寮監の晩酌
「おいしいわね〜」
と言いながら、鶏の照り焼きと日本酒を交互に口にする叔母。
照り焼きが半分くらいになるのを見計らって次のおつまみを出す。スモークチーズとベーコンの盛り合わせ。私も少しは食べれるやつだ。
「さちちゃ〜ん、これ夜に食べるにはギルティよ〜」
「じゃあいらない?」
「半分こしましょう」
そう言って皿を少しだけ前にずらした。私もお茶を入れて席に着く。
半分こしましょう、は遠回しにおしゃべりしよう、という意味であろう。
「康太くんの言ってたとおりなら、お料理はさちちゃんの負担ね〜。でも花谷さんの言うとおりなら、気分転換になってるみたいだけど、どうしたいかしら?」
「負担にはなってないし、楽しいから続けたいよ」
「なら、これからもお願いね〜」
そう言ってチーズとハムを一緒に口に入れる。
「これ、かけてあるのはバジルソースかしら?見た目も鮮やかだし、風味も爽やかになるわね。この組み合わせでパスタもいいかもしれないわ〜」
見えないようにかけた。盛り付ける際にソースを下に塗ってからチーズとハムを乗せたのだが・・・・。
確かにパスタにもいい組み合わせだろう。
「じゃあ、私は部屋に戻るね」
「はーい、おやすみなさい」
そうして私は部屋に戻り、シャワーを浴びるとすぐに薬を飲んでベッドに入った。今日はなんとなく胸のあたりが温かい。
「さちちゃんはいいお友達を見つけたのねぇ」
料理は愛情、などと言うが実際には作り手の気持ち次第だ。気合いを入れて、失敗しないように、味付けを個人に寄り添わせることで美味しくなるのだ。
そういう意味でも花谷さんはなかなか良い相性なようだ。
「問題は・・・康太くんね」
彼だけは、何故あんなにも自己中心的なのだろうか?彼の歳を考えれば仕方ないかもしれないが、もう少し他者の気持ちを考えられても不思議ではないはずだ。
さちが最後に出した皿は、ハムとチーズの盛り合わせハーブソースを添えて。食べる人のためを思っての選択だと思うし、提供のタイミングも良かった。
「意外と料理人も向いてるかもしれないわね」
最後の一口を食べ、日本酒を飲み終えると片付けをするべく台所へ持って行く。
そこでまだ温かいお茶漬けを見つけて更に喜ぶことになる。




