舞台の裏で
「なんて、こと・・・・・・」
「うちのこが、本当に?」
自分の耳で、自分の子どもの声を聞いた上で尚出るこのことば。
校長室ではザワザワと声にならぬうめき声や、すすり泣く声が外に響く。この学校で音楽室を除いては唯一、防音仕様で造られているこの部屋では嫌に声が響く。
なんてこと、とは私も言いたい。なぜこのような事が起きたのか。担任や学年主任への指導を改めて行なうことは確定として、なぜまだ1年生の少女にこのような重い役割をさせたのか。
己自信が不甲斐ない。
「さて、保護者の皆様。本日はお集まりいただきありがとうございます。今まさに行われていた会話には学校からの小細工は一切しておりません。その上で、皆様のご意見をうかがわせていただきたく思います。この中には先の件をご存知の方も多いと思われますが、改めて説明をさせていただきます。始まりは・・・・」
「以上が、当校学校長である私の知るかぎりです。そして、今まさにその事柄が正しかったと思わせる内容の会話を聴かせていただきました。この話を受けて、皆様がどのような対応をされるのか、学校としては足並みを揃えるためにも共有させていただきたく思います」
私が締めくくると全ての視線がこちらに集まった。
ただし、その視線にはあらゆる意味が含まれている。
なぜこんなことになったのか。お前のせいだ。私は悪くない。学校に責任を取らせよう。
分かりやすくて助かる。
その中で周囲の大人と違う視線を向ける者もいる。
保健室で重い役割を背負わせてしまった少女の友人達。中には自殺未遂を起こした当人までいる。
周囲の大人は誰もそこへ目を向けない。この事実に、情けなさしか浮かばない。
『あの子がそんなことになってるのに、私達には何も出来ない!』
『せめて、あの子が守ろうとしたこの子を守りたいの』
こんな場所へ、友人のため、と言うだけで来てくれた少女たち。
あの自己保身しか考えていない者たちと比べて、どれほど尊いものか。いや、比べることすらおこがましい。
「さて、話の本題に入る前に。ご紹介したい生徒がいます。先の件で屋上に立った者。そして追い詰められた者。皆様はお忙しい様子ですのでこの場を借りて紹介させていただきます」
大人達が怯えた視線を投げつけたのは、たった3人の自分たちの娘と同い年の少女たちだった。
こうして、保健室の外。校長室では多数の大人達と校長が、たった3人の少女たち立ち会いのもと、今後の対応について話し合った。




