あの件から
入学式から2,3日ほどたった。
私は学校で何名かの友人と呼べそうな人たちを見つけ、なんでもない日常を過ごしている。
康太との事ははじめのうちはキャーキャーと言われていたが、徹底的に否定していたためか何も言われなくなった。私にとってはようやく訪れた平穏な学校生活だ。
学校では部活に入るつもりはない。元より強制ではないがその分テストなどの成績や授業態度で示さなければならない。図書室で勉強するなどして私は授業に余裕を持ってついていけているし、クラスの中でも勉強は『教える側』だ。なんとかなるだろう、と考えている。
花谷さんとはたまに帰りが一緒になる。あの一件で困らせてしまったが彼女は善良というかお人好しな性格らしい。大丈夫、と伝え続けて安心してもらうしかない。
今日も今日とて夕飯野お手伝い・・・もといバイトである。今日は魚をメインにしたい、とのことで大量に作れて洗い物も減らせる『ホイル焼き』を作る予定だ。買うものは連絡をもらっているし、重いものはない。私一人でなんとでもなる。ちなみに買うのは人数分の鮭の切り身としめじ、それからハーブソルト。まぁ、そこは食べ盛りの高校生だし一人2切れ、とも言われているがそこまでではないだろう。
「お、さっちー」
「あら、新田さん。買い物?」
「そだよー。弟が腹空かして帰ってくるからさー。摘めるものでも先に作っとくんよ。さっちーは何買うの?」
「いいお姉さんね。私は夕飯の買い出し。鮭のホイル焼き」
「あー、魚もいいねー」
この独特なしゃべり方をするのは新田 星来。クラスの中で花谷さんの次に関係を持ってもいいと判断できた人だ。
この人から話しかけられたのがきっかけだが、なんというか、ベタベタとした関係を求めてこないのだ。同情や過度な友情、浅はかな共感などは求めず話したいことを話す。互いに料理をしているというのも大きかったかもしれない。
どちらにしても、そこまで自分の時間は削られない。適当な相槌でも「今日はそんな気分かー」で流すのだから凄い子かもしれない。
とにかく私は自分の高校生活をスタートできた。




