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お誘い

 王子はほどよい力で俺の手を引いて、馬車の中へとエスコートした。

 王室の豪華な馬車だが、二人で乗るにはいささか狭い。

 思いっきり端っこに座ってみたものの、それでも王子の体温を感じるくらい近い。


 離れからシャーロット宮殿まではそんなに遠くない。この時間もそんなに長くないはずだけど、すでに早く着け早く着けと念仏の様に心の中で唱えていた。

 はて。

 よくよくよーく考えると、俺は男だ。

 そして王子も美しい顔立ちだが、男だ。(裸見てないので、もしもがあるかもしれないけど)

 

 末端の仏道に身を置いていたので、女人は交わりは無理だが、男も興味なかった。

 男色を好む僧侶もいた様だが、それも興味なく、今から思えばかなり淡白な方だった。

 そう思うとこの状況にドキドキしていたのが馬鹿らしくなる。

 安堵しながら横を向く。


 キラキラキラキラ・・・・。


 うっ。

 美しさが上質な花の香りの様にこちらにまで流れてくる。

 後ろに薔薇まで見えちゃってる。


「オーロラ」

「へいっ?!」

 声がうわずった。


「すまなかったな」

「王子」

「苦労をかけた。お前は何も悪くない。全て無実だ」

 

 全て?


「エイプルもどきも本当は全てが明らかになってから幽閉の処分を下すべきだが、マイアン王女や他の貴族が重い処分をと聞かなくてな。短い期間でも幽閉すれば納得すると思ったのだ」


 王子はオーロラを可能な限り守っていたのだ。

 だから幽閉中も護衛をつけたり、食事や衣服を差し入れるよう指示を出したりしていたのか。


「まさか、兵士たちが中抜きしてたとはな」


 私も甘ちゃんだと王子は自嘲気味に笑う。

 それはあなたが優しいからですよ。


「私を信じてくださっていたのですね」


 王子がオーロラを信頼していた、それが今は何よりも嬉しい。


「当たり前だろ。なぜ私に媚薬をもる必要がある?それは気持ちがない者同士がやることだろう?」

 

へいっ?

 もう一度声が上ずってしまいそうだった。

 待ってくれ。

 それってつまり・・・・。

 なるべく目を合わせない様にしてたのに、その言葉でつい王子を見てしまった。

 愛おしいものを見るかの様に、こちらを見ていた。


「私たちには必要のないものだろう?」


 王子は俺を抱き寄せて頬に口づけをした。


「ーーーーーー」 


 そして俺の耳元に囁いた。




 つまりそれって、あーだよな。

 いや、まさか違うかも。

 緊張しすぎで、頭が回らん。

 王子は馬車の中で俺を抱き寄せるとこう言ったのだ。


「今夜私の部屋に来てくれ」


 それは、つまりそういう意味だろうか。現実逃避をしていたが、しばらくして王子の侍女たちが現れて俺の身支度を整えていく。

 色とりどりの花々で埋め尽くされた風呂場へ案内され入浴。

 その後は上質な絹のネグリジェを用意し俺に着替えさせる。

 人に服を着替えてもらうのは苦手だが、断る間も無く手際よく着替えを完了させる。


 最後に王子が好きだという花の香水をしゅっと一拭き。それが終わると部屋の外で待機していると伝え部屋を後にした。 


 ラベンダーは王子の夜のお誘いの件では俺の知らないところでとっくに話が通っていた。落ち着いた様子で、俺の髪を櫛で丁寧にとく。


「オーロラ様、美しい髪ですね」


 ラベンダーの櫛が俺の金色の髪を何度も往復する。

 こちらの世界に来てもう二ヶ月以上になる。二ヶ月もこの体で生きていると姿見に移る己が堅物の男ではなく、見目麗しい女性の姿であることに違和感がない。

 そうこれが俺なのだ。

 俺はオーロラなのだ。

 その瞬間、シャンパンの気泡が勢いよく溢れるように俺の中で記憶がかけ巡っていった。



 ()は・・・オーロラ・・・。


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