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あの時の話とこれからの話

「まず言っておくが、邪推されるような関係ではないよ」

うつむきながら先生は声を絞り出す。


「でしょうね。先生は特に慎重にことを運びそうですし、探したとて簡単に証拠も出ないでしょう」


「そうではなくて・・・・・・・・」


と、片山先生をからかいつつも二河さんとの会話でもその手の話はなかったことを思い出す。たぶん、二河さんの片思いなのだろう。

いや、片思いにすらなってない淡い想いか。


「まぁ、そこはどうでもいいのです」


「私にとっては大ごとなんだが・・・・・」


「片山先生は、あの場で驚いていたのは私と二河さんがキスしていたという点のみでしたよね」


「まぁ・・・・そうだね」


「いじめ自体は知っていたと?」


「・・・・・相談として、それに近い状態なのを聞いたんだ。しかし、ひとりの生徒のために教師(わたし)が堂々と動くことはできなかった」


「平等でなければならない先生が、ひとりの生徒の言う事のみを信じることができなかった。悪く言うなら、言いなりになることは出来なかったのですね」


「・・・・・・そうだ。話が進むようならば担任を混じえて本格的な相談をしていこうと思っていた矢先に、あの飛び降り未遂が起きたんだ。決着はどうであれ、君は二河さんを救ってくれた。まぁキスの必要は分からなかったけど、それで良しとした」


「するとそこへ私が問題を抱えてしまった、ということですね」


「そうだね。だがまぁ、あれらは教師(私たち)が解決しなくてはいけなかったんだ。それをやってくれたことは本当に感謝しているが、同時にもっと私たち(こちら)に色々と話してもよかったんじゃないかな?」


「そういうわけにはいかなかったのですよ。私にも事情がありましたので」


「その事情を話してくれるわけじゃないのかい?」


「ええ、最近こちらに来てたのは、二河さんの様子見と先生と話す時間を作るためにいつがいいか観察していただけでしたし」


「ふむ。じゃあこうして話してきたってことは、何かあったのかな」


「先生のお力で私の困っていることを解決していただけないかな、とおねだりにきました」


「教師としても、カウンセラーとしても、困っている生徒は助けますよ。入念な聞き取りをしてからね」


「では、お願いします」


そこで私ははじめて片山先生に話すことにした。

「奥野康太、という生徒について」

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