あり得る未来
「な、なっ・・・・・」
「あなた達は殺人未遂を犯しかけてるの。理解してるの?」
「あたしらは何もしてないだろうが!」
「いいえ、二河さんを寄って集って追い詰めた。もしこれで、本当に二河さんが自殺していて、あなた達の名前が上がれば、本当に罪に問われているの。あぁ、未成年者保護法とかの救済措置を考えても無駄よ。きちんと前科として残るし、何より周囲のあなた達への視線はどうなるかしら?『殺人者』『犯罪者』に対して世間は甘くないわ。これから先の人生にずっと誰かが付きまとうわよ」
「そん、なの・・・・私たちは悪くない、じゃない」
「結果が全てよ。もし、二河さんが自殺していて、日常的にあなた達が二河さんを追い詰めていて、それを関連させないなんて、そんな都合のいいことが起きるわけないじゃない」
「結果っていうなら、アイツは死ななかったんだから、問題ないわよねぇ?」
「そうね、結果的に私があの子を止めたもの。あなた達と同じ。あまりにも命を馬鹿にするものだから頭にきて」
「だったら・・・・あんたには、関係なくない?」
「それなら良かったんだけどね・・・・二河さんの自殺未遂については、結構色んな人に見られてたのよね」
「見られてただけなら、証拠はないわね?私達は関係ないわ」
「そこが問題なのよ」
「あ?」
「だって、この間のあなた達が私へのいじめを指示している動画と、あなた達が二河さんを追い詰めたメール。この2つが立派に犯罪の証拠として提出できるのだもの」
「・・・!! あんたっ!」
「どうする?今から犯罪者として消えないもの背負うのかしら?二河さんにきちんと謝罪をするかしら?これからの人生をまだ、まともに歩けるのはどっちかしらね?」
質問を重ねるが、取れる選択は2つである。
①二河さんたちに謝罪し、今回の件を完全に収束させること。
②自分たちのやったことを理解せず、自分のワガママを通してこれからの人生を送るか。
大げさではない。これは、正真正銘今回の当事者たちの人生を左右するポイントなのだ。
謝罪し、今後を改めるならよし。もし未だに自分達がしたことの理解が出来ないならば、全てを潰す。少なくともこの学校において、彼女らの居場所は無くなるだろう。先に待つのは転校か、停学や退学などの処分かは分からない。
「改めて言うわ。あなた達は、命を馬鹿にしすぎている。言葉だけで人は殺せるのよ。それが今度はあなた達に向かうわ。あぁ、直接手を出されることは無いかもしれないけど、この学校中の生徒からどんな視線を向けられるかくらいは想像してね」
しん、とした室内に3人の息づかいだけが響く。
冷や汗を浮かべ真剣な表情をしてるのは、少しは見込みがありそうだが、どうしても現実を受け止められない子もいる。
「まて。まてまてまてよ。結局さ、あんたが二河の自殺も止めてんでしょ?なら、犯罪なんて大袈裟なこと起きてないじゃない!私は悪くない!」
「そ、そうよ・・・あたしは悪くない!」
「それが、最終的な答えでいいかしら?」
残念である。
「この部屋には誰がいるかしら?」
互いに視線を交わし、私を見つめ。思い出したように片山養護教諭を見る少女たち。
「先生だけじゃないわ」
「・・・・は?」
「あれだけの事があって、当事者である君たちだけを呼び出すわけにはいかないだろう?今回の『話し合い』は君たちの保護者と学校も知っている」
「そちらの電話で、今までの話を最初から最後まで聞いていたわよ」
指差すのは、先生のデスク。電話の受話器ははずれ、スピーカーのランプがついている。
彼女たちは、膝をついて俯いた。




