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入学式2

早くこの男の前から去りたい。

花谷さんの所に戻るか、出来れば一人になれる場所を探しに行きたい。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ!俺、そんなに悪い事したのか?謝るから!だから、友達じゃないなんていうなよ!」

「‥‥‥奥野くんは悪くないんでしょう?思い当たることがないんだし。これは私の問題だから放っておいてくれる方が助かるの。そこはわかる?」

「でも、幼馴染みが急にそんなこと言って、納得できる筈がないだろう!?」

「それとね、私言わなかったかしら。『目立ちたくない』って。今、とても目立っているのは誰のおかげかしら」

「‥‥‥わか、った。続きは寮で話そう」

そうではないのだけど、とりあえずこの場は去ってくれるらしい。



「ねー!高田さん、あのイケメンと知り合い!?」

「もしかして彼氏?」

「いいなー、幼馴染みって言ってたね」

「寮ってことはもしかして同棲してるの!?」

昔からこうだ。あの男がいると碌な事にならない。

「そんなんじゃないよー。それに花谷さんも同じ寮住まいだし、ね?」

花谷さんには悪いことをした。



今日の夕飯は中華丼に肉団子の甘酢がけ、たまごスープだ。中華丼の野菜を多めにして肉と野菜のバランスをとるらしい。

らしい、というのも今日の買い物は叔母に任せていたためだ。春とはいえ暑い日もある。他の調味料もあるし、重いものもあるから、ということで私は免除された。

「白菜は洗ってざく切り、人参は皮を向いて短冊切り、玉ねぎも皮を向いて薄いくし切りにしてくれる?」

「うん、わかった」

白菜一つが一食で消費されるのだからすごいと思う。人参も旬のものということでだいぶ太くて立派だ。

白菜と人参、水でもどしたきくらげ、かまぼこが中華丼の材料だ。玉ねぎはスープの具だけど下拵えとして一緒に切ってしまう。それぞれ切ったら大小のボウルに入れていく。この間に叔母は合わせ調味料を作ったり火の通りが遅い人参などから熱したフライパンにごま油を垂らして炒めていく。

ちなみに人参はしっかり火を通して柔らかく、白菜はシャッキリさせよう、ということで打ち合わせ済みだ。

最後に投入すると思われるきくらげとカマボコを切ったら包丁とまな板を洗っておく。

そうこうしている内に白菜と豚こま肉を入れて更に炒めている。まだ味付けは塩だけらしいが、色どりがきれいで立派に野菜炒めとして出せそうだ。


「さち、今いいかな」

帰宅してすぐなのだろう。制服姿のままの康太が話しかけてきた。

「奥野くん、私今は‥‥‥」

「康太くん、今さちちゃんはバイト中だからもう少し待ってね」

「‥‥‥分かりました」

そうして康太は去っていった。

「ありがとうございます」

「どういたしまして。でも、ちょっと大変そうねぇ」

「‥‥‥」

無言で応えながらボウルに挽き肉を出し塩、胡椒、ナツメグ、を加えてよく混ぜる。しっかりと練り上げなくては油で揚げた時に破裂してしまう。

中の空気を押し出しつつも調味料がしっかりと行き渡るように、丹念に混ぜる。なお、この間に中華丼は味付けまで完了している。あとは水溶き片栗粉でとろみをつけるだけだ。

今更だが叔母のキッチンはIHヒーターで3口がある。一つは今の中華丼に使っていたが、一つは油を熱していた。最後の一つはフライパンだけが乗っている。

私が肉団子を一口大にスプーンを使って成形、叔母が油の温度を見ながら揚げる、という流れで作るとあっという間に出来上がった。最後のフライパンではお酢と酒、ハチミツにオイスターソースを混ぜたタレがクツクツと音をたてている。その中に揚げた肉団子を入れてさっと混ぜれば肉団子は完成。

最後に小鍋に粉末の鶏ガラスープと水を入れて玉ねぎに火を通すを玉ねぎが透明になったらとき卵を回し入れ、最後にごま油と胡椒を加える。


そうして出来たのが今日のご飯である。



やっぱりと言うか叔母は烏龍茶を淹れてくれた。

ちょうどその時、私服に着替えた康太がやってきた。

「さち、今ならいいかな?」

「‥‥‥うん、大丈夫」

「それなら、私も同席してもいいかしら?」

まさかの叔母の参戦だった。

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