飛び降りるつもり
二河 美月さん。先日のとある事件未満の出来事の参考人。
そんな彼女がなぜ屋上に立っているのかと言えば、簡単である。
この先に希望がもてない。今生きているのが辛い。
もちろん、その気持ちは理解しよう。尊重もしよう。だが、だからといって何もせず即自殺を図るとは逆にその行動力が凄い。
対して、偶然屋上で居合わせた私たち(私、すみれ、蘭、明)は彼女の話を聞きながら時間を稼いでいる。
ちなみに、すみれと蘭には職員室と保健室へ行ってもらい、人を呼んでもらっている。
「あのあと、ケータイにあの人たちから連絡がありました。『許さない』『裏切り者』って。そうですよね。私だけなにも怒られず、処分もなくて、同じ生活が続いてるんですもん。だから、これは私にとっての罰なんです」
「他の人たちは叱られただけなのに、貴方は飛び降りるの?」
「だって、そうでもしないとあの人たちは納得しないんですよ。私がそのまま生活を続けるのは、ずるいって、ずっと言われ続けるのは、耐えられなくて」
「・・・・二河さん、貴方が怖いのは、あの人達?」
「全部です。このまま生きてるのも、怖いです」
「二河さん、ここから落ちたら本当に終われると思う?」
「・・・・え?」
「即死できたらいいけど・・・・ほら、足下を見て?こんな高さで、本当に死ねるの?」
ずり、と足を引きずる。
「最悪なのは、無駄に痛い思いをして、半身不随とかになって、ご家族に迷惑をかけることかしら」
「そんな、こと・・・・じゃあ、どうしたら」
「よくビルの屋上から飛び降りるってあるじゃない。あれもね、最後はかなり悲惨だし、片付けるのはかなり大変らしいわよ」
「う・・・・・」
「ねぇ、二河さん。貴方の死を望む強さはどれくらい強いのかしら?これだけの言葉で揺らぐなら、もう少しだけ私に貴方のこと、任せてみない?」
「だって・・・・・わたし、高田さんにも、迷惑かけて」
「なおのこと、私からの仕返しはさせてくれないの?」
「ここら飛び降りて、それで全部は終わらないわ。だから、私に任せなさい」
そうして、二河さんは手すりを超えてこちら側に戻ってきた。
「あぁ、じゃあこれは任せてもらう担保ね」
「は、」
い。と続く言葉を唇で塞ぐ。
その時バタバタと先生がやってきた。女の子同士でキスしているという非日常で全員の思考を真っ白に潰した。
一人を除いて。




