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三毛猫

「失礼しまーす」「失礼します・・・」

笑顔で言うのがすみれ、控え気味なのが私だ。

「改めて、美術部へようこそ。紙、鉛筆、粘土にヘラ、なんでもあるから好きなもの作れるよ。あ、時間かかってもいいやつなら、ニードルフェルトとかもあるね」

「あら、私の趣味のことかしら?体験しに来てくれた高田さんだね?よろしく。私は部長の的井(マトイ)です。今日は何をしてもいいし、好きなタイミングで帰ってもいいからね。ただし、集中してる子もいるから、出来るだけ静かにね」

お姉さん、という雰囲気の先輩が話しかけてくれた。

髪はボブカットだし背も私とそれほど変わりないけど、纏う雰囲気がおっとりとして落ち着いている。

「じゃあ、折角だしニードルフェルトやらせてもらってもいいですか?」

「材料は好きに使って。すみれちゃん、案内してあげてね」

「はい、部長」

そうして的井部長は制作途中だったらしい絵を描きだした。あれは、森?だろうか。濃淡のある緑と青。時折混じる赤や黄色。幻想的で美しい絵だ。

「さちちゃん、ニードルフェルトの材料はここだよ」

もこもこのフェルトが色とりどり。手のひらにすっぽり収まる大きさで沢山あった。でもこの大きさでは仕上げまでいったらかなり小さくなるのでは?

「安く、色んなことに使えるようにって顧問の先生が用意してくれたの。ある意味造形だからね。これで作ると本当に小さいのになっちゃうけど、チェーンをつけてマスコットにしたりも出来るから」


私は専用の針とスポンジっぽい台を借りてチクチクと作りはじめた。ちなみにフェルトの色は白、黒、茶色。ネコを作る予定だ。下地になる白をチクチクして固めていく。ある程度纏まってきたら黒地を混ぜる。それも固まったら茶色を少量加える。

やってることはこれだけだが、大分集中していたらしい。気づけば1時間以上が経っていた。丸まっていた背中を伸ばすと私は周りを見渡した。的井部長はま絵を描いているし、すみれはヘアピンのような小物を作っているようだ。他の人も思い思いに絵や粘土にとりかかっている。あの人が使ってるのは墨!?水墨画!?

すごい所らしい。

更に作業すること1時間ほど。現在は17時20分だ。かなり集中してしまった。叔母さんに連絡しておいて良かった。白黒茶の三毛猫は耳と尻尾、顔をつけて立派なネコに見える。フェルトも3つ使えたのでそこそこの大きさだ。

「さちちゃん、どんな感じ?」

「不格好だけど一応ネコができたよ」

「かわいー!けど、頭と体のくっつけるのが難しいよね。針と糸で縫っちゃう?」

「あるならお願いしたいかな」

「おっけー」

すみれはスルスルと白い糸でネコの頭と体を縫い合わせてくれた。

「ありがとう。すみれはまだ活動していく?」 

「ううん、そろそろ帰ろうかなって」

「じゃあ私も完成したし、ここまでかな」

部長に声を掛けようとしたけど、それはすみれに止められた。退出する時は静かに出るのがルールらしい。

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