと、どこ?」
ボロボロになった絨毯や割れた窓、経年劣化が進み落下しているシャンデリア。割れた窓から入ってくる太陽光に照らされて埃がキラキラと漂っている。誰かが雨宿りでもしたのか床や絨毯は靴跡で泥だらけ。
「結構人の匂いするなぁ。10人くらいかなぁ?結構直近で使った人たちがいたっぽいねぇ。………っていやいや、なんでわかるんだ私」
明らかに人並みではない嗅覚を私が得ていることに驚きを隠せない。そしてそれを当然のように考えて口にしたこともまた驚く要素だった。
自分の体や思考の変化に驚き、改めて自分の体をまじまじと見下ろす。そこには先ほどまで見ていた、しかし今はもう見ることができないはずの自分の衣装が目に入った。
「えぇ………?アワって………終わったよね?サ終って明日だっけ?」
確認しようとUIを呼び出してお知らせ欄を見るも、間違いなくその日付は今日。時刻にも記憶との齟齬はない。サービスは間違いなく終了している時間だ。しかし、私の衣装は明らかにゲーム内でのお気に入りの装備。手足も自在に動くし、なんならしっかりとUIも出てきた。
混乱の極地でまとまらない思考を続ける私とは関係なく、私の謎に鋭すぎる感覚が複数の人が近づいてくることを知らせる。エントランスホールの2階でとりあえず身を隠し、近づいてくる男たちの声を聞く。
「さぁて、ここが今日からお前の家だ。しっかり俺らの相手をしてくれよ嬢ちゃん?」
どうも、とても不快な存在のようだ。彼らの気配の中に1人だけ女性のそれがある。嬢ちゃんというのもきっと彼女のことだろう。
「テメェら、ヤるんなら隅の方の部屋を使いなよ!テメェらのヤッてる時の声を聞きながら寝るなんてアタシはごめんだよ!」
「へぃへぃ、わかってますぜボス」
違うらしい。どうも私が感じ取れる女性はカスどものボスのようだ。じゃあ嬢ちゃんというのは………?気になるので【透視】のスキルを使い覗いてみる。
(あぁ、そーゆー)
彼らカスどもが言う『嬢ちゃん』とはどうも男の娘のことのようだった。多分あれ普通に女の子だって勘違いされてる。
それからボスの女はさっさとお宝を持って部屋を移動し早速情事が始まったのだが、盗賊たちも最初は彼が男であることに困惑していたものの、ヤッていくうちに悪くないと思い始めたのかどんどんとヒートアップしていった。
しかし驚くべきことに男の娘の彼が1人、また1人とカスどもの精魂を尽きさせてゆく。そして、全員が精魂尽き果てたのを見てまだ満足できていないのか、あろうことか今度は自分がタチ側になって………。
(いやヤッバあの子………)
私はもうなんかサ終したはずのゲームの世界になぜかいることとか、ゲームや現実よりも明らかに鋭敏な感覚とかどうでも良くなっていた。私もそこそこ経験あるけど、あそこまでの性豪は初めて見た、とか考えていた。
カスどもを全員ネコにして満足したのか、男の娘は今度はあの盗賊のボスの向かった方に行った。程なくして女性の嬌声が聞こえ始める。
いやどんだけ………。
「こーわ………。何あの子、さっさとここから離れよ」
こうして、私のこの世界で最初の人類の発見は性豪男の娘が盗賊団を食い散らかす一部始終を目撃するところから始まったのだった。
◆◇◇◇◆
【性豪男の娘・マクワス 24歳】
原案には影も形もいない今回だけのキャラ。
ネコもタチも男も女もイケる最強の性豪。全ての性癖を許容する。
最大連続活動時間は240時間で、盗賊を食い物にするのが趣味。盗賊ならいくらでも食い散らかしていいと思っている、ギリギリ犯罪者側じゃないだけの人。
なんかいい感じに原案と話を繋げられたので、名前を付けての紹介に相なった。『まぐわう』をもじった名前。
【盗賊団のボス・コーナ 28歳】
こちらも原案には存在しないキャラ。
実はこの世界では上位の実力で、レベルは842。
今回は遙か格下であるはずのマクワスにヤられて彼のテクニックと10日間連続でヤり続けるタフネスの前に堕ちてしまう。彼女の部下たち全員をネコにしたという証言と売り言葉に買い言葉でうまく乗せられてしまった故の敗北だった。
基本的に喧嘩っ早いものの、彼女のレベルなら武力で何とでもできる。出来ていた。
めっちゃ美人で、今後はマクワスのペットとなることだろう。
