奥野康太という生徒について
「名前は奥野康太。今のところ目立った成績や素行はなし。しいて挙げるなら、見た目から女子たちの間では噂に上がってるかもしれませんね。この間の件もその一部だったようですし」
「・・・・聞き覚えがないから、本当に『普通』の生徒なんだろうね。新入生の名簿にはあったと思うけど」
「私と同じ中学出身です。そうですね、『普通』の男子生徒と言えるでしょう」
「そんな一個人を、君はどうしたいのかな?」
「私とは関係のない場所に置きたいのが本音。でもそれは難しいと分かってるので、関わりを持ちたくないです」
そうしてコーヒーを飲みきって、わずかな温もりを持つだけのカップを手の中で転がす。普通に考えて、個人と個人が関わりをもたないことなど造作もないだろう。お互いに積極的に会おうとしなければ、同じ学校内の同じ学年だからと接点を作らないことは可能だ。
ではなぜ、このような考えを口にしているか。
単純に奥野康太という人物が私にとって目障りで、どこにいても目についてしまうのが一点。
そして、奥野康太自身も私に対して接点を持とうとしてくるのだ。
無視することも出来るが、同じ寮生活をしている以上はある程度は容認しなければならない。また、他者の介入まで考えるならば余計に変な空気はだせない。
「ふむ。とりあえず今回の件で関係のある生徒には話を聞いたり、ヒアリングは行なうことになっているから、その一環としてならば、その奥野くんに話をすることは可能だろうね」
しばし考えて、片山教諭も可能な手段を伝える。
「その代わり、極端な効果はないことは分かってくれ。あくまでも『今回の件』についての聞き取りだからね」
「ええ、それで結構です」
私は作り笑いを浮かべて返す。胸の内に最も確実に接点を消す手段を思い浮かべながら。
殺意。
私が最も忌み嫌う手段すら考えるほどに、私は奥野康太を憎んでいる。




