友達じゃない
「待て、待ってくれよ‥‥‥友達じゃないってどういうことだ?」
「そのままの意味だけど‥‥‥いつ、私は貴方のお友達に入ったのかしら?」
コールスローを食べ終えた私は小盛りにしてもらったカレーをスプーンですくう。
「だって、家は近所で、小学校から同じで、幼馴染みじゃないか」
「なら貴方の幼馴染みは小学校から中学校まで一緒に過ごした数だけいるのね。それって何十人?何百人いるのかしら。それだけいるなら、私一人いなくなっても構わないでしょう?」
うん、やはりカレーは玉ねぎをしっかり炒めるかどうかで変わる。
「いや、それじゃなんでここに‥‥‥?俺と同じ高校を選んだんじゃないのか?」
「りこと貴方から離れるためよ」
「りこと離れるって、あんなに仲が良かったのになんで‥‥‥。それに、友達じゃないとか、意味がわからな」
「貴方の、そういうところよ」
スプーンを置く。かちり、と意外と大きな音がなった。
「私とりこのこと、何も知らないで入ってきて、訳知り顔で理解者ぶる。あげく貴方と幼馴染み?そうね、後から同じ小学校だったと聞いたわ。でも私と貴方が二人で何かをしたことも、接点を持った記憶もないわ」
席を立つ。
「ごちそうさまでした。叔母さん、明日の朝も手伝いに来るね」
「待ってるわ〜」
ぱたん、と101号室を出て自室へ行く。
「はぁ〜」
これで、良かったと思う。あとはどれだけ康介に響くか。
でもそんなことは正直どうでもいい。私は私の思う通りにやった。少しは彼も変わってくれることを祈るだけだ。あの場に居合わせた花谷さんには悪いけれど必要なことだ。
あの男はいつからああだっただろうか?