入学式1
「長かったねぇ、校長先生のお話」
「式自体もね。どこでもこればっかりは仕方ないのかもしれないけど」
と、花谷さんと話しながら教室にいる。花谷さんとはクラスが同じになった。これからも仲良く過ごしていくのだろうと思いたい。
「ねーねー。えっと高田さん?ドアの所で男子が呼んでるんだけど、ちょっといいかしら?」
と、不意に声をかけられる。
クラス発表を見て、教室へ荷物を置いて、入学式に参加して、さっき教室へ戻ってきた所なのに。
こんなタイミングで声を掛けるのは、あいつだけだと思う。というか、自分もクラスの中で友達を作っていればいいのに、なんでわざわざこっちに来るのだろうか?
「あの、高田さん‥‥‥」
「大丈夫だよ、花谷さん。ちょっと行ってくるね。ありがとう、多分顔見知りだから大丈夫だよ」
「そっか、わかった。なんかカッコイイけど、彼氏なら仕方ないね」
「そんなんじゃないよー」
こういうときはお茶を濁して去ったほうがよい。
「あ、さち‥‥‥」
「用があるなら早くして。あまり目立ちたくないの」
ただでさえ入学初日で男子から呼ばれる、なんて噂話の種を振り撒いてるんだから。
「じゃあ‥‥‥ごめん、さち。またやり直そう」
そう言って目の前にいた康太が頭を下げる。
・。
・・。
・・・。
いや、待て。この男は何をしているんだ。
後ろの方でキャ~と声が聴こえる。これは、女子生徒の恰好の噂の的だ。
目立ちたくない、と今言ったばかりなのに。
「なんでその言い方になったのかはわからないけど、何にせよ昨日言ったことは変わらないよ。私を貴方の友達に入れないで」