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第三話

王族から譲りし勇者の剣アダマント。耐久、攻撃力共に最強を誇る武器の1つであり、魔力を込めて放出した時にそれを何倍にも増強させるバースト技をもつ。マルタほどの勇者格を持つものでないと扱えない代物だ。

未だピリピリと余波が残る中、鎧男の身体はじわじわ消えていった。

「ここで失うにしてはお前は大きすぎる代償だぞ、ヨルダン」

本当は今すぐ消えゆくヨルダンの亡骸をこの身に抱き寄せたかった。側に寄り添って贈り言葉の1つでも言いたかった。しかし、そんな暇などなかった。まだ、命の駆け引きは終わっていない。

「ぎゃわあ!!」

シーサー2匹に尾と片翼を噛まれドラゴンは身動きが取れないでいた。

必死に振り払おうとするが、牙がしっかりと肉に食い込んで離れない。

小さな村1つなら数分で壊滅させられる、ドラゴン族のキングと呼ばれた竜が苦戦を強いられていた。

図体も1/5程しかないそのサイズにまんまとやられてしまっている様は見ていられなかった。

「お前らは俺から1度に何人奪えば気が済むんだ!アルティメットプリズム!」

怒りを込め刀身から光を放つ。光はまっすぐにのびドラゴンに食らいついている2匹だけを正確に狙う。

それを1匹はかわし、1匹はまともに食らった。

光がシーサーの身体を貫きそのまま勢いよく吹き飛んだ。

かわした側のシーサーにも隙がうまれた。そのチャンスを逃すことなくすかさずドラゴンは尻尾でかわしたもう1匹を薙ぎ払った。

「きゃう!!」

「よし、もう片方が消えるのも時間の問題。これで!」

剣を構え直しドラゴンから飛ばされた1匹にトドメをさそうとした時だった。

「これで終わり......てか?甘いねえ」

漆黒の気配を察しわずかに後ろに下がる。その前を鋭い爪が通過していた。

すぐに爪を剣で受けるが、頬を掠めた。

「おっとお、こいつもかわすとは。さすがだねえ」

そこにはさっき消えたはずの鎧男が無傷で現れていた。

「お前......さっき倒されたんじゃなかったのか」

目を疑い、頭が混乱する。果てしない絶望感が背後から押し寄せてくる。

「いいねえ、絶望したいい顔だ。絶望ついでに救いの助言をやろう。さっき倒されたのは俺の半身。つまり番犬の方さ。俺とこいつらは武器や互いの姿に擬態することが出来る。間一髪のとこですり替わらせてもらったのさ」

「......いつからだ」

「最初からさ、まあ安心しろ。こいつらは俺の姿には契約上1体しかなれないし、戦闘力的にはどの俺も均一だ」

「くっ......」

「お、救いの助言も虚しくあまりの事実に押されてるかそれともさすがの勇者様も体力的に厳しいか!じゃあここいらで終わりにしてやるよ!」

爪の勢いが唸りを上げる。剣の耐久には問題なくともそれを振るう側は徐々についていけなくなる。

「ぎゃああごう!!」

その時、ドラゴンが横から加勢に入る。緑の身体は紅くなり威嚇モードになっていた。

威嚇モードはドラゴンの怒りが最大になった時に起こる状態であり、この姿を見たものは数百年の歴史でも数回と見たことはないと言われている。力が何倍にも跳ね上がる代わりに理性を失う恐ろしいモードである。

自分の生命を脅かすレベルのダメージと現状の自分の力では勝てないと悟った竜の理性が本能を呼び起こし暴走させたのだ。

腕から繰り出される風圧の破壊力にマルタと敵は見境なく弾き飛ばされてしまう。

「くっ......」

一撃しかくらっていないにも関わらずボロボロになった鎧、全身至るところがめくれほぼ原型がなくなっていた。もう一発でも今のドラゴンの攻撃をくらえば存在ごと消し飛んでしまうだろう。

鎧男の本体はこの鎧自体の呪いであり、鎧がなくなるということは死を意味していた。

「こいつ......まだこんな隠し状態を......伝説に聞く化け物をパーティに入れてこられたらたまったもんじゃないぜ......だがな、こちらも後1つだけとっておきがあんだよ」

よれよれの身体の上にシーサーを乗せる。1匹と1人は徐々に同化し、やがて1つになる。

影が色濃くなり、漆黒の鎧になる。

「本当は2匹いたら完全体なのだがな、まあいいだろう」

拳を開いて握ってをしては馴染みを確かめている。覇気の質が変わり広場一帯の空気を変えた。

「ぐるるるあ!!」

暴走した紅い竜が抹殺しようと突撃してくる。鎧男はそんな殺意を気にすることなく、自分の身体を具合を確かめている。

そして、目の前まで来た時だった。

拳を振り翳し地面に叩きつけた。そこにはドラゴンの顔があり、地面に顔が伸びていた。

あんなに満ちていた殺意は一瞬で消されてしまったのだ。

ドラゴンの色はすっかり戦力をなくし元の緑色に戻っていた。

まだ息があるにも関わらず黒の鎧はトドメを刺さない。いつでも終わらせられると竜に背を向けた。そして、軽くストレッチをし自身の身体の馴染みを再確認した。

「よし、これで大丈夫だ。一回俺を殺された恩もあるし、返してもらうとするか」

黒の鎧はマルタの方へゆっくりと殺意を込めて向かってきた。

「最終決戦といこうじゃないか」

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