名前の由来は『ワン公な女』→『公な』→『コウナ』→『コーナ』
◆◇◇◇◆
とんでもない性欲魔人と哀れだけど自業自得な生贄達の情事場を離れ、彼らが歩いてきたであろう方角へ匂いを辿りながら歩いてゆく。一際濃い性欲の匂いがあるから彼らの一団であることは間違い無いだろう。
何らかの異変が起きているとは言えUIが出るのだからゲーム内なのだろう。現在地の確認のためにマップを見る。
「へ?………うぇ〜、マップ消えてる………」
マップの地形情報はほんの少ししか写っておらず、あとは初期状態、真っ白だった。マップは全て埋めていたはずなのに、である。そしてこの少しだけ埋まっているマップも私が今歩いてきた道の地形と合致する。つまり、元々は完全に初期状態になっていたわけだ。
「埋め直しかぁ………。てかこれ完全に今更だけど、異世界転生とか転移とかってってやつなんじゃ………。全年齢ゲームのくせしてヤることばっちりヤってて、私も普通にモザイクなしで覗けてたし」
しかし転生か。150年くらい前から今まで流行っては廃れ、流行っては廃れを繰り返している、なんだかんだ人気のジャンルだ。私も読むのは好きだったが、実際体験することになるとは。散々に波乱万丈な人生を歩んだ自覚はあるが、流石にこれは予想できなかった。
まぁ、驚きは多分にあるものの悲壮感はなく、考えてみればそれほど別に嫌な訳でもない。何なら現実よりも慣れ親しんだ体で、ステータスやスキルなんかの能力もそのまま扱えるなんて、幸運ですらある。
「ログアウトは………まぁ反応しないよねぇ」
サポートカスタマーや外部デバイスへのメールチャットなど、現実へとつながる手段をいろいろ試したものの、全く上手くいかなかった。まぁ、もし本当に異世界なら繋がるわけもないのだが。
マップは初期化され現在地もわからない。そもそもゲーム内の世界ではなくまた別の世界の可能性も大いにある。そうなると殊更に面倒だ。
ゲーム時のステータスやスキル、持ち物なんかも継承しているようだが、そのゲーム由来の強さがどこまで通じるのか。不明瞭なまま不用意な戦闘はできれば避けたい。
「いや、考えても仕方ないかな。なるようになれ、だ」
変に杞憂で動けなくなるよりも、面倒事や懸念を気にせず動いてみる事で良い方に転がることも多々ある。
「そうと決まれば、とりあえずは目指せ人里」
しかしただ歩くだけなのもつまらないと、ふと思う。せっかくなのでスキルの検証も兼ねて召喚術を使って移動することにした。
「召喚・クラウドシープ」
呼び出したのはクラウドシープと呼ばれる羊の魔物。普段はその毛に蓄えた魔力で空を浮遊しており、いつも移動の際にクッション兼移動手段として使っていた。今回もお世話になる。
そんないつもの彼、『フワフワくん』を問題なく呼び出せていることに安堵する。
何故なら、私がフワフワくんを召喚できるということは少なくともこの世界には私の知る魔物がいて、私の契約した個体もいるということ。即ち、ゲームの世界と何らかの繋がりがある。またはゲームの世界そのものであるということ。
ゲームの続きか、はたまた転移や転生か。脳内会議の程はともかくとして、慣れ親しんだ存在がいるというのは素直に嬉しく思う。
「さて、フワフワくん。いつものように頼むよ。この道をあっちの方に《む》向かっておくれ」
「メェェ」と鳴くと、自動車よりも断然早い速度で移動を開始した。人里が近くなるまで私はフワフワくんのフワフワの毛の上でボーッとしていた。フワフワ浮いているから揺れないし、速度も中々にある。何より乗り心地がとても良い。本当に騎獣としてとても優秀だ。
◆◇◇◇◆
【クラウドシープ】
実は肉食で、群れで狩りをする魔物。大きな群れともなると上位の竜すら餌にする。
調伏するには世界中の空を飛び回るクラウドシープの群れを見つける運と忍耐力、クラウドシープの群れと十分に空中戦ができるだけの戦力が必要なので、召喚できれば上級のテイマーやサモナーとして認められる。そのため1種のステータスとなっている。
主人公が呼び出すのは基本的に今回出たフワフワくんだけなのだが、群れとしての召喚も可能で、召喚獣たちの中でも貴重な、空中戦が可能な群生の魔物である。
評価とか別にいいのでコメントが欲しいです………。
誤字報告等ございましたら、遠慮なくお願いします。