第一話
眼前に聳え立つ城。アムラント城。
そこに5人のパーティは立っていた。
「ついに辿り着いた。魔王エリスの城がまさかこんなとこにあったとはな。あらゆる高度魔法の結界の探知で引っかからないとはいえ自分達が救った村の床下近深くにあるとは思いもしなかった」
そう感心しているのはこのパーティのリーダーマルタ。レベル60。職業勇者であり、ステータスは全振り。武器や防具は何でも適正があるためこのパーティでの全てのアイテムはこの男に集約している。
「はあ。全くよ、おかげでここまで来るのに無駄に足踏みしちゃったじゃない!NPCはイベントし尽くして同じことしか話さないしさ!マジこのゲーム作ったやつフラグ回収させる気あんのかって感じ」
溜め息混じりにメタいワールド批判をするのは魔法使い、リタ。レベル55。職業魔法使いであり、MPはマルタに並んで完凸している。マルタがいらない魔法使いよりのアイテムを装備している。
「まあまあ、そう言わずに。おかげ様で私最近新しい魔法覚えれましたし!みなさんをよりサポート出来ると思いますよ!」
マルタとリタを宥めつつ、他のメンバーの様子を管理しているのは僧侶のモチダ。元々は違う職業だったが、仲間になる際回復要因がいないとジョブチェンジした。髪は長く容姿は女性的だが、性別は男である。
「グルルル......」
ただならぬモンスターの妖気に唸り出しているのは最近仲間になったモンスターのドラドラ。
職業ドラゴン。レベル70。
一番最近仲間になったもののその圧倒的な強さから一気にパーティ入りを果たした。
「ひぇ...おいらここに残ってていいですか!明らかに妖気が異常で。どうせ足手纏いですし!」
最後に馬車に乗っているのは盗賊のヨルダン。レベル5。マルタと最初から共にする一番長い仲間であるが、盗むという特技しか使えないためすっかり貴重アイテムを盗むためだけの召使要員となってしまっている。
「なに言ってんだよ、この世界にある7つの宝玉の宝玉のうちの1つ、ラースを持っているんだぜ、お前がいなきゃ誰が盗むんだよ、ほら、いくぞ」
「いたた!わかった!わかったからそう馬車から引っ張らないで!てかマルタ!お前強くなりすぎてつねるでもワンチャン死にかねないから!お手柔らかにして!」
そんな声も届かずマルタが城のドアを開けるとそこにはすでに暗黒騎士3体と一つ目の5メートル巨人が構えていた。
「ひぃい!!ほら言わんこっちゃない!あの茶色い目が赤い怪物なんか俺らぐらいの顔のサイズしてるぞ!ああ!死ぬんだ!むしろここまでよくもった方だよな俺!後半なんか大体即死に近い体力だったもんなあ!」
「なにをぶつぶつ言ってんだ、こいつまあいいや、とりあえず死ね......あれ?オラの腕どこいった?」
気がつけば巨人の右腕が地面に横たわっている。さらにそれを認識している間にもう一つの腕も落ちた。
「ぐわ......ぐわあああ!!」
「フンッ」
首を裂いて巨人が後ろ側に倒れる。その重量に地響きが起こり、砂埃が舞う。
「くそ、こいつ化け物か!ぐわあ!」
「おい、大丈夫か......あ」
砂埃が沈静し辺りがクリアになった頃には周りは綺麗になっていた、倒されたモンスターは光を滲ませじわじわと溶けていった。
「よし、ヨルダンなんかいいアイテム取れたか?」
「そんな一瞬でって言いたいとこだが。ほらよ」
ヨルダンはマルタに黒いチェスを投げた。
「なんだコレ、ビショップ?」
「城だからそんなアイテムがメインなんじゃねえのか」
「そうか」
マルタの手の中のビショップは跡形もなく粉々になった。
「あ、おい!せっかく取ったのになんて事しやがる!」
「いや装備品とかでも高値でもなさそうだし、アイテム枠無駄に増やしたくないし」
冷酷にそう言い放つマルタに口を歪ませながらぼやぼやと小言を言うヨルダンをモチダが宥める。
「ほら!なにコントしてんのよ!さっさと次行くわよ!城なんだから警備とかやばいでしょうし追手がくる前に辿り着くのよ!」
そんなみんなの尻を叩きながら前に行く様促すリタ。
その言葉にマルタも賛同し一同は足を進める。
しばらく歩くと二手に分かれる道が現れた。どちらも曲がった通路となっており先は見えない。
「あらら、ここで迷路か」
先頭をずんずん行っていたリタが立ち止まる。
「よし、モチダ。例のやつできるか?」
「わかりました。ああ、神よ。神託の享受を希望致します。此度道に迷いし子羊に......」
モチダが詠唱を始め、しばらく目を閉じた後に指をゆっくり右側を指した。
その先を進むと、何やらひらけた広場に出た。
「妖気が薄まったように感じる。どうやら正解だったみたいだな、ありがとうモチダ。相変わらずお前の神のお告げは役に立つ」
「いえいえ、それほどでも」
謙遜するモチダ。
「にしてもジョブチェンジしただけで神のお告げが聞こえるなんていいわよねー、私もしようかしら」
リタが羨ましそうに横目で見ていると後ろから槍が飛んできて彼女の右脚を貫いた。