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夫妻

 こうして俺たちは今回の事件に関して無罪放免となった。

 

 てっきり眠りの森の屋敷に戻されるのかと思ったが、別の離れの建物で過ごす様に命じられた。俺の今後については後日勅令を下すとのこと。

 グナシと三人で兵士が用意した馬車で離れを目指す。

 馬車待ちの間、俺たちは思い思いの姿で過ごしていた。 

 ずっと跪いていたので、とにかく膝がヒリヒリする。

 グナシは屈伸や伸びをして、ラベンダーを老婆の様に膝をさすっていた。

 かくいう俺も大きく伸びをしていた。 

 

 馬車はまだこない。急な命令だったようで、バタバタと兵士たちが忙しそうに走って命令を確認していた。

 程なくして一台の馬車が止まる。


 お、きたか。

 膝を伸ばしていたグナシが顔を上げる。

 大きな風が吹き、パサっと2台の布が捲れ上がる。


 妙齢の男と女が意気消沈した様子で座っていた。

 先客がいた。どうやら俺たちが待っている馬車ではないようだ。

 女は布が捲れ上がっても顔を上げないかった。男は空な目で外をみた。

 生気がない。

 両手は前で縛られていた。

 空な目が俺たちを捉える。


「サワート・クリオンとその妻の輸送先が変更?おいおい今日の担当は誰だよ!!」


 サワート・クリオンだと。


 兵士の言葉に男が怯えた様にビクッと動いた。

 この男がサワートさんなのか。

 俺は一歩近づいて男を見る。

 男は絶望しきった様子で頭を抱えている。

 金を持ち逃亡したのではなかったか。

 逃げきれなかったのか。


「サワートだと・・・」


 ゆっくりと立ち上がったグナシが、譫言の様に呟く。 

 視線を感じたのか、男が力なく頭を上げた。 


「あ・・・おおあああ・・・」


 言葉にならない悲鳴を上げる。


「グナシさん・・・・ではその隣にいるのは・・・まさか聖女様・・・」


 そしてこちらをじっと見ると、体を震わせたかと思うと見張りが手薄になっていた馬車から飛び出して走り出す。

 鬼のような形相でこちらにくる。その後ろを妻が追いかける。


「聖女様!!!聖女様ですね」


 思わず身構える俺たちに男は聖女様と地面に膝をついて俺の服に触れる。


 「どうか助けてください。私はあなた様から受け取った仏のお力を人々に分け与えていただけなのです」

「そうです困っている人を助けていただけなんです。何も悪いことはしておりません」


「このままでは投獄され処罰されます。聖女様、今一度我々をお救いください」

「どうかもう一度仏像を私たちに彫ってください。聖女様お願いでございます。仏のお力を今一度私たちに・・・」


 地獄から這い上がるかの様に必死に俺たちに手を伸ばす。

 肉屋の店主の言葉通り、その様子はもはや魔物の様であった。

 恐怖に慄く尋常でない汗をかいているサワートさん、地面に額をつけながらも愛想を振りまくようにうっすらと笑顔を見せる妻。

 その二人の手が俺のドレスの裾を掴んで離さない。


「聖女様、どうして仏のお力が消えてしまったのですか。まだ必要とするものは大勢いるのです。なぜ私から力を奪ったのですか」


 徐々に這い上がり、伸びてきた手が私の頬に触れんとするのをグナシが掴んだ。


「貴様何をしている。馬車に戻れ!!」


 騒ぎを聞きつけた兵士が戻ってきたのだ。渾身の力で抵抗する二人を兵士が4人がかりで連れ戻る。


「聖女様!!なぜ仏の力を奪ったのですかー!!もう一度、もう一度力を!!!」

 口から唾を飛ばしながらサワートさんが叫ぶ。


 屈強な男二人に腕を掴まれても、必死にその場で踏みとどまる。

 一体何を勘違いしているのだ、この二人は。


「私は病に困っている人を助けるために、仏を彫ったのだ。お主の私服を肥やすためではない!!」

「聖女様ー私たちはこのままでは死罪になるかもしれないのです。どうかお助けをー」

「聖女様っ!!!」


 二人の金切り声が響く。必死の命乞いだった。身体中から声を出しているかのように。全身で叫んでいた。二人とも涙を流し、死への恐怖から逃れようとしていた。

 俺はその目に伝えた。


「すべては空なのだーーー」


